『2013.10.27 東京新聞(千葉版)』 「市川市で開催された“影絵大会”で、セサミストリートを表現する岩上安身氏(笑)」
と、冗談を言って笑っている場合ではないのだが、官僚たちも、相当焦っているようである。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/20131027/CK2013102702000113.html
この2年あまり、論理的な思考ができる中学生との議論ですらも、官僚側ははっきりと負けている。
だったら、“shut his eyes and stop his ears”(エリック・ホッファー 『THE TRUE BELIEVER』) にすればよいと、彼らは考えたようだ。
それが官僚の本質であるのは事実だが、それに抗い、歴史に学ぶ言論人たちがいる事もまた、事実である。
次の2本は、この6月のIWJの記事である。
『2013.6.17 14:24 IWJウィークリー 第7号 原祐介記者』
<IWJの視点>原佑介式モンゴリアン・チョップ2
~6月9日(日)
モンゴリアン・チョップは、連発してこそモンゴリアン・チョップである。
先週の原佑介式モンゴリアン・チョップでは、「日本版NSC構想」と「国家
安全保障基本法」を取り上げ、「事実上の憲法改正」が進行しつつあることを
指摘した。菅義偉官房長官が、日本版NSC創設法とともに、秋の国会で成立を
目指すと明言した「秘密保全法」もまた、「国民の知る権利」などを侵害する
「事実上の憲法改正」である。そうした観点から、2発目のチョップとして、
今号は秘密保全法にスポットをあてたい。
秘密保全法案とは、「国の安全」「外交」「公共の安全及び秩序の維持」の
3分野の中から、行政機関が「国の存立にとって重要なもの」と判断した情報
を「特別秘密」に指定し、特別秘密を漏洩した者、または特別秘密にアクセス
を試みた者などを処罰する法案である。
こうした概要だけを見れば、特に問題点のない法案にも思える。だが、具体
的な中身を見てみると、多くの危険性をはらんでいることに気付く。
まず、特別秘密を扱う者は、事前に「適正評価制度」と呼ばれる身辺調査に
かけられる。調査事項は、「人定事項(氏名、生年月日、住所歴、国籍、本籍、
親族等)」「我が国の利益を害する活動への関与」、「渡航歴」、「犯罪歴」、
「信用状態」、「精神の問題に係る通院歴」などだ。
「我が国の利益を害する活動への関与」が、具体的に何を指すのかは不明だ。
どうとでも受け取れる曖昧な表現であることから、時の政権の意に反する抗議
活動(脱原発運動、反TPP運動)への参加や、宗教活動なども含まれる可能性
がある。外国との接点がある者が、それだけでスパイとなる可能性を疑われる
かもしれない。これだけ国際化が進んでいる時代に、疑えばキリがなく、また、
「仮想敵国」の設定も恣意的に進められる可能性がある。
「人定事項」や「精神病の通院歴」などは、プライバシーの最たるものだろ
う。国籍は、帰化情報までさかのぼって調査するとされており、出自や病歴に
よる差別が懸念される。
また、対象者だけでなく、「配偶者のように対象者の身近にあって対象者の
行動に影響を与え得る者」についても、同様の調査が行われると規定されてい
る。配偶者だけでなく、恋人、家族などの一般国民にも国の調査が及ぶのだ。
すでに先日可決した、国民一人ひとりの様々な個人情報を集約して管理する
「共通番号法(マイナンバー法)」を「活用(悪用が正確な表現かもしれない
が)」すれば、こうした調査もはかどることだろう。
最高刑は「10年以下の懲役」と重く、長期3年以上の懲役が見込まれる場合、
逮捕令状を待たない「緊急逮捕」も可能となるため、取材中、偶然「特別秘
密」に接触したジャーナリストなどが、突如、令状なしに逮捕されるといった
ことも考えられる。
秘密保全法の制定に向けた動きの発端は、2010年、「尖閣沖漁船衝突事件」
の映像がインターネット上に流出したことだとされている。ビデオの流出を受
けた仙谷由人官房長官(当時)は、同年11月8日の衆院予算委員会で、「国家
公務員法の守秘義務違反の罰則は軽く、抑止力が十分ではない。秘密保全に関
する法制の在り方について早急に検討したい」と述べ、「秘密保全のための法
制の在り方に関する有識者会議」を設置。法案の中身を固めた。
まるで国家機密が流出したかのような言いぶりだが、そもそもあのビデオは
「秘密」に指定されておらず、海上保安庁内では研修資料として広く共有さえ
されていた。現に、ビデオの流出が国の安全や外交に重大な悪影響を与えた形
跡もない。
あまり知られていないことだが、日本の秘密保全体制は、すでに十分整備さ
れている。
・国家公務員法──国家公務員を対象とし、職務上知り得た秘密を漏洩した者
などに対し、1年以下の懲役、または50万円以下の罰金。
・自衛隊法──防衛秘密を取り扱うことを業務とする者の漏洩行為に5年以下
の懲役。
・日米刑事特別法──日米安全保障条約に基づく特別法。米軍の安全を害すべ
き用途に供する目的、または不当な方法による探知、収集、そして漏洩などに
10年以下の懲役(日本は米軍の動向について情報収集できない、した場合は厳
罰に処せられるという、実に不平等な法律である)。
・日米相互防衛援助協定(MDA協定)──米国から日本に提供された装備品な
どに関する特別防衛秘密の探知・収集、漏えいなどに10年以下の懲役。
日本の秘密保全体制は、これらの法で十分で間に合っていることが、秘密保
全法有識者会議自身の取りまとめた報告書(官邸HP http://bit.ly/yAkD94 )
によっても証明されている。
報告書の中では、上記の法などに違反する「主要な情報漏えい事件等の概
要」として、8件の事件が挙げられているが、起訴されたのはわずか2件だけで
ある。一つは自衛隊法違反で懲役10ヶ月、もう一つはMDA協定違反で懲役2年6
ヶ月、執行猶予4年。
つまり、これまでの情報漏洩事件のほとんどが起訴猶予となっており、起訴
されたケースにしても、決して重罪には問われていないのだ。これ以上の厳罰
化を求める必要性がどこにあるのか。国民の知る権利、報道の自由、プライバ
シーなどの、憲法で保障された国民の権利を害してまで秘密保全法を作る根拠
がないではないか。
「尖閣沖漁船衝突事件」は、おそらく口実に過ぎない。本当の理由は、日米
安全保障・防衛協力の強化にある、と思われる。問題は、その「強化」なつも
のの中身である。
2005年10月に開催された日米安全保障協議委員会で、「日米同盟:未来のた
めの変革と再編※」が公表された。その中では、日米間の安全保障、防衛協力
のための必要不可欠な措置として「情報共有及 び情報協力の向上」という項
目があり、「共有された秘密情報を保護するために必要な追加的措置をとる」
と書かれている。
(※外務省HP「日米同盟:未来のための変革と再編」 http://www.mofa.go.jp
/mofaj/area/usa/hosho/henkaku_saihen.html )
その追加的措置が、 2007年8月に新たに締結された、秘密軍事情報保護の取
り決めである「日米軍事情報包括保護協定(GSOMIA)※」だ。GSOMIAの条文中
には、たびたび「秘密軍事情報を受領する締約国政府は、自国の国内法令に従
って、秘密軍事情報について当該情報を提供する締約国政府により与えられて
いる保護と実質的に同等の保護を与えるために適当な措置をとること」という
文言が登場する。
(※外務省HP「秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する日本国
政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」 http://www.mofa.go.jp/mofaj/
area/usa/hosho/kyotei_0708.html )
「米国と実質的に同等の保護を与えるための適当な措置」こそが、秘密保全
法の制定なのだ。
「情報共有をする上で、米軍情報が日本側から漏れては困るから、相応の法
整備を」──。一見もっともらしいこうした米国の要求に応じるためには、憲
法すら犯しても構わないというのが、自民党政権、民主党政権ともに共通する
日本のスタンスなのである。
それどころか自民党・安倍政権は、改憲草案の第9条の2項で、「国防軍の組
織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める」と明記し、集団的自
衛権の行使を可能とする「国家安全保障基本法案」の第3条で、「国は、我が
国の平和と安全を確保する上で必要な秘密が適切に保護されるよう、法律上・
制度上必要な措置を講ずる」と規定しているように、日本の戦争参加に向け、
積極的に秘密保全法を活用していく方針を明確にしている。
秘密保全法案が浮上した経緯からもわかるように、米国主導による、一部の
官僚らの恣意的な情報統制が懸念される。
特別秘密を扱う者は政府内部でも限られており、かつ、その情報が特別秘密
として指定されるに足るかどうか、正当かどうかをチェックする機関の設立も
想定されていない。不当な拡大解釈によって、本来、秘密に指定される必要の
ない情報まで隠蔽される恐れがある。
国民投票を経ることなく「事実上の憲法改正」に着手する安倍政権は、民主
主義、立憲主義を軽んずるあまり、「国民の知る権利」まで米国に売り渡して
しまうのだろうか。
『2013.6.26 15:24 IWJウィークリー 第8号 原祐介記者』
<IWJの視点>原佑介式モンゴリアン・チョップ3
~6月20日(木)
モンゴリアン・チョップといえば、キラー・カーン、天山だ。が、今回の三
連打目をもって、私の名前もモンゴリアン・チョッパーとして記憶していただ
きたい。
先週は、秋の国会に上程されるという「秘密保全法」の概要や、法案が浮上
した経緯、目的などについて考察した。秘密保全法制定の背景には米国からの
強い要求があると指摘し、日本政府は、その要求に応じるため、憲法の保障す
る「国民の知る権利」や「報道の自由」「プライバシー権」までをも踏みにじ
ろうとしている。
特別秘密を扱う者は政府内部でもごく一部に限られており、その情報が特別
秘密として指定されるに足るかどうかをチェックする機関も作られない。不当
な拡大解釈や恣意的な運用によって、本来、秘密に指定される必要のない情報
まで隠蔽される恐れがある。しかも、そこには米国の意志が多大に影響を与え
る可能性が高い。ここまでは、前回、紹介したとおりである。
今回は、秘密保全法が我々の生活にどのように関わってくるのか、いくつか
事例を挙げて考えてみたい。
秘密保全法とは、行政機関が「国の存立にとって重要なもの」と判断した情
報を「特別秘密」に指定し、漏洩した者、情報にアクセスしようとした者など
に重罰を科す、という法案である。「特別秘密」は、「国の安全」「外交」
「公共の安全および秩序の維持」の3分野から選ばれる。
「国の安全」は、主に防衛省を中心とした国防、安全保障に関する情報であ
る。「外交」は、外務省を中心とした外交戦略やTPPなどの経済交渉に関する
情報が指定されるだろう。では、この、「公共の安全および秩序の維持」とい
う曖昧に表現された項目には、一体、何が含まれるのだろうか。
◇ 政府の情報隠しが強いた無用の被曝 ◇
例えば、福島第一原発事故発生時に秘密保全法が導入済みであれば、「公共
の安全および秩序の維持」に当たるとして、緊急時迅速放射能影響予測ネット
ワークシステム「SPEEDI」のデータは未だに公開されなかった可能性は高いよ
うに思う。
現実にも、SPEEDIの情報が一部公開されたのは、事故から10日以上も経った、
3月23日のことだった。細野豪志首相補佐官は、5月2日の統合会見で、公開し
なかった理由について、「公表して社会にパニックが起こることを懸念した」
と説明した。
当時、SPEEDIは、国民がもっとも公開を臨んだ重要な情報の一つだった。に
も関わらず、政府は、独断で、起こるかどうかも分からないパニックを恐れ、
「公共の安全」や「秩序の維持」を優先したのだ。
結果的に、南相馬市の住民などは、より線量の高い飯舘村に避難し、浪江町
では、住民約8000人が同町内の津島地区に避難した。だが、実際には、避難先
のほうが高線量だったことが後に明らかになった。
もし、SPEEDIが早い段階で公表され、活用されていれば、住民に、このよう
な無用な被曝を強いることはなかったに違いない。公益に反する決断をしたの
は日本政府の方だったが、その責任は誰もとっていないし、根本的な反省もな
されていない。
おかしなことに、事故直後の3月14日には、文科省が外務省を通じ、SPEEDI
のデータを米軍に提供していたことが発覚している。
都合の悪い情報は国民には隠し、米軍の要請には素直に応える。日本の主権者
はいったい誰なのか――。岩上安身は、政府が真っ先にSPEEDIの情報を提供し
ていたことが明らかになった時点で、当時の文科大臣に、そう問いかけている。
日本の政府の姿勢をあらわす象徴的な一件だが、秘密保全法が制定されれば、
このようなことが往々にして繰り返されるのではないか。
(関連動画 2012年1月17日「日本の主権者は誰なのか」岩上安身、平野博文
文科相に質問 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/2444 )
日本の政府の姿勢をあらわす象徴的な一件だが、秘密保全法が制定されれば、
このようなことが往々にして繰り返されるのではないか。
◇ 「特別秘密」は誰のための「秩序」なのか ◇
「公共の安全、秩序の維持」を主な任務としているのは、「警察」である。
日弁連も、昨年12月20日付で発表した「秘密保全法案の作成の中止を求める意
見書(http://bit.ly/15jjxzT )」の中で、「公共の安全及び秩序の維持」につ
いて、次のような見解を示している。
「『公共の安全及び秩序の維持』という文言は、警察法1条で警察の所掌事
務として規定されている文言と同じであり、有識者会議に警察庁、公安調査庁、
海上保安庁の官僚が同席していたことからすると、警察の所掌する事務全般に
わたって秘密の網が掛けられることを予定していると考えられる」
「警察官は、町のお巡りさんから上層部にいたるまで、100%全員が『裏
金』で汚染されている」――こう語ったのは、仙波敏郎氏だ。
仙波氏は愛媛県警察の元警察官。2005年当時、現職警察官として初めて警察
の裏金問題を実名で内部告発した人物である。
裏金作りに必要な「架空の捜査協力費の領収書」を作成するよう、上司から
命じられた仙波氏は、これを拒否。「全国27万人いる警察官の中で、唯一、自
分だけが一度も裏金作りに加担しなかった警察官である」と話すほど、警察に
よる組織的な裏金作りが常態化していたというのだ。
仙波氏は、上司から、度重なる「裏金作り」の命令を受けたが、全てを拒否
した。結果、同期でもっとも早く巡査部長昇任試験に合格したにも関わらず、
以降、定年退職するまでの35年間、一度も昇進することなく、巡査部長という
階級に留まることとなった(日本警察史上、最長記録だという)。
さらに仙波氏は、岩上さんによるインタビューの中で、「愛媛県警の女子職
員に対して現職の刑事がレイプする、そういうことも極々、普通ですね」と、
裏金づくりにとどまらない警察の腐敗の驚愕の実態を語っている。
(2010年11月6日 岩上安身による仙波敏郎氏インタビュー
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/1373 )
こうした警察犯罪は、愛媛県警だけが例外なのではない。北海道警察は組織
ぐるみの裏金(道警の内部調査では総額10億9600万円)作りが発覚し、現職警
官、OB含め約2000人のポケットマネーから、合計9億6千万円を返還。数千人規
模の警官、幹部が処分されている。
関連動画
( 2010年6月30日 岩上安身による、道警裏金問題を追求した元北海道新聞
記者・高田昌幸氏インタビュー:インタビュアー岩上安身 http://iwj.co.jp/
wj/open/archives/10954 )
(2010年8月30日 道警を告発し、自らも裏金作りに関わってきた元北海道
警釧路方面部長・原田宏二氏インタビュー:インタビュアー岩上安身 http://
iwj.co.jp/wj/fellow/archives/1613 )
もし、秘密保全法が成立すれば、このような警察内部の犯罪を内部告発する
ことはほとんど不可能になるだろう。この国の「公共の安全及び秩序の維持」
を独白的に担う警察の内部では、こうした不祥事が横行しているというのに、
その内部告発は困難をきわめることになるのである。
秘密保全法が導入されれば、一部の幹部のみで、裏金システムに関わる情報
を、「特別秘密」にして公開できないようにすることも可能である。これに気
付き、正義感から告発に踏み切った者は秘密保全法違反で逮捕され、厳罰に処
されてしまう。筋が通らない、「正義」が実現しない世の中になってしまうの
である。
◇ 秘密保全法が隠す権力者の腐敗 ◇
警察の腐敗を内部告発によって明るみにする行為は、本来であれば、これは
「公益通報者保護法」で保護されるべき「公益に資する通報」のはずである。
秘密保全法によって、公益に適う内部告発の動きが鈍ることは間違いない。権
力の腐敗を暴こうとする動きも失速せざるをえなくなるのではないか。
多少強引にでも、暴いて明るみにさらさなければいけない「現実」というも
のがある。イギリスで起きた、「シークレットポリスマン事件」はその好例の
ひとつだ。
これは、警察による人種差別が常態化しているというマンチェスターの警察
署の実態を暴くため、イギリスの公共放送局「BBC」が、記者を警察にスパイ
として送り込み、取材にあたらせたというものだ。
記者はまず、正規の手続きを踏んで警察学校に入学。そこでは、すでに警察
学校生たちによる人種差別発言が横行していた。記者は、7カ月間にわたって、
隠しカメラとマイクで、その様子を収め続けた。
警察学校を卒業した記者はその後、順調に警察官となり、警察署勤務を開始
した。記者は、警察署で数ヶ月間、取材にあたったが、ある日、警察官に取材
活動を見抜かれ、捕まってしまう。BBC記者でありながら警察官の給料を不当
に取得したとし、「不当利益容疑」で逮捕され、起訴されることとなった。
しかし、BBCは、警察に「違法取材だ」と大きな圧力を受けながらも、それ
までの潜入取材の映像を編集し、30分のドキュメンタリーとして放映した。ド
キュメンタリーのタイトルは「シークレットポリスマン」。警察官による人種
差別の実態が白日のもとに晒され、番組は大きな反響を呼んだ。
「シークレットポリスマン」の手法は、「違法」であったかもしれない。し
かし、視聴者の多くは、「この報道は公共の利益にかなう」と判断したと思わ
れる。現に、「シークレットポリスマン」への起訴は取り下げられ、人種差別
に関わった警察官のうち、10人が退職、10人が処分対象となったという。
このように、内部告発や潜入取材が、権力者にとっては不都合で、不利益な、
しかし多くの国民にとっては利益をもたらす、すなわち「公益」をもたらすこ
とは多々ある。「公益」は、「権力者の利益」に反することも少なくない。と
ころが、時として「公益」という言葉は、権力者側に都合よく用いられ、「権
力者の利益」の保護膜のように使われることもある。
◇ TPP反対の声を上げた市民は「公共の秩序」を乱した「左翼」!? ◇
秘密保全法は、「公共の安全および秩序の維持」を理由として、どの情報を
「特別秘密」に指定するか、恣意的に決められる権力者側が、自己の腐敗の証
拠を、合法的に、そして永久に闇に封印することを可能にする。
秘密保全法の制定を目指している当事者中の当事者である安倍総理は、当然、
「公共の安全および秩序の維持」のために「特別秘密」の指定を判断する側に
立つ。
6月9日、安倍総理は渋谷で街頭演説を行った。その時、偶然、同じ場所では
「TPP反対」を訴える市民らが該当アピールを行なっていた。市民らは、安倍
総理の演説中、「TPP」断固反対を掲げた公約違反を糾弾するシュプレヒコー
ルを上げ続けた。
市民らの反対の声を受けた安倍総理は、「私たちはあんな民主主義に対する
挑戦には、絶対に負けない!」とその場で宣言し、その後、自身のfacebookに
「左翼の人達が入って来ていて、マイクと太鼓で憎しみ込めて(笑)がなって一
生懸命演説妨害してました」、「彼らは恥ずかしい大人の代表たちでした」と
書き込んだ。
どうやら、市民は、安倍総理にとっての「公共の秩序」を乱したようだ。し
かし、実際には、TPP反対のアピールをしていた市民らは、約半年前、衆院選
の直前に自民党が掲げていた公約と同様の内容をアピールしていただけにすぎ
ない。権力側の都合で「公共の秩序」を判断する基準はコロコロ変わりうる。
秘密保全法が制定されたら、何を基準にして、どんな情報が「特別秘密」に指
定されるのか、公正さが確保されるか、きわめて疑わしい。
果たして政府に、「公共の安全・秩序」とは何か、という価値判断をすべて
委ねてしまっていいのだろうか。
なお、自民党改憲草案でも、「国防軍」や「国民の責務」などの条文で、
「公益及び公の秩序」という文言は、たびたび使用されている(当然のように、
「表現の自由」もこの文言で制限されている)。また、初回のモンゴリアン・
チョップで触れた「国家安全保障基本法」でも、自衛隊の任務について「必要
に応じ公共の秩序の維持に当たる」と定めている。
「公共の安全および秩序の維持」という言葉が、 こうした法案の施工後、
どのように我が身に降り掛かってくることになるか、ここで挙げたいくつかの
事例をもとに考えていただきたい。
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http://iwj.co.jp/ (IWJホームページ)
【再掲】“The powerful can be as timid as the weak.” ERIC HOFFER