『おーい 栗の助』 森栗丸 「2017.3.31 東京新聞」
参考ブログ 六百番歌合 目録・定家番抜書
寄月恋
やすらひにいでにしままの月のかげ我がなみだのみそでにまてども
おろかにもおもひやるかなきみももしひとりやこよひ月をみるらん
寄雲恋
ときのまにきえてたなびく白雲のしばしも人にあひみてしかな
あくがるるこころもそらにひかずへて雲にやどかるものおもひかな
寄風恋
しらざりしよぶかきかぜのおともにずたまくらうときあきのこなたは
ものおもふ身もならはしのをぎの葉にいたくなふきそ秋のはつかぜ
寄雨恋
さはらずはこよひぞきみをたのむべきそでにはあめのときわかねども
こぬ人をまつ夜ふけゆく秋のあめはそでにのみふる心ちこそすれ
寄煙恋
かぎりなきしたのおもひのゆくへとてもえむけぶりのはてやみゆべき
もしほやくうらのけぶりをかぜにみてなびかぬ人のこころとぞしる
寄山恋
あしびきのやまぢのあきになる袖はうつろふ人のあらしなりけり
この世にはよしのの山のおくにだにありとはつらき人にしられじ
寄海恋
とほざかる人のこころはうなばらのおきゆくふねのあとのしほかぜ
わたつうみのなみのあなたに人はすむこころあらなん風のかよひぢ
寄河恋
いつかさはまたはあふせをまつらがはこのかはかみにいへはすむとも
みなせがはあさきちぎりとおもへどもなみだはそでにかけぬ日ぞなき
寄関恋
身にたへぬおもひをすまの関すゑて人にこころをなどとどむらん
あふさかの関のこなたになをとめてこれよりすぐるなげきせよとや
寄橋恋
人ごころをだえのはしにたちかへりこの葉ふりしくあきのかよひぢ
おもはずにをだえのはしとなりぬれどなほひとしれずこひわたるかな
寄草恋
いはざりき我が身ふるやのしのぶぐさおもひたがへてたねをまけとは
ながめするこころのねよりおひそめてのきのしのぶはしげるなるべし
寄木恋
こひしなばこけむすつかに柏ふりてもとのちぎりのくちやはてなん
かくばかりおもふときみもしらがしのしらじないろにいでばこそあらめ
寄鳥恋
かものゐる入江のなみをこころにてむねと袖とにさわぐこひかな
さほがはのきりのまぎれのほどだにもつまもとむとてちどり鳴くよを
寄獣恋
うらやまずふすゐのとこはやすくともなげくもかたみねぬもちぎりを
いかでわれふすゐのとこにみをかへてゆめのほどだにちぎりむすばん
寄虫恋
わすれじのちぎりうらむるふるさとのこころもしらぬまつむしのこゑ
こぬひとのあきのけしきやふけぬらんうらみによわるまつむしの声
寄笛恋
ふえたけのただひとふしをちぎりとてよよのうらみをのこせとやおもふ
はるばるとなみぢわけくるふえたけをわがこひづまとおもはましかば
寄琴恋
むかしきくきみがてなれのことならばゆめにしられてねをもたてまし
わぎもこがこころのひかぬことのねはわがまつにこそかはらざりけれ
寄絵恋
ぬしやたれみぬよのいろをうつしおくふでのすさびにうかぶおもかげ
みづぐきのあとにせきおくたきつせをまことにおとすわがなみだかな
寄衣恋
こひそめしおもひのつまのいろぞそれみにしむはるのはなのころもで
あかざりしそのうつりがはからころもこひをすすむるつまにぞありける
寄席恋
わすれずはなれしそでもやこほるらんねぬよのとこのしものさむしろ
わけてこそなかよりちりはつもりぬれこひのやまひにしづむさむしろ
寄遊女恋
こころかよふゆききのふねのながめにもさしてかばかり物はおもはじ
ふねのうちなみのうへなるうきねにはたちかへるとてそでぞぬれける
寄傀儡恋(くぐつによするこひ)
ひとよかす野がみのさとのくさまくらむすびすてける人のちぎりを
うらむべきかたこそなけれあづまぢののがみのいほのくれがたのそら
寄海人恋
袖ぞいまはをじまのあまもいさりせむほさぬたぐひにおもひけるかな
こひをのみしたのうきしまうきしづみあまにもにたるそでのなみかな
寄樵人恋
やまふかみなげきこるをのおのれのみくるしくまどふこひのみちかな
山人のかへるいへぢをおもふにもあはぬなげきぞやすむまもなき
寄商人恋
たつのいちやひをまつ賤のそれならばあすしらぬ身にかへてあはまし
こころざしあべのいちぢにたつ人はこひに命をかへむとやする
『おとうと』(2010)
https://youtu.be/z3rB5tNLfLU?t=282
『学校』(1993)
『息子』(1991)
寄月恋
やすらひにいでにしままの月のかげ我がなみだのみそでにまてども
おろかにもおもひやるかなきみももしひとりやこよひ月をみるらん
寄雲恋
ときのまにきえてたなびく白雲のしばしも人にあひみてしかな
あくがるるこころもそらにひかずへて雲にやどかるものおもひかな
寄風恋
しらざりしよぶかきかぜのおともにずたまくらうときあきのこなたは
ものおもふ身もならはしのをぎの葉にいたくなふきそ秋のはつかぜ
寄雨恋
さはらずはこよひぞきみをたのむべきそでにはあめのときわかねども
こぬ人をまつ夜ふけゆく秋のあめはそでにのみふる心ちこそすれ
寄煙恋
かぎりなきしたのおもひのゆくへとてもえむけぶりのはてやみゆべき
もしほやくうらのけぶりをかぜにみてなびかぬ人のこころとぞしる
寄山恋
あしびきのやまぢのあきになる袖はうつろふ人のあらしなりけり
この世にはよしのの山のおくにだにありとはつらき人にしられじ
寄海恋
とほざかる人のこころはうなばらのおきゆくふねのあとのしほかぜ
わたつうみのなみのあなたに人はすむこころあらなん風のかよひぢ
寄河恋
いつかさはまたはあふせをまつらがはこのかはかみにいへはすむとも
みなせがはあさきちぎりとおもへどもなみだはそでにかけぬ日ぞなき
寄関恋
身にたへぬおもひをすまの関すゑて人にこころをなどとどむらん
あふさかの関のこなたになをとめてこれよりすぐるなげきせよとや
寄橋恋
人ごころをだえのはしにたちかへりこの葉ふりしくあきのかよひぢ
おもはずにをだえのはしとなりぬれどなほひとしれずこひわたるかな
寄草恋
いはざりき我が身ふるやのしのぶぐさおもひたがへてたねをまけとは
ながめするこころのねよりおひそめてのきのしのぶはしげるなるべし
寄木恋
こひしなばこけむすつかに柏ふりてもとのちぎりのくちやはてなん
かくばかりおもふときみもしらがしのしらじないろにいでばこそあらめ
寄鳥恋
かものゐる入江のなみをこころにてむねと袖とにさわぐこひかな
さほがはのきりのまぎれのほどだにもつまもとむとてちどり鳴くよを
寄獣恋
うらやまずふすゐのとこはやすくともなげくもかたみねぬもちぎりを
いかでわれふすゐのとこにみをかへてゆめのほどだにちぎりむすばん
寄虫恋
わすれじのちぎりうらむるふるさとのこころもしらぬまつむしのこゑ
こぬひとのあきのけしきやふけぬらんうらみによわるまつむしの声
寄笛恋
ふえたけのただひとふしをちぎりとてよよのうらみをのこせとやおもふ
はるばるとなみぢわけくるふえたけをわがこひづまとおもはましかば
寄琴恋
むかしきくきみがてなれのことならばゆめにしられてねをもたてまし
わぎもこがこころのひかぬことのねはわがまつにこそかはらざりけれ
寄絵恋
ぬしやたれみぬよのいろをうつしおくふでのすさびにうかぶおもかげ
みづぐきのあとにせきおくたきつせをまことにおとすわがなみだかな
寄衣恋
こひそめしおもひのつまのいろぞそれみにしむはるのはなのころもで
あかざりしそのうつりがはからころもこひをすすむるつまにぞありける
寄席恋
わすれずはなれしそでもやこほるらんねぬよのとこのしものさむしろ
わけてこそなかよりちりはつもりぬれこひのやまひにしづむさむしろ
寄遊女恋
こころかよふゆききのふねのながめにもさしてかばかり物はおもはじ
ふねのうちなみのうへなるうきねにはたちかへるとてそでぞぬれける
寄傀儡恋(くぐつによするこひ)
ひとよかす野がみのさとのくさまくらむすびすてける人のちぎりを
うらむべきかたこそなけれあづまぢののがみのいほのくれがたのそら
寄海人恋
袖ぞいまはをじまのあまもいさりせむほさぬたぐひにおもひけるかな
こひをのみしたのうきしまうきしづみあまにもにたるそでのなみかな
寄樵人恋
やまふかみなげきこるをのおのれのみくるしくまどふこひのみちかな
山人のかへるいへぢをおもふにもあはぬなげきぞやすむまもなき
寄商人恋
たつのいちやひをまつ賤のそれならばあすしらぬ身にかへてあはまし
こころざしあべのいちぢにたつ人はこひに命をかへむとやする
『おとうと』(2010)
https://youtu.be/z3rB5tNLfLU?t=282
『学校』(1993)
『息子』(1991)
参考ブログ 六百番歌合 目録・定家番抜書
初恋
なびかじなあまのもしほびたきそめてけぶりは空にくゆりわぶとも
あしの屋のひまもるあめのしづくこそおときかぬより袖はぬれけり
忍恋
こほりゐるみるめなぎさのたぐひかなうへせくそでのしたのさざなみ
われとはとおもふにかかるなみだこそおさふるそでのしたになりぬれ
聞恋
もろこしのみずしらぬよのひとばかり名にのみききてやみねとやおもふ
いかにしてつゆをばそでにさそふらんまだみぬさとのをぎのうはかぜ
見恋
うしつらしあさかのぬまの花の名よかりにもふかきえにはむすばで
かかりけるすがたの池のをしのこゑききては袖のぬれしかずかは
尋恋
おもかげはをしへしやどにさきだちてこたへぬ風の松にふくこゑ
たづぬればためしやはなきまぼろしのよをへだてぬるなみのうへにも
祈恋
としもへぬいのるちぎりははつせやまをのへのかねのよそのゆふぐれ
くちはつるそでのためしとなりねとやひとをうきたのもりのしめなは
契恋
あぢきなしたれもはかなきいのちもてたのめば今日のくれをたのめよ
ただたのめたとへばひとのいつはりをかさねてこそはまたもうらみめ
待恋
かぜつらきもとあらのこはぎ袖にみてふけゆく夜半におもる白露
こぬひとをなににかこたんやまのはの月はまちいでてさ夜ふけにけり
遇恋
たふまじきあすよりのちのこころかななれてかなしき思ひそひなば
あひみてはまつとおもひしことのはに心の露のなほおもきかな
別恋
かはれただわかるるみちの野辺の露命にむかふものもおもはじ
わかれぢのありけるものをあふさかのせきをなにしにいそぎこえけん
顕恋
よしさらばいまはしのばでこひしなん思ふにまけし名にだにもたて
きみこふと人にしられぬいかにしてあはれうき名を今はつつまん
稀恋
としぞふるみる夜な夜なもかさならでわれもなきなか夢かとぞおもふ
こころざしあるかなきかのわすれみづいかなるをりにおもひいづらん
絶恋
こころさへまたよそ人になりはててなにかなごりの夢のかよひぢ
おもひわびあはれいくよかまきのとをしばしといひて月をみつらん
怨恋
あらざらんのちのよまでをうらみてもその面影をえこそうとまね
さてもなほたのむこころやのこしけんうらみけるさへうらめしきかな
旧恋
いかなりしよよのむくいのつらさにてこのとし月によわらざるらん
としへにしつらさにたへてながらふときかれんさへぞいまはかなしき
暁恋
おもかげもわかれにかはるかねのおとにならひかなしきしののめの空
あかつきのなみだやせめてたぐふらん袖におちくるかねのおとかな
朝恋
くもかかりかさなるやまをこえもせずへだてまさるはあくるひのかげ
いさいのちおもひはよはにつきはてぬゆふべもまたじ秋のあけぼの
昼恋
おほかたのつゆはひるまぞわかれけるわが袖ひとつのこるしづくに
あけぬればひるとききしをいかなればこひする袖はぬれまさるらん
夕恋
こひわびてわれとながめしゆふぐれもなるれば人のかたみがほなる
あけぼののあはればかりはしのぶれど今日をばいでず春のゆふぐれ
夜恋
たのめぬをまちつるよひもすぎはててつらさとぢむるかたしきのとこ
わがこひやゑじのたくひとなりぬらんよるのみひとりもえあかすかな
老恋
あかつきにあらぬわかれもいまはとて我がよふくればそふおもひかな
おきなさび身はをしからずこひごろもいまはとぬれんひとなとがめそ
幼恋
葉をわかみまだふしなれぬくれ竹のこはしほるべきつゆのうへかは
なさけなき風にしたがふひめゆりはつゆけきことやならはざるらん
遠恋
かなしきはさかひことなるなかとしてなきたままでやよそにうかれん
わすれずよいくくもゐとはしらねどもそらゆく月のちぎりばかりは
近恋
なみだせくそでのよそめはならへどもわすれぬやともとふひまぞなき
むめがえのすゑこすなかのかきねよりおもふこころやいろにみえまし
旅恋
ふるさとをいでしにまさるなみだかなあらしのまくらゆめにわかれて
あづまぢのよはのねざめをかたらなんみやこのやまにかかるつきかげ
初恋
なびかじなあまのもしほびたきそめてけぶりは空にくゆりわぶとも
あしの屋のひまもるあめのしづくこそおときかぬより袖はぬれけり
忍恋
こほりゐるみるめなぎさのたぐひかなうへせくそでのしたのさざなみ
われとはとおもふにかかるなみだこそおさふるそでのしたになりぬれ
聞恋
もろこしのみずしらぬよのひとばかり名にのみききてやみねとやおもふ
いかにしてつゆをばそでにさそふらんまだみぬさとのをぎのうはかぜ
見恋
うしつらしあさかのぬまの花の名よかりにもふかきえにはむすばで
かかりけるすがたの池のをしのこゑききては袖のぬれしかずかは
尋恋
おもかげはをしへしやどにさきだちてこたへぬ風の松にふくこゑ
たづぬればためしやはなきまぼろしのよをへだてぬるなみのうへにも
祈恋
としもへぬいのるちぎりははつせやまをのへのかねのよそのゆふぐれ
くちはつるそでのためしとなりねとやひとをうきたのもりのしめなは
契恋
あぢきなしたれもはかなきいのちもてたのめば今日のくれをたのめよ
ただたのめたとへばひとのいつはりをかさねてこそはまたもうらみめ
待恋
かぜつらきもとあらのこはぎ袖にみてふけゆく夜半におもる白露
こぬひとをなににかこたんやまのはの月はまちいでてさ夜ふけにけり
遇恋
たふまじきあすよりのちのこころかななれてかなしき思ひそひなば
あひみてはまつとおもひしことのはに心の露のなほおもきかな
別恋
かはれただわかるるみちの野辺の露命にむかふものもおもはじ
わかれぢのありけるものをあふさかのせきをなにしにいそぎこえけん
顕恋
よしさらばいまはしのばでこひしなん思ふにまけし名にだにもたて
きみこふと人にしられぬいかにしてあはれうき名を今はつつまん
稀恋
としぞふるみる夜な夜なもかさならでわれもなきなか夢かとぞおもふ
こころざしあるかなきかのわすれみづいかなるをりにおもひいづらん
絶恋
こころさへまたよそ人になりはててなにかなごりの夢のかよひぢ
おもひわびあはれいくよかまきのとをしばしといひて月をみつらん
怨恋
あらざらんのちのよまでをうらみてもその面影をえこそうとまね
さてもなほたのむこころやのこしけんうらみけるさへうらめしきかな
旧恋
いかなりしよよのむくいのつらさにてこのとし月によわらざるらん
としへにしつらさにたへてながらふときかれんさへぞいまはかなしき
暁恋
おもかげもわかれにかはるかねのおとにならひかなしきしののめの空
あかつきのなみだやせめてたぐふらん袖におちくるかねのおとかな
朝恋
くもかかりかさなるやまをこえもせずへだてまさるはあくるひのかげ
いさいのちおもひはよはにつきはてぬゆふべもまたじ秋のあけぼの
昼恋
おほかたのつゆはひるまぞわかれけるわが袖ひとつのこるしづくに
あけぬればひるとききしをいかなればこひする袖はぬれまさるらん
夕恋
こひわびてわれとながめしゆふぐれもなるれば人のかたみがほなる
あけぼののあはればかりはしのぶれど今日をばいでず春のゆふぐれ
夜恋
たのめぬをまちつるよひもすぎはててつらさとぢむるかたしきのとこ
わがこひやゑじのたくひとなりぬらんよるのみひとりもえあかすかな
老恋
あかつきにあらぬわかれもいまはとて我がよふくればそふおもひかな
おきなさび身はをしからずこひごろもいまはとぬれんひとなとがめそ
幼恋
葉をわかみまだふしなれぬくれ竹のこはしほるべきつゆのうへかは
なさけなき風にしたがふひめゆりはつゆけきことやならはざるらん
遠恋
かなしきはさかひことなるなかとしてなきたままでやよそにうかれん
わすれずよいくくもゐとはしらねどもそらゆく月のちぎりばかりは
近恋
なみだせくそでのよそめはならへどもわすれぬやともとふひまぞなき
むめがえのすゑこすなかのかきねよりおもふこころやいろにみえまし
旅恋
ふるさとをいでしにまさるなみだかなあらしのまくらゆめにわかれて
あづまぢのよはのねざめをかたらなんみやこのやまにかかるつきかげ
参考ブログ 六百番歌合 目録・定家番抜書
〔秋部〕
残暑
あききても猶夕かぜをまつがねに夏をわすれしかげぞたちうき
なつごろもまだぬぎやらぬゆふぐれは袖にまたるるをぎのうはかぜ
乞巧奠(きこうでん) ※陰暦七月七日の夜、供え物をして牽牛・織女星をまつる行事。たなばた。
秋ごとにたえぬほしあひのさよふけてひかりならぶるにはのともしび
つゆふかき庭のともしびかずきえて夜やふけぬらんほしあひのそら
稲妻
かげやどすほどなき袖の露のうへになれてもうときよひのいなづま
むばたまのやみをあらはすいなづまも光のほどははかなかりけり
鶉
月ぞすむさとはまことにあれにけりうづらのとこをはらふあきかぜ
しげき野とあれはてにけるやどなれやまがきのくれにうづらなくなり
野分
をぎの葉にかはりしかぜの秋のこゑやがてのわきの露くだくなり
なびきゆくをばながすゑになみこえてまのの野わきにつづくはまかぜ
秋雨
ゆくへなきあきのおもひぞせかれぬるむらさめなびく雲のをちかた
日にそへて秋のすずしさつたふなり時雨はまだし夕ぐれのあめ
秋夕
あきよただながめすててもいでなましこの里のみのゆふべとおもはば
ながめつるのきばのをぎのおとづれて松風になるゆふぐれのそら
秋田
いく夜ともやどはこたへずかどたふくいな葉のかぜのあきのおとづれ
わきてなどいほもる袖のしほるらむいな葉にかぎるあきの風かは
鴫
からころもすそののいほのたびまくら袖よりしぎのたつここちする
たびまくらよはのあはれもももはがきしぎたつ野べのあかつきのそら
広沢池眺望
すみにけるあとはひかりにのこれども月こそふりねひろさはのいけ
くまもなく月すむよははひろさはの池はそらにぞひとつなりける
蔦
あしの屋のつたはふのきのむら時雨おとこそたてね色はかくれず
けさ見ればつたはふのきにしぐれしてしのぶのみこそあを葉なりけれ
柞(ははそ)
ときわかぬ浪さへ色にいづみ河ははそのもりに嵐吹くらし
秋ふかきいはたのをののははそ原した葉は草の露やそむらむ
九月九日
いはひおきてなほなが月とちぎるかなけふつむきくのすゑのしら露
君がへむよをながづきのかざしとてけふをりえたる白菊のはな
秋霜
とけてねぬ夢ぢもしもにむすぼほれまづしるあきのかたしきの袖
秋の野の千くさの色もかれあへぬに露おきこむるよはのはつしも
暮秋
有明のなばかりあきのつきかげはよわりはてたるむしのこゑかな
くれてゆく秋のなごりもやまのはに月とともにや有あけのそら
〔秋部〕
残暑
あききても猶夕かぜをまつがねに夏をわすれしかげぞたちうき
なつごろもまだぬぎやらぬゆふぐれは袖にまたるるをぎのうはかぜ
乞巧奠(きこうでん) ※陰暦七月七日の夜、供え物をして牽牛・織女星をまつる行事。たなばた。
秋ごとにたえぬほしあひのさよふけてひかりならぶるにはのともしび
つゆふかき庭のともしびかずきえて夜やふけぬらんほしあひのそら
稲妻
かげやどすほどなき袖の露のうへになれてもうときよひのいなづま
むばたまのやみをあらはすいなづまも光のほどははかなかりけり
鶉
月ぞすむさとはまことにあれにけりうづらのとこをはらふあきかぜ
しげき野とあれはてにけるやどなれやまがきのくれにうづらなくなり
野分
をぎの葉にかはりしかぜの秋のこゑやがてのわきの露くだくなり
なびきゆくをばながすゑになみこえてまのの野わきにつづくはまかぜ
秋雨
ゆくへなきあきのおもひぞせかれぬるむらさめなびく雲のをちかた
日にそへて秋のすずしさつたふなり時雨はまだし夕ぐれのあめ
秋夕
あきよただながめすててもいでなましこの里のみのゆふべとおもはば
ながめつるのきばのをぎのおとづれて松風になるゆふぐれのそら
秋田
いく夜ともやどはこたへずかどたふくいな葉のかぜのあきのおとづれ
わきてなどいほもる袖のしほるらむいな葉にかぎるあきの風かは
鴫
からころもすそののいほのたびまくら袖よりしぎのたつここちする
たびまくらよはのあはれもももはがきしぎたつ野べのあかつきのそら
広沢池眺望
すみにけるあとはひかりにのこれども月こそふりねひろさはのいけ
くまもなく月すむよははひろさはの池はそらにぞひとつなりける
蔦
あしの屋のつたはふのきのむら時雨おとこそたてね色はかくれず
けさ見ればつたはふのきにしぐれしてしのぶのみこそあを葉なりけれ
柞(ははそ)
ときわかぬ浪さへ色にいづみ河ははそのもりに嵐吹くらし
秋ふかきいはたのをののははそ原した葉は草の露やそむらむ
九月九日
いはひおきてなほなが月とちぎるかなけふつむきくのすゑのしら露
君がへむよをながづきのかざしとてけふをりえたる白菊のはな
秋霜
とけてねぬ夢ぢもしもにむすぼほれまづしるあきのかたしきの袖
秋の野の千くさの色もかれあへぬに露おきこむるよはのはつしも
暮秋
有明のなばかりあきのつきかげはよわりはてたるむしのこゑかな
くれてゆく秋のなごりもやまのはに月とともにや有あけのそら
新聞によると、桂小南(かつらこなん)の名跡が21年ぶりに復活するそうだ。三代目である。
私がいちばん好きな噺家の名前を訊かれたら、必ず二代目桂小南と答える。数多いる名人,人気者よりも先に小南の名前を挙げるのは、決して渋い名前を出して落語通を気取りたいわけではなく、本当に好きなのである。だから此の度の襲名にはやはり心が浮き立つし、九月からの披露興行には是非行ってみようと思う。その時にあわせて、二代目への想いも書いてみたい。
下の写真は、以前所用で大阪へ行った時、偶々入った古書店で買った小南師匠のサイン本である。値段が五千円とかなり高価だったので迷ったが、思い切って買ってしまった。そのために、大阪からは歩いて帰ってくる羽目になってしまった。というのは冗談であるが楽しみな襲名である。
“ん廻し”
私がいちばん好きな噺家の名前を訊かれたら、必ず二代目桂小南と答える。数多いる名人,人気者よりも先に小南の名前を挙げるのは、決して渋い名前を出して落語通を気取りたいわけではなく、本当に好きなのである。だから此の度の襲名にはやはり心が浮き立つし、九月からの披露興行には是非行ってみようと思う。その時にあわせて、二代目への想いも書いてみたい。
下の写真は、以前所用で大阪へ行った時、偶々入った古書店で買った小南師匠のサイン本である。値段が五千円とかなり高価だったので迷ったが、思い切って買ってしまった。そのために、大阪からは歩いて帰ってくる羽目になってしまった。というのは冗談であるが楽しみな襲名である。
“ん廻し”