ファジアーノ岡山の魔境での16年間を振り返っています。越年企画になりましたが、今回はその3回目です。J2のことを「魔境」と誰が言ったかよく分かりませんが、私は誰かが言っているという情報抜きに『魔境J2』と呼んでいたように思います。また、誰かしら「J2沼」とも呼ぶようになりましたね。J1から降格して長らく抜け出せない底なし沼にはまり込んだ東京ヴェルディやジェフユナイテッド千葉、京都サンガF.C.などがそれを象徴する存在となりました。千葉と京都は「ズッ友」と呼ばれ、魔境に捕らわれた元J1クラブの代名詞になりました。
2016シーズン、初のJ1昇格プレーオフに進み、決勝に進出し、J1まであと1勝に迫ったファジでしたが、セレッソ大阪に「0-1」で敗れました。2024シーズンにプレーオフを制してJ1昇格を決めたファジですが、決勝で上位チームが下位チームに勝利してJ1昇格を決めたのは2016年のセレッソ大阪以来でプレーオフ史上2度目ということになりました。2015年のアビスパ福岡、2017年の名古屋グランパス、そして2023年の東京ヴェルディと3度リーグ戦上位チームがJ1昇格を果たしましたが、全て引き分けでの昇格でした。2018年、2019年、2022年は現行のJ1昇格プレーオフと異なり、J116位のチームとの入替戦を戦うレギュレーションでしたが、2018年リーグ戦6位からジュビロ磐田との入替戦(決定戦)に臨んだ東京ヴェルディは「0-2」で敗戦。2019年はリーグ戦4位の徳島ヴォルティスが決定戦に進出しましたが湘南ベルマーレと「1-1」で引き分けた為に昇格できませんでした。コロナ禍でプレーオフ自体が中止された2020年と2021年を挟んで、プレーオフの復活した2022年はリーグ戦4位で決定戦に進んたロアッソ熊本が京都サンガF.C.と対戦しましたが「1-1」の引き分けに終わり昇格を逃しました。上位チームのアドバンテージは殊の外大きく、下位チームがそれを打破する困難さがクローズアップされました。
それでは、ファジの振り返りに戻ります。3回目の今回は「停滞期」と名付けました。2017シーズンから2020シーズンの4年間を振り返ります。
【2017シーズン】
J1昇格まであと1勝に迫った2016シーズンは昇格を逃したJ2クラブの宿命ともいえる容赦ない洗礼を受けることとなりました。いわゆる「草刈場」です。チームの中心として引っ張ってきたDF岩政が退団、GK中林はサンフレッチェ広島、FW押谷は名古屋グランパスへ移籍します。リオ五輪代表の矢島は浦和レッズへレンタルバックとなり、チームのセンターラインが全て抜けるという事態になりました。入れ替わって、鹿島アントラーズからリオ五輪代表のGK櫛引が期限付き移籍、レノファ山口FCからGK一森を獲得、FW赤嶺は完全移籍でチームに残留し、FW豊川もレンタル延長で残りました。更に松本山雅FCから喜山が復帰し、清水エスパルスからMF石毛が期限付きで、湘南ベルマーレからMF大竹が完全移籍で加入しました。塚川などのルーキーも加わってチームは新たなステージに移行します。
2017シーズンはJ1から名古屋グランパス、湘南ベルマーレ、アビスパ福岡の3クラブが降格し、前年のJ2首位の北海道コンサドーレ札幌と2位の清水エスパルスが自動昇格、プレーオフを制したセレッソ大阪とともにJ1に昇格しました。J3からはJ1経験クラブで初めてJ3に降格した大分トリニータが1年でJ2に復帰して来ました。前年J2最下位のギラヴァンツ北九州が入れ替わってJ3に降格しました。
この年のファジアーノ岡山の年間成績は以下の通りです。
13勝16分13敗 勝点 55 得失点差 -5
長澤監督3年目のシーズンは赤嶺の獅子奮迅の活躍で勝利を積み上げる時期があるものの、赤嶺の故障離脱期間は苦戦がつつきます。そんな中で一森がレギュラーGKに定着、FWからCBまでこなすユーティリティプレーヤーに成長した片山が活躍を見せました。豊川、石毛、大竹の3枚も存在感を示しましたが、昇格争いに絡むことはできずに13位でシーズンを終えました。
J1昇格プレーオフは3位名古屋グランパス、4位アビスパ福岡、5位東京ヴェルディ、6位ジェフユナイテッド千葉の4チームが進出し、名古屋と福岡が決勝に進出、決勝はスコアレスドローに終わり、リーグ戦上位の名古屋が昇格を決めました。
リーグ戦最下位のザスパクサツ群馬がJ3に降格しましたが、21位のロアッソ熊本はJ2ライセンスを持たないブラウブリッツ秋田が首位に立ったことで救済されJ2に残留しました。J3で2位に入った栃木SCはJ2復帰を果たします。J2は益々「魔境」の色が濃くなってきました。
【2018シーズン】
クラブはJ1昇格を本気で狙う姿勢を強く示し、大型補強を敢行します。上田、後藤が復帰し、その他にもJ2クラブでの主力クラスを全て完全移籍で獲得します。長澤監督4年目のシーズンに明確な昇格を照準に入れた強化を行いました。2017年限りで加地が引退、豊川はベルギーへ武者修行、篠原がアビスパ福岡に、片山がセレッソ大阪に移籍するなど主力の抜けた穴は大きかったのですが、それを補う大型補強で期待を膨らませました。
J1からはヴァンフォーレ甲府、アルビレックス新潟、大宮アルディージャの3クラブが降格、J3から栃木SCが復帰しました。前年、リーグ首位の湘南ベルマーレ、2位のV・ファーレン長崎が自動昇格、プレーオフを制した名古屋グランパスと共にJ1へ上がり、ザスパクサツ群馬がJ3に降格しました。
この年のファジアーノ岡山の年間成績は以下の通りです。
14勝11分17敗 勝点 53 得失点差 -4
開幕から3連勝するなどロケットスタートに成功したこのシーズンのファジは4月中旬まで順調に勝点を積み上げて首位を快走します。しかし、GWの頃から一気に失速することになりました。シーズンが始まって間もなく、2006シーズンから社長を務めた木村取締役がJリーグ専務理事に就任することになって社長を退任、北川さんが新社長に就任するという激震があり、その時からチームの低迷も始まりました。加えてチームの快進撃を支えたイヨンジェが骨折で長期離脱するようになると柱を失ったチームは全く勝てなくなりました。シーズン終盤まで調子を戻すことができないまま、15位でシーズンを終えました。大型補強の成果が中々出せないまま消化不良のシーズンでした。長澤さんはこのシーズン限りで監督を退任しました。
2018シーズンに加わった金山、高卒ルーキーで入団した阿部が今ではチーム最古参になるほどクラブは新陳代謝を繰り返すことになります。
このシーズンからレギュレーションを変更したJ1参入プレーオフはJ1ライセンスを持たないFC町田ゼルビアが4位に入ったことで、3位の横浜FC、5位の大宮アルディージャ、6位の東京ヴェルディの3チームでトーナメントを実施、勝ち抜いた東京Vがジュビロ磐田との入替戦(決定戦)に挑みましたが「0-2」で敗れ昇格を逃しました。参入プレーオフはこの後2019年と2022年に実施されますが、J1勢を破って昇格するJ2クラブは現れなくなります。
リーグ戦21位のロアッソ熊本と22位のカマタマーレ讃岐の2チームがJ3に降格することになりました。この年以降、瀬戸大橋ダービーができなくなり寂しさを感じることになります。
【2019シーズン】
長澤監督が2018シーズン限りで退任したファジは新たに有馬監督を迎えます。歴代の監督がDF出身であったチームは初めてFW出身の監督を迎えることになりました。チームは大きな選手の入れ替わりなく開幕を迎えました。
前年のリーグ戦首位の松本山雅FCと2位の大分トリニータがJ1に昇格し、J1からは柏レイソルとV・ファーレン長崎の2チームが降格して来ました。J3に降格したロアッソ熊本とカマタマーレ讃岐と入れ替わってJ3からFC琉球と鹿児島ユナイテッドFCがJ2に昇格しました。
この年のファジアーノ岡山の年間成績は以下の通りです。
18勝11分13敗 勝点 65 得失点差 +2
シーズン当初は試行錯誤しているように感じたチームはイヨンジェがゴールを量産するようになって順位を上げて行きました。7月には4連勝するなど昇格争いに加わりました。しかし、大事なポイントとなる試合に大敗するなどで最終的には9位で終わることになりました。チームはJ2昇格以降で最高の18勝をあげましたがプレーオフに届きませんでした。
J1参入プレーオフには、3位大宮アルディージャ、4位徳島ヴォルティス、5位ヴァンフォーレ甲府、6位モンテディオ山形の4クラブが進出し、徳島と山形が勝ち上がります。そして2回戦に「1-0」で勝利した徳島が湘南ベルマーレとの入替戦(決定戦)に進みましたが「1-1」の引き分けで昇格を逃しました。このレギュレーションは昇格には大変厳しいものとなり、「自動昇格以外に昇格の道はない」と思わせるようになりました。山形を指揮した木山監督は3度目のプレーオフ敗退となり、この悲運はファジの監督になってものしかかることとなります。
J2で22位となったFC岐阜と21位の鹿児島ユナイテッドFCがJ3に降格することとなりました。
【2020シーズン】
有馬監督2年目のシーズンを迎えます。ファジの財政状況は中々上向かず、大きな補強ができないままに開幕を迎えることとなりました。開幕戦のツエーゲン金沢戦にイヨンジェのゴールで勝利し、幸先良いスタートを切れたと思わせました。しかし、サッカーとは無関係のところでクラブは大きな存続の危機に瀕することになろうとは・・。
今から思えばとんだ茶番劇となったCOVID-19の為にリーグは3ヶ月以上の中断を余儀なくされます。一体、あのコロナ狂騒曲でに、昨年ある集まりに出席した時の会話です。私が「コロナに感染したことは一度もない」と言うと、「なんで?」と問われました。彼らは皆コロナ感染をしたことがある人々です。いや、PCR検査のからくりでコロナ認定されたといった方が良いのかも知れませんが・・? 私は「ワクチンを一度も打ってないからですよ」と答えました。mーRNAワクチンによって自然免疫を壊滅的に破壊された人々はコロナと称する感染症だけでなく、癌や心臓病、脳疾患にもなりやすくなりますから、死亡率が一気に高まります。そのことを暗に伝えたかったのですが、言葉の意味を理解されることはありませんでした。昨年、一体何人の著名人が鬼籍に入ったかは皆さんお分かりだと思います。それを誘発しているのが何なのかを真剣に考える時だと思いますよ。
閑話休題
話を戻します。6月下旬に無観客試合で再開した2020シーズンのリーグ戦は強行日程で試合を消化することになります。自動昇格制度は残りますが、プレーオフは中止になり、降格もなくなりました。調子を掴めなくなったファジは成績が低迷しました。変則日程はスタジアムの収容人数を制限した有観客になっても続き、このシーズンのファジアーノ岡山の年間成績は以下の通りになりました。
12勝14分16敗 勝点 50 得失点差 -10
J2参入当時のような惨憺たる成績で17位に低迷します。COVID-19がなければ順調に勝点を伸ばし昇格争いに絡めたと思われるシーズンは思わぬ邪魔が入り、近年では最低の数字で終えることになりました。
2020シーズン限りで赤嶺や上田、椋原などチームの功労者が退団することになり、変革を求められる時期になって行きます。
そんな中で上門や徳元、白井など新しい可能性を感じさせる新戦力が台頭の気配を見せて来ました。彼らは早晩J1へ個人昇格することになるのですがチームは新たなステージへ向かって行くきっかけとなるシーズンだったのかも知れません。
この年、リーグ戦で1位となった徳島ヴォルティスと2位のアビスパ福岡がJ1に昇格しました。
今回は停滞期として2017シーズンから2020シーズンを振り返りました。非常に苦しい時期が続いたのですが、やがてそれを乗り越えたクラブが悲願達成に向かって動き出すことになります。
次回はその4:悲願達成編(2021年~2024年)の昇格決定までの4年間を取り上げます。このシリーズは魔境脱出の為の苦闘16年のファジの歴史を4年ずつに分けた振り返りです。その16年は次回で一旦完結し、新たな世界へ挑むことになりますね。
よろしくお願い申し上げます。