日本シリーズは全く面白くもなんともないので、話題にするかどうか迷うところでした。初戦、第2戦とソフトバンクが圧勝したのを見ても、今年のシリーズがあっさり終わりそうな雰囲気です。
ところで、「巨人は日本シリーズで2勝以上してはいけない」という話を聞いたことがありますか? 昨年なら、パの主催試合からスタートしてましたから「巨人は日本シリーズで1勝もしてはいけない」シリーズでした。そして、結果的にその通りになりました。
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何故、そんな話が出てくるのか? それは、巨人だけでなく全ての球団、いやNPBの組織的な問題解決能力の欠如にあります。
日本テレビとすれば、上手いことリーグを盛り上げてくれて惜しいところで敗れて、巨人が日本シリーズ自体に出てこないことが最も望ましい結果でした。今シーズンのようにシリーズと言ってもコロナ禍で半分しか収容できないホームゲームの上に東京ドームは都市対抗の為に使用できず、わざわざ京セラドーム大阪で主催試合を行わなくてはならなくなっていれば余計に日本シリーズの開催価値がなくなっています。
その上、巨人の主催試合ですから日本テレビは地上波で放映せざるを得なくなります。他球団が出るのであれば、さっさと尻尾を巻いてとんずら出来たのですが、巨人が出るとなればさすがにそれはできない相談です。これが一番のネックです。
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プロ野球の公式戦が地上波で殆ど放映されなくなって15年近くが経ちました。視聴率稼ぎのドル箱コンテンツだった時代は遠く過ぎ去り、今ではせいぜいBSで放映されればましな方という状況になりました。各種の有料コンテンツで好きな人が契約して視るのであれば何ら問題ないのですが、地上波放送となれば多くの問題点を抱えることになります。
これらは全てNPBの組織的怠慢が招いた窮地なのですが、中の人は気付いていないようですね。「プロ野球人気は廃れていない」と本気で信じているようで、もはや質の悪い宗教信者のような体たらくです。
昭和30年代後半から50年代頃までは「野球を見ない、野球に興味がない日本人は1人もいない」と豪語できるほど高い人気がありました。それは当時、プロスポーツと言えば、野球・大相撲・ボクシングぐらいしかなかった時代だからです。当然ですが、野球だけでなく大相撲もボクシングも視聴率の取れる人気コンテンツでしたし、チャンピオンには今より数段価値がありました。
本題に戻ります。では、何故「巨人は日本シリーズで2勝以上してはいけない」のでしょうか?
上で述べたように、日本シリーズと言えども地上波で放映することで利益を生み出す打ち出の小槌ではないのです。スポンサーとのウィンウィンの関係も崩れてしまいました。今年の日本シリーズはセ・リーグの主催試合から始まります。もし、巨人が2勝以上してしまったら、2試合だけの放映で済んだはずの日本テレビにとっては第6戦以降の放映をせざるを得なくなってしまいます。テレビ離れの現代でも、通常のレギュラー番組を放映した方が、日本シリーズを放映するより遥かに視聴率を稼げるのです。しかも、試合が伸びれば放送を途中で打ち切ることができません。21:00以降に予定していた通常番組の放送が後ろ倒しになってしまいます。これは局側の中の人にとっては致命的な打撃となります。スポンサーも嫌がるでしょうし、何も良いことがないというのが残念ながら現実です。プロ野球ファンからすれば「そんなことはない」とお怒りになるでしょう。かつては私もそうでした。というより、今でもそう思っています。「日本人の血は野球でできている」と言い続けてきた身ですから、「そうではない」とは思いたくないのです。
野球だけでなく、スポーツはどんな競技でも観戦するのは楽しいと思っているから「スポーツおたく」を自認しているのであって、それは鉄オタやアニオタの人達と何ら変わるものではありません。テレビ中継されればどんな競技であっても視るのが自然な流れだと思っています。マスゴミなどとメディア批判していたとしてもスポーツ中継は別物です。何故なら、競技のライブ中継で嘘はつけないからです。そんな選択肢の中からプロ野球というコンテンツが存在感を薄くし、いずれなくなるのではないかという危機感はここ数年持ち続けて来ました。
全てはNPBの組織的怠慢と言いましたが、まさしくそれがこの惨状を招いているというのは間違いありません。これは紛れもない事実です。
日本人にとって、最大の娯楽であり、最高のエンターテインメントであったプロ野球は、もうその座を明け渡して久しくなりました。国民の興味が多様化してしまったことでそうなったのですが、ことスポーツ全般での位置付けはというと、その存在を脅かすものは出てきません。Jリーグが逆立ちしても到底追い付けない底堅い人気を持ち続けているのは否定することができないのです。特にJ2のファジなどは、「カープ女子」にすら手も足も出ないマイナー感に打ちひしがれるのが日常です。それにJリーグを熱心に観る人々の殆どは野球も観ています。プロ野球を熱狂的に応援する人々の中にJリーグも観るという方はほぼいません。この拡がりの差が縮まってくることは今のところ気配すらありません。
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スポーツ界の地盤沈下を象徴する姿がプロ野球なら、その地位を復活させるのはNPBの中の人たちの義務です。日本国内からスポーツ応援文化がなくなることはないでしょうから、更に高め深めていくのは組織に携わる方の責任として携わって貰わないといけません。
そうでなければ、プロスポーツがビジネスとして成り立たなくなってしまいます。そんな無味乾燥の砂を噛むような味気ない人生だけは誰しも望んでいないでしょう。
それにしても、「巨人は日本シリーズで2勝以上してはいけない」という論調で良いのでしょうか? 少なくとも日本テレビがそれを言ってはいけないでしょう。そんなに局の視聴率が大事なら「巨人が4連勝してシリーズを終わらせば良い」と言えば良いのです。そう言えないならば、それは球団側に責任があります。ソフトバンクに勝てないならば、「せめて早々に負けてくれ」という本音がなせる業であるならば、もう絶対に勝てることはないでしょう。今回、シリーズ全試合でDH制採用を許諾したのも勝てなかった時の免罪符を求めての行動と思えてなりません。
ここ10年ぐらいですが、私の周辺で日本シリーズを話題にする人は激減しました。その現実をひっくり返すエネルギーを持った人が何人いるのか? あまり希望は持てそうにありません。
プロ野球は少年たちの夢舞台ではなくなったのであれば、寂しいだけでなく競技のレベル低下が心配になってしまいます。
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昭和は遠くなりにけり!?