出典:https://www.sanyonews.jp/article/1405121
【木村正明の未来に向かって】岡山のファンがスタジアムに入りたくても入れない。その状況に気づいてからでは遅いのです
※以下、引用です。
サッカー観戦の醍醐味はフットボールスタジアム
Jリーグの専務理事の時、全国を回って思ったことがあります。ファジアーノができたころは少なかったフットボールスタジアムが、どんどん増えているということです。西日本にある多くのJ1クラブではメインスタンド、バックスタンドの両方に屋根があり、2万5千人収容というJリーグが求めているスタジアムが整ってきています。
他の街と比べても、岡山はかなり遅れている印象です。ファジアーノはこの街で20年以上愛され、育ってきました。だから、スタジアムは宝の持ち腐れになることはないと思います。これまでの実績をもって説明すれば、多くの人に納得いただけるタイミングだと考えました。クラブが本腰を入れて動き出すことを宣言して、周りのみなさんに本気度を伝えることにしました。呼ばれたらどこでも行って思いを訴えたいと思っています。
確かに「J1に行ってから言えよ」「(ホームゲームが)満員にもなっていないのに何言っているんだ」という人は少なからずいると思います。欲を言えばきりがないですが、まずは収容人数2万5千人が基本になります。コロナ禍前のJ1の平均入場者数は約2万人です。岡山は地の利の良さに加え、西日本にJ1の半分のクラブがあることから、確実に平均を超えると思います。岡山の皆さんが、スタジアムに入りたくても入れない状況になることに気づいてからでは遅いのです。そこが、新スタジアムが必要だと思う一番大きな理由です。
シティライトスタジアム(Cスタ)でもJ1の試合はできますが、サッカー観戦の醍醐味をお見せするなら専用スタジアムがふさわしいのではないでしょうか。陸上のトラックからスタンドまでは26メートルあります。例えば、中村俊輔(元選手)のプレーを(サッカー専用スタジアムの)ニッパツ三ツ沢球技場で目の前で見るのと、25メートルプールを挟んで見ているのを想像してもらえると分かりやすいと思います。臨場感がまるで違います。歌舞伎は体育館ではなく歌舞伎座で見たいし、野球は野球場でやります。そろそろサッカーもフットボールスタジアムでやることを認めてもらいたいです。
もう一つの理由はtoto(スポーツ振興くじ)です。私も担当役員だったので内情を少し存じ上げているのですが、2024年からの助成対象クラブがありません。年間10億円で、3年間助成を受けられます。他のクラブがポンと出てきたら取られますし、逆に該当クラブがずっとないと、この助成そのものがなくなる可能性すらあります。個人的には焦っているところではあります。
岡山に住む人の自慢になるはず
実現に向けては、三つのステップがあると思っています。「必要なんだ」と伝えることが第1段階、そして「なぜ必要なのか」を訴えることが第2段階。第1、2段階はシンクロしながらやっていくようになります。そして第3段階は「なぜ」に対する共感の広がりです。
最初は「はぁ?」みたいなところから始まるでしょう。それが話しているうちに、聞いた方が「なるほど」と思い、「そんなのほんまにいるん?」「いや、こういうことでいるんよ」という話がじわじわと広がっていけばと考えています。練習場(政田サッカー場、2013年完成)の時と同じですね。練習場の時は、サポーターの存在が大きかった。みなさんが動いてくれて、雰囲気がちょっとずつ変わっていきました。「そこまで熱い思いを持っているのだったら」と感じてもらうことも大事だと感じました。
現段階では、新スタジアム構想は私たちの“片思い”でしかありません。「スタジアムができたら一緒に行こうね」と声を掛けてくださり、うねりみたいなものが徐々に出てくくればありがたいですが、「今の場所から変わるのは嫌」という人もいると思います。ファジアーノの社員が、サポーター、ボランティア、スタジアムに来てくださっている方々と、会話のキャッチボールをしていかないといけません。必要性をご理解いただくまでコミュニケーションを取り続けることはとても大切です。
新スタジアムについて、私たちは「場所はお任せします。財源はみんなで」というスタンスです。自前でスタジアムを造ったクラブは今治だけで、親会社が造ったケースは磐田と柏がありますが、90数パーセントは地域の投資を受けて自治体が造ったものです。基本は自治体にご相談すべきだと思います。本音を言えば、思いを訴えて、共感してくださる方に少しでもお金をいただく。これに尽きると思います。
そして、皆さんが集まりやすい場所ならどこでもいいと考えています。「駅から近い」「駐車場がある」の両方があればうれしいですが、それは来てくださるみなさんにとってありがたい場所が、私たちにとってもありがたい場所になります。これは「たぶん」の話ですが、複数の自治体が造りたいという話が出てくる可能性もあると思います。そうすれば、比較などの議論が深まり、大げさですが県民を巻き込んだ議論につながるはずです。いろいろな意見を踏まえて、行政が「ここに建設する」と判断してくださればいいなと思っています。
議論の一つにしたいと思っているのが、「中途半端ではない施設にすること」です。Jリーグにいる時、広報チームに全国的なメディアの総露出量を調べてもらいました。(今治里山スタジアムが完成予定だった)今治と(スタジアムとアリーナを併設した「長崎スタジアムシティ」が24年開業予定の)長崎はかなり取り上げられていました。新スタジアムが24年にオープンする予定の広島もこれから話題に上るでしょう。岡山にスタジアムを造る上で、収容人数なのか、場所なのか、多目的利用なのか…いろいろな中途半端にしないためのポイントがあります。そこもみなさんと話し合いをしていきたいです。
完成すれば、できるだけ地域に開放することが鍵になります。小中高校、社会人の大事な試合や女子サッカーの試合を開催する、芝生をサッカーだけでなく子どもたちの遊び場として開放する考えもあると思います。“晴れ舞台”での経験は、岡山に住む人の自慢にきっとなるはずです。
日本代表や海外有名クラブの試合も可能に
しかしながら、今は街の話題になっていないことは承知しています。メディアなどで取り上げてもらっていますが、ちまたでは試合の勝ち負けぐらいしか話題になっていないでしょう。もっともっと話題になるようにしないとだめです。まずは、社長の北川が言っているように、今年3回のホームゲーム満員を実現していくことが必要です。
私が社長だった12年間、「あなたに応援してほしいんだ」と生意気を言いながら、会う人に「スタジアムに来てください」と言い続けてきたんです。本音は自分が生きているうちに絶対にJ1に上がりたいし、スタジアムの完成を見て死にたい。だから1年でも早く動かないといけないと思っています。
個人的にはスタジアムですら通過点だと思っています。「J(リーグ)に上がる扉」「J1に昇格する扉」「タイトルを獲得する扉」があって、今は二つ目です。スタジアムのキャパ(収容人数)が増えれば、扉を開ける時期は近づいていきます。2万5千人のスタジアムがあれば、日本代表や海外有名クラブを呼んだ試合を開催する可能性も出てきます。そうすれば、興味がなかった人たちの気持ちが、オセロのように変わっていくと思います。
スタジアムに1回でも来てくれる人が増えたら、「あの試合に行ったことがある」「あの外国人選手、良かったね」という話題が、見えない力になり、クラブの厚みが増していきます。そして収入も増えていきます。クラブの収入が2億円増えれば、リーグでの順位は三つか四つは上がります。現在、ファジの強化費は約9億円ですが、スタジアムができれば20億円も視野に入ります。そうすれば、タイトルは十分狙えます。J1のタイトルを取り、みんなでシャーレを掲げたい。そのためにはスタジアムが必要なんです。どの街もそのような会話や議論を繰り返して、スタジアムを造り歴史をつくってきたことを知りました。
わがままを言えば、2003年11月23日、新潟が県民4万人の前でJ1を初めて決めた試合のようになるのが理想です。今年できたら最高ですけど、それは難しいので一刻も早く実現したいです。
きむら・まさあき 1968年、岡山市生まれ。朝日高、東京大卒。93年に米金融大手ゴールドマン・サックス証券に入社し、執行役員など歴任した。2006年、ファジアーノ岡山スポーツクラブを創業し、代表取締役に就任。09年にJリーグ参入を果たした。18年3月から22年3月までJリーグ専務理事を務めた。
(FAGIGATEより)
クラブがこのタイミングで専用スタジアム構想を持ち出すことに関して、当然ながら賛否両論が出て来ると思います。全ての人がファジに対する投資に賛成している訳ではありませんから。
しかし、木村オーナーの言葉に触れると、一つ一つがなるほどと思わされてしまいます。皆の心に響き渡る熱意を感じます。J1に昇格してからでは遅いというのもよく分かります。
Cスタはファジの聖地として長きに渡って戦いの歴史を見つめて来ました。愛着もあります。しかし、設備的に足りない箇所を指摘され続けて来ました。CスタでJ1を戦うことができない訳ではありませんが、キャパの問題が噴出することは避けられません。そして、陸上競技場である為の物足りなさを感じることになるのも否めません。
岡山駅から徒歩圏内にあるという立地の優位さによって存在価値を高めてきたシティライトスタジアム。2005年に開催された岡山国体の為に改修されてそれなりに綺麗ではありますが、施設そのものは既に60年以上を経過しています。この場所でスタンドを増設したり、バックスタンドに屋根を設置したりという工事には、スタジアムが立っている地域の事情が障壁となっています。
木村オーナーは私より若いので、まだまだ活躍していただけると思います。専用スタジアムを望む気持ちが県民に共有され、集約されて盛り上がった時に条件がある程度揃っていないことには話がスムーズには進まないでしょう。
issanが生きている内にファジがJ1で戦って日本一になる。その姿を見届けることが我が人生の最大の目標になっている今、その舞台を彩る専用スタジアムが岡山に存在するのであれば、これ以上の歓喜はありますまい。その目標に辿り着くためにも、今季のクラブの戦いに求められる成果がより大きくなります。
6月になろうとしています。今季の折り返しが目の前に迫っています。チームが飛躍する為にも、ここから白星を積み上げないといけません。もっともっと応援したいと思います。
よろしくお願い申し上げます。