世の中には謎の言葉が結構あって、歌の文句でもよく分からない言葉は数多くあります。
「いっぽんどっこ」という言葉を使った歌詞で有名なのが『出世街道』(唄:畠山みどり)です。若い方はご存知ないでしょう。私もギリギリです。
独鈷とは真言密教の法具の一つで「独鈷杵」のことで、元々はインドなどで武器として使用されていたものですが、それが煩悩を打ち砕く法具とされるようになったものだそうです。この独鈷を文様として使用したのが「独鈷紋」で博多織の帯に用いられるようになりました。一本の連続文様が「一本独鈷」、三本のものは「三本独鈷」と呼ばれるようになり、一般的に真ん中に一本ラインの入った男物の帯を「一本独鈷」というようになったとのことです。
転じて、大きな組織に属さない独立した組織、一匹狼などをあらわす言葉として使用されるようになりましたが、そもそもが極道用語だった為、広がりを見せることがありませんでした。
更に「一本刀」と重ねて、武士ではない渡世人の一匹狼的な姿を連想するようにもなったようです。
出世街道 (唄:畠山みどり)
作詞:星野哲郎
作曲:市川昭介
やるぞみておれ 口にはださず
腹におさめた 一途な夢を
曲げてなるかよ くじけちゃならぬ
どうせこの世は 一ぽんどっこ
男のぞみを つらぬく時にゃ
敵は百万 こちらはひとり
なんの世間は こわくはないが
おれはあの娘の 涙がつらい
他人に好かれて いい子になって
落ちていくときゃ 独りじゃないか
おれの墓場は おいらがさがす
そうだその気で ゆこうじゃないか
あの娘ばかりが 花ではないさ
出世街道 色恋なしだ
泣くな怒るな こらえてすてろ
明日も嵐が 待ってるものを
星野哲郎氏が「一本独鈷」という言葉で何を示そうとしたのか? それはよく分かりませんが、昭和30年代の時代背景を考えたら一匹狼的生き方に憧れを持つ気持ちも分からなくはないです。出世という言葉が世相を反映しています。高度成長期の勢いを感じることもできます。
しかし、人は一人では生きて行けません。結局、人とかかわって生きて行くしかないのです。
「一本独鈷」には、人生は一筋の道が長く続いているという様をあらわしているのだと思いますが、どちらかというと一人で生き抜く姿に憧れを抱く様子に見えてきます。
歌謡曲に見受けられる「謎歌詞」が何を伝えようとしていたのかを想像するのも楽しいことではないでしょうか?
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