新!編集人の独り言

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紅夜叉は利用された

2007-03-03 06:03:33 | Weblog
リング上ではメインの全女-FMWが観客の関心とは別の所で行われていた。
終電に乗り遅れまいと、既に多くの観客が席を立っていた。
集中力を欠いた観客の前で、四人が必死の攻防を繰り広げる。
相手の技を受けまいとコーナーの豊田を工藤が阻止する。
「何だアイツ等、つまらねぇ試合してやがんなぁ!帰ろうぜ!」
ダンプ松本が帰り支度を整え、西脇等を引き連れOG控え室を出る。
出口付近でダンプとブルが再び顔を合わせ、ブルが無言で頭を下げる。
「神取・北斗戦、面白かったね。神取ってのは・・・相当なもんだね」
   「アウさん・・・私は・・」
「ブル中野と神取忍の対決が見たくなったよ。ね?夢のカードだよ」
松本の思いがけない言葉に、ブルが少し驚いたような顔をした。
「アタシはさ、ただ竹刀を振り回してただけだけど・・アンタは違う。
 プロレスの技術がある。プロレスの心がある。
 まだリングに上がり続けて良いんだよ。好きな様に暴れたら良い」
松本は微笑みながら軽くブルの肩を叩き、そして手を振った。
ブルは深く一礼し、去って行く先輩の背中を見送った。

やがて日付の変わる頃、客席でそれに向けてのカウントダウンが始まる。
そして0時を過ぎると観客は開き直った様に試合を楽しみ始めた。
コンバットが豊田を場外フェンスの外に突き出す。
フェンスを乗り込え戻ろうとすると今度は工藤が突き落とす。
FMW軍が微妙なタイミングで全女軍のペースを乱して行く。
試合が進むに連れコンバットの動きが目に見えて落ち始める。
余裕を取り戻した全女軍は孤立する工藤を仕留めにかかる。
工藤も粘ったが最後はジャパニーズ・オーシャン・サイクロンに沈んだ。
終電を諦め最後まで大会を見届けた観客が満足げに4人に拍手を送った。
メインエベントの終了をモニターで確認すると風間は神取に目をやった。
  「神ちゃん、メイン終わったよ。神ちゃん!」
眠っているのか神取は長椅子に横たわり顔にタオルを掛けたまま答えはしなかった。
困った表情で溜息をつく風間にイーグルが「しょうがないよ」と呟き笑いかける。
閉ざされた控え室のドアが不意にノックされた。
半田がドアを開けると、そこにはブル中野が硬い表情で立っていた。

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