和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

「刀語 第八話 微刀・釵」読了。

2008-08-12 10:51:07 | 読書感想文。
いや、それはもう刀じゃないだろう。
なんて突っ込みはもはやむなしいだけですね。何を今更、という。

そんなわけで「微刀ビトウカンザシ」、特徴は「人間らしさ」ですってよ。
もう、意味が分からない。
苦肉の策とか、そんなん軽く超越してます。
ここまでくると面白いっていう。
既に「炎刀エントウジュウ」があーゆーものだと知れてますからね。
どんどん、はっちゃけていってほしいところです。

しかし、今回はその辺よりむしろ否定姫に注目すべきでしょう。
前からある程度予想していましたが、まぁ、ああいうキャラなんですね。
最終決着が楽しみで仕方ありません。
やっぱ、そこは十二話目まで引っ張るんでしょうかね。

――と思わせておいて、次の話で否定姫が死んじゃうとかフツーに
有り得そうで怖いんですけど。
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あとがき。

2008-08-12 00:46:11 | いつもの日記。
「逃避行」、いかがでしたでしょうか。
実に久しぶりのファンタジーでした。
いや、ロアとかファンタジーだろ、っていわれたらそれまでですが。

今回も、前作「帰省」と同じテーマです。
つまり、「長いストーリーの一部分を切り出したような短い話」。
今回のようなタイプの方が、このテーマにはしっくりくるのかな。
それと、もうひとつ――

これはやっぱり、コメントで。
コメント (5)
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「逃避行」

2008-08-12 00:37:44 | 小説。
敵国アーカディアの兵は、既に城内へと侵入していた。
それは、誤解を恐れずに言うならば――実に鮮やかな侵攻だった。
おそらく、城内の兵も時間稼ぎにしかならないであろう。
・・・せめて、姫。
姫だけでも、この場から逃がさなくては。
「姫、ご無事ですかッ」
乱暴に寝室のドアを開ける。
そこには、純白のドレスとティアラで着飾った、我が主が立っていた。

「遅くてよ――フェルマ」

「はっ、申し訳ございません」
膝を付き、頭を垂れる。
「言い訳、しないのね?」
「そのようなもの、あろうはずもございません」
保身のための言い訳などはどうでも良い。
一刻も早く、姫を安全な地へ。それだけが、我が使命。
「結構。それで――」
どこへ逃げるつもりかしら?
窓の外へ視線を向けて、姫は言った。
立ち上がり、手早くそれに応える。
「王族用の隠し通路がございます。王、王妃も既にそちらへ向かわれました」
「・・・無駄ね」
姫は、冷たくそう言い放った。
「無駄、とは・・・どのような意味でしょうか?」
城には、緊急脱出用の地下通路がある。
当然それは極秘であり、我々近衛兵の更に一部の人間しか知り得ない。
現状で、唯一安全な逃走経路であるはずだ。それが何故――
「無駄なものは、無駄なの。きっと通路の先で敵兵が待ち構えているわ」
「何故、そのようなことが――」
言葉が終わらぬうちに、姫はこちらへとしな垂れかかる。
思わず、それを両手で抱きとめた。
「そんなことより、フェルマ。この状況でも、私を守ってくれるかしら?」
「――無論、お守り致します。ですから、まずはこの場から離れなくては」
しかし、姫はそんな言葉を嘲笑うかのように、言った。
「だから、逃げ場なんてどこにもないのよ。だって――」

「私、敵国あいつらにあらゆる情報を流したもの」

あらゆる情報。
何を。
姫は、何を口走っている――?

「こんな国、なくなってしまえば良いんだわ。
 父上も母上も、みんな、皆、ミンナ。
 いなくなってしまえば良い。死に絶えれば良い。
 私とフェルマの仲を認めない奴ら、、、、、、、、、、、、、、、なんて、消えてしまえば良いのよ。
 いらない。
 要らない要らない要らない要らない要らない要らない要らない要らない」

そして姫は、幼少の頃のような無邪気さで、微笑った。
「父上も母上も酷いのよ?揃ってフェルマとのこと反対するんだから」
我が腕の中で、無骨な鎧に頬擦りをしながら。
姫は、全く意味不明なことを、呟き続ける。
「私を守ると言ったわよね。誰よりも大切だって言ったわよね。
 ――私を愛していると、、、、、、、、言ったわよね、、、、、、。愛しい、恋人」
頭が、眩む。
姫は一体、何の話をしているのだろう?全く、理解できない。
その――姫が言う「愛しい恋人」とは、一体誰を指している、、、、、、、、、
「さあ、邪魔者は全部消した。消えた。もう、誰にも遠慮する必要はないのよ?」
「姫・・・姫。お、お逃げください――」
「もう、分からない人ね。逃げ場所なんかないんだってば」
「し、しかし」
「折角、私がこうして二人っきりの時間を作ったのよ?もっと嬉しそうになさい」
嗚呼、そんな、馬鹿なことが。
ただ、それだけのために――
「それだけのために、敵国へ情報を流したのですか」
「だから、言ってるじゃない。それだけじゃないわよ」
父上と母上には、死んでもらわなきゃ。
だって、私とフェルマの関係を認めないんですもの。
障害は、排除しなきゃ駄目でしょう?
だから私、頑張ったの。
敵国が攻め込みやすいように、一生懸命誘導したわ。
この部屋から情報を流して、操作して。
「ねえ――」
びっくりしたでしょう?
昔みたいに、褒めてくれる?
頭撫で撫でしてくれる?
良くできました、って言ってくれる?
くふふ、うふふふふふ、あははははははははははは。

腕の中、姫は笑い続ける。
無邪気に、楽しげに・・・不気味に。
それは僅かな時間のようであり――永遠のようでもあった。

そして不意に、その笑い声が止まる。
「そろそろ――時間ね」
「時間・・・?」
「ええ。じき、ここにも敵兵が現れるでしょう。だから」

姫は、何故かティアラを外す。
そしてその手が――背中へと回り込む。
同時に、冷たい痛みが走った。
ティアラに仕込んだナイフで――鎧の隙間を突き刺したのだろう。
じわりと、傷口を中心に痺れが走る。
毒、か。
それはあっという間に全身を駆け巡り、もう声を上げることすらできない。
姫は――ほう、と幸せそうな息を吐いて、言った。

「一緒に逃げましょう。約束通り、向こう、、、でも私を守ってね――愛しい恋人」
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