和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

あとがき。

2010-09-30 20:52:26 | いつもの日記。
最近あとがきサボってました。
まぁ、特に書きたいこともなかったし?
今回が特別あるか、と言われたら、まぁ、ないんだけどさ。
何となく気が向いたので、あとがいてみます。

そんなわけで、毎度おなじみ脊髄反射小説シリーズ。
今日は二つです。
一個ずついってみよー。

◆嘘つき
そもそも、なんでこんなタイトルなのかって話ですよ。
最初に全体の雰囲気と「嘘つき」って言葉だけ決めて書き始めたからなんですけど。
結果的に、タイトルと内容がほとんど一致しないという有様。
そんなもんさ。
内容的には、10年前の僕と今の僕の対話みたいな。
10年経てば、そりゃまあ変わるわなぁ。
当時の面影すらないぜ!
・・・とまでは言わないけどね。

◆夢
天使を名乗る男は、「そんな装備で大丈夫か?」の人のイメージです。
わからない人はググッてみよう。
何か最近はやってるよねー。
元ネタの動画みたら、いい声過ぎてハマってしまいました。
内容は、オチてないところが何とも和泉チックかな、と。
ノープランだから仕方ないじゃない!
・・・そんなあとがきで大丈夫か?
大丈夫だ、問題ない。

以上、なんだか久々なあとがきでした。
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【SS】夢

2010-09-30 20:51:39 | 小説。
雨が、降っているらしい。
断定できないのは、夜があまりに暗く、僕の目には何も見えないからだ。
否、ひとつだけ見えるものがある――。

安物のビニール傘をさした、男。
全身黒ずくめで、歳の頃は僕と同じくらい――おそらく20代後半から30代前半。

雨は見えないが、彼は傘をさしている。
そして、その足元にはゆらゆらと波紋が広がっている。
だから多分、雨が降っているのだろう。

「これは夢だ」

傘をさした男は僕に向かってそう言った。

「夢だから目覚めれば大半のことは忘れるだろう。夢とはそういうものだ」

「・・・あんたは、何者だ?」

夢の中――らしい。
僕の口は重く、それだけの言葉を発するのに相当な力と覚悟を要した。
そんな僕の疑問に、彼はシニカルな笑みを浮かべて返す。

「ああ、これは失礼。挨拶が遅れたね。俺は、そうだな。天使、さ」
「天使・・・だと・・・?」
「そう。まぁ、それもどうでも良いことだ。君はきっと忘れてしまうからね」

天使。
頭上に輝く光の輪もなければ、背中に生える白い翼もないが。
何という――いい加減な夢だろう。
僕は笑おうとした。
が、頬の筋肉は動こうとせず、笑えなかった。

「とにかく、だ。今は時間がない。君はこの夢を忘れるだろうがひとつだけ覚えておいて欲しい」

笑っているような嘆いているような、微妙で複雑な表情。
白い歯は少しだけ嫌味に見えた。

「――良いか、目が覚めたら、とにかく逃げろ」
「・・・に、げる・・・?」

ああ、駄目だ。
身体に力が入らない。もはや声を発することも困難だ。

「そう、その場から逃げるんだ。何を忘れても構わない。が、逃げることだけは忘れるな」

逃げる。
その場から、逃げる。
目が覚めたら、逃げる。

別に、男が天使だなんて話を信じるわけではない。
しかし、軽薄そうな見た目に反して必死な言葉は僕にしっかり伝わっていた。

世界が、白く霞んでいく。
夜が終わる。
夢が終わる。

「逃げろ。逃げろ。逃げろ――」

男は消え去る寸前まで、呪文のようにそう繰り返していた。
さて――。
僕は、男が言うことを覚えていられるだろうか。
目覚めは、近い。
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【SS】嘘つき

2010-09-30 20:29:34 | 小説。
「じゃあ、アンタは今幸せだって言うのかい」
「ああ、そうだなぁ。ま、そこそこ満足してるさ」
「そんな、何もない日々に満足してるって、そう言うのかい」
「くどいな、だからさっきから言っているだろう」

実際に、僕は今幸せなのだ。
それが――目の前の彼には納得行かないらしい。

「就職して、結婚して――落ち着いて、守りに入ってるだけじゃないのか?」
「それもないとは言わないさ」

就職して5年、結婚して2年経つ。
そりゃあ、落ち着きもするし守りにも入るだろう。
だからと言って――

「それが、イコール幸せじゃない、というのは暴論だろ?」
「どうだかね。僕にはそれはただの逃避に見えるけれど」
「独り身の君には分からないこともあるさ」
「分かりたくもない」

吐き捨てるように、苦々しく青年は言った。
よほど癇に障ることを、僕は言っているらしい。
――分からないでも、ないけれどね。

「歌も歌えなくなって。言葉も満足に紡げなくなって。それで幸せなんて有り得ない」
「認めたくない、の間違いじゃないのか?」
「違う。有り得ないんだ! そんなことは、有り得ない!」

怒りを隠そうともしない。
それは「認めたくない」という事実を認めていることにならないか。
つまりはそれが若いっていうことなんだろう。
羨ましいような、微笑ましいような、もどかしいような。

「じゃあ逆に問おう。君は、どう在れば幸せだと考える?」
「それは勿論、自己を貫き通すこと。自分の在り方を間違わないことさ」
「ちょっと抽象的だな。具体的にはどういうことだ?」
「歌を歌い続けること。言葉を紡ぎ続けること」
「なるほど、自分の存在を世間に認めてもらいたいんだな」
「そうじゃない。そんな、世間に迎合するような、温いことなんか考えていない!」
「結果は同じだよ」
「ふざけるな! 僕を馬鹿にするのもいい加減にしろ!」

怒るなよ、それこそ馬鹿に見えるぞ。
と、笑いを堪えながら忠告する。

「とにかく、僕は独りで生きていく。誰にも頼らず、自分の力だけで!」
「また無茶なことを」
「無茶なものか。いや・・・それより、今はアンタの話だ」

残念、冷静さを取り戻されてしまった。
矛先は再度僕へと向かう。

「幸せだと、アンタは言ったな」
「ああ、言ったが」
「だが同時に、特別なことは何もないとも言った」
「その通りだ」
「それは矛盾するだろう。幸せというのは、実に特別なことじゃないか」

例えば、お金持ちであること。
例えば、名声を欲しいままにすること。
彼が言う幸せとは、つまりそういうことなのだろう。

「矛盾しないんだよな、それが」
「そんな馬鹿な」
「――まぁ、君にもそのうち分かるさ」
「話にならないな!」

突っ撥ねるように言い放って。
彼はくるりと後ろを向いた。

「今日はこれで失礼する。だが、僕は納得していないからな」
「ああ――まぁ、またいつでも現れるがいいよ」
「僕は間違ってない。間違ってなど、いないんだ」
「ああ、そうだな。多分、僕も君も、間違ってないんだろうさ」
「・・・ふん」

まるで理解できないとでも言うように鼻で笑う。
そして彼は、そのまま去っていった。

――理解できるさ。
10年後くらいに、ね。

そうして僕は、再び水で顔を洗う。
洗面台の鏡には、現在の年相応な顔をした僕が写っていた。
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