和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

【SS】魂~2時限目~

2011-11-20 22:05:26 | いつもの日記。
さて、まずはこうして2度目の講義を行えることに感謝したい。
これは実に幸運なことだ。
私にとっても、君にとってもね。

前回の講義は、魂という存在が実在すること――だったね。
では今回はもう少し踏み込んだ話をしようじゃないか。

魂はどこにあるのか。

何に宿るのか、と言い換えてもいいね。
無論先日の講義で人に宿ることは分かるだろう。
それからこの大気中にも微量ながら存在することも話したね。
魂は水とよく似ている。
個体・液体・気体といった形態をとり、常温では液体であることが基本だ。
ああ、だから恐らく海中にも大量の魂が眠っていることだろう。

では、それ以外には?
例えば犬や猫などの動物にも宿るのか?
これは実に面白いテーマだと思わないか。
あるかないか。
ただそれだけの話なのに、無性に胸が高鳴る。

無論、これはまだ研究段階の話だ。それこそ、話半分に聞いて欲しい。
現時点の私の見解では、前述の犬猫にも宿るものと考えている。
より一般的に言うなら、意思を持ち思考するものに宿る、というところか。
知能の高い哺乳類には、だから魂がある可能性が非常に高い。
イルカなどは仲間同士で会話して猟の作戦を練ったりするそうじゃないか。
あれに魂がないとは逆に考え難いね。
さて、哺乳類からずずっとピラミッドを下り、鳥類、両棲類、爬虫類あたりまではあるだろう。
しかし昆虫になってくると怪しい。
脳がないというのはやはり大きなポイントだな。
そもそも思考するだけのアーキテクチャが圧倒的に不足している。

では無機物はどうか?
これも実に面白いね。
現時点でもっとも複雑な無機物、コンピュータ等には魂があるとみていい。
数百数千という人間が、何年もの時間をかけてロジックを積み重ねたのだ。
その複雑怪奇な存在に、魂が宿っても何ら不思議はないと思うね。
パソコンに対して、正常に起動してくれと祈るSEを何度も見たことがあるよ。
開発現場では往々にしておまじないの類が流行るというのも魂の存在を思わせるね。

そして微妙なところなのが絵画などの芸術品だ。
よく芸術品には魂が宿るというだろう。
しかし、当然ながらそれそのものが思考したりそれに似た動きを示すことはない。
故に、微妙なところということだ。
これを確認するすべがひとつだけある。
人と同じさ。殺してみて、魂が放出されるかを観測すればいい。
かのレオナルド・ダ・ヴィンチの傑作『モナリザ』、彼女に魂はあるのか?
あの微笑みを引き裂いて、確認してみたい衝動にかられるね。

現時点で有力と思われる説はこのようなところだ。
そう、つまりほとんど何も分かっていない、ということさ。
だからこうして、君のような有志に研究を手伝ってもらっているというわけだ。
研究が進み、応用されれば世界は驚異的な変貌を遂げるだろう。
まぁ、とはいえ私は応用部分にはあまり興味がなくてね。
可能性は無限だ、とだけ、無責任に言うに留めておこう。

短いが、ここまでで今回の講義は終わりとする。
次回――そうだね、次回があることを、祈ることにしようか。
ご清聴ありがとう。
コメント
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