いずみは自分のことを悪い奴だと思っています。
子供は嫌いだし散歩中に犬猫を見かけると蹴飛ばしたくなる。
偉そうな車には傷の一つもつけてやりたい。
何故か盗みはしたいと思わないが、とにかくいい奴ではないのです。
ただ、そういう自分の悪性に一生懸命蓋をして生きている。
それで、何とかまともを装っていられるのですね。
そういう人間を挑発し、無理やりに塞いだ蓋を取り去って中身を曝け出しては
この性根はいけないとか人格がおかしいとか狂っているとか文句をつけるのは、
それはもう立派な悪ではないかと思うのですがねえ。
こっちは人に迷惑をかけまいと必死に擬態しているのですよ。
そりゃあ、小説では酷いことを書きます。
中身が酷いのだから、書こうと思えば酷いことも書ける。
でも、まともでありたい、他人を傷つけてはならないと思っている。
いずみと、それを暴き出そうとする世間とでは、どっちが悪でしょうね?
最近のいずみは、そういうことを考えます。
実際に行動に起こさずとも、思うだけで悪であるとされる風潮は怖いなあと。