新古今和歌集の部屋

光る君へ 「めぐりあひて」考察

 

(48)物語の先に - 大河ドラマ「光る君へ」

(48)物語の先に - 大河ドラマ「光る君へ」

まひろ(吉高由里子)は倫子(黒木華)から道長(柄本佑)との関係を問いただされ、2人のこれまでを打ち明ける。全てを知った倫子は驚きと共に、ある願いをまひろに託す。...

大河ドラマ「光る君へ」 - NHK

はやうよりわらはともだちな

りし人にとしごろへて行きあひ

たるがほのかにて十月十日のほど

月にきほひてかへりにければ

めぐりあひてみしやそれともわかぬ

まに雲がくれにしよはの月かな

※紫式部集、新古今和歌集では、「月かげ」となっているが、ドラマでは百人一首の「月かな」となっていた。


光る君へ 「めぐりあひて」考察

ー大石静氏の着想は?ー

1 めぐりあひて

NHK大河ドラマ光る君へ「最終回 物語の先に」に、まひろが紫式部集を賢子に託すシーンがあった。

(53:03)

賢子 新しい物語?

まひろ いいえ。これは私の歌を集めたものなの。貴女の手元に置いてちょうだい。

賢子 めぐりあひて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よはの つきかな

賢子 幼友達を詠んだ歌なのですね。

まひろ ええ。。。

賢子 母上にも友達がいたなら、フフ、良かったは。

この歌の中に、「雲隠れ」と言う詞がある。これは、源氏物語の巻名のみ残されている光源氏の崩御を描いた「雲隠」でもあり、雲隠には貴人の死と言う意味がある。この詞の歌を紫式部集の冒頭にもってくるのは、不吉と忌まれるものと思われる。

この詞書の「はやうよりわらはともだちなりし人」とは、どんな人だろう?と大石氏は考えたのではないだろうか?これを、道長であるとすれば、まったく歌の解釈が違ってくる。

三郎と巡り会って、私の人生が変わったのに、今から思うとほんのひとときで、逢ったのかも分からない短かった。それなのに貴方は雲隠してしまった。月の光のような道長様。

と、道長と歩んできた人生を振り返る哀傷歌となると推察する。

これを、道長とで出来た娘である賢子に託し、「これが私と貴女の父である道長様と生きて来た人生なのよ」と言わんばかり。「まひろ ええ。。。」にも複雑な表情をしていた。

ドラマでは、何度も月のシーンが出てきた。しかも十日月が多く、この歌を意識しての挿入だと思う。

紫式部と藤原道長が幼友達だったと言う発想が、このドラマの着眼だと推察する。そしてタイトルの「光る君へ」とは、月影、道長を指すと考える。ただし、ドラマでは、「月かな」としており、「月影(月光)」としないと、「光る君へ」の「光る」とはならない。

2 菅原孝標女登場の意味

菅原孝標女は、更級日記の作者で、少女時代に源氏物語に触れ、文学少女として光君に傾倒した者である。ここに何故孝標女を登場させたのか?について考えて見た。

(22:27)

ちぐさ 物思いばかりして、月日が過ぎた事も知らず、この年も、我が生涯今日で尽きるのか?一日からの行事を格別なものとするよう親王、大臣への御引出物、様々な身分の者への禄などを、またとない程御用意された、とか。(※源氏物語 幻)

ナレーション この娘は、菅原孝標の娘で、後に更級日記の作者となる。

ちぐさ こんな所で終ってしまうなんて、可笑しくありません?

まひろ そうかしら。

ちぐさ 光る君の最後を書かなかったのは、何故だと思いになります?

まひろ さあ?

さぐさ この作者の狙いは、男の欲望を描く事ですわよ、きっと。それ故、男達の心も引きつけたのです。

まひろ フッ、なるほど。

ちぐさ 男達に好評でなければ、これほど世に広まりませんもの。

ちぐさ それと、読み手の女達が、作中の誰かに、己を重ね合わせられるよう、様々な女を描き出したのでしょう。その為に、女たらしの君が、次から、次へと、女の間を渡り歩く事にしたです。

ちぐさ つまり、光る君とは、女を照らし出す光だったのです。

まひろ ふふ。

続いて現れた清少納言との会話で、孝標女との出会いは、市で偶然落とした源氏物語の本を拾ったからと、将に取って付けた樣な理由となっていて、不自然ではある。

源氏物語は、架空の男女それぞれを描き出す事によって、読み手に重ね合わせる事を目的としているのでは?との大石氏の推察ではないだろうか?

また、清少納言との会話で、一条帝の心を枕草子と源氏物語で掴み、時代を動かしたと自慢し合う所に、この物語らの意味を見い出したと思う。

つまり、孝標女とは、かつて文学少女だった大石氏そのものであり、彼女の源氏物語の感想を、孝標女に語らせたのではないだろうか。

3 源氏物語 雲隠の解釈
まひろが、北の方倫子から法成寺に呼ばれ、道長の為に、余命を伸ばしてくれと依頼され、道長に会う事になる。そこで、源氏物語の雲隠のタイトルのみの秘密を打ち明ける。

(34:43)

道長 先に、、、行くぞ。

まひろ 光る君が、死ぬ姿を書かなかったのは、「幻」が、何時までも続いて欲しいと願った故です。

まひろ 私の知らない所で道長様が、お亡くなりなってしまったら、私は「幻」を追い続けて、狂っていたやも知れません。

道長 清明に寿命を十年やった。やらねば良かった。幾度、も悔やんだ。いや、そうではない。俺の寿命は、ここまでなのだ。

※清明に寿命を十年やった。 第30回「つながる言の葉」で、安倍晴明の雨乞祈祷に、道長の寿命を10年与えた。

ここで、紫式部の言葉として、雲隠の題名のみの理由を告白される。もちろん大石氏の推察である。

布線として、隆家がまひろを訪問した時、まひろは白居易の長恨歌を読み返していた。もちろん、その前に、ちぐさ(菅原孝標女)が訪問し、読み上げ、解釈したのは、源氏物語の幻帖である。この源氏物語の幻とは、桐壺からの本文(参考とした漢詩)は長恨歌である。

4 その後の後書
その後の展開から、いくつか思った事がある。

道長 もう、物語は、書かんのか?

まひろ  書いておりません。

道長 は~。新しい物語があれば、それを楽しみに生きられるやも知れんな。

まひろ では、今日から考えます故、道長様は生きて、私の物語を世に広めて下さいませ。

道長 フッフッフッ。お前は、何時も俺に厳しいな。

この後、三郎と鳥を逃がしてしまった少女の物語を、まひろは語る。源氏物語を作った紫式部しては、少し稚拙な物語だなと思った。そして、毎日物語を道長に聞かせて、延命を図るまひろを見て、同じく中世物語の崇高の千夜一夜物語を思い出した。

千夜一夜は、女性に不審を思ったシャフリヤール王は、街の生娘を宮殿に呼び一夜を過ごしては、翌朝にはその首をはねた。大臣の娘シェヘラザードが、妻の名乗りを上げ、一夜一話の物語を話し、「続きは、また明日」と次の日まで、シェヘラザードの命を繋いだ。そして千日目、遂にシェヘラザードはシャフリヤール王の悪習を止めさせる。この話を、逆に相手の命を繋ぐために、まひろが物語を、道長に聞かせるとしたのでは無いだろうか?

また、道長臨終後、まひろと道長とが結ばれていた手を、倫子がそっと布団の中に入れる。言葉では、道長とまひろの恋情を許しても、本心では許していない。そう言う風に思えた。

(56:04)

乙丸  双寿丸!

双寿丸 こんな所で何をしているんだ?

まひろ 何にも縛られずに生きたいと思って。

双寿丸 東国で戦が始まった。これから朝廷の討伐軍に加わるのだ。

まひろ 気を付けてね。

双寿丸 そっちこそな。はっ!

まひろ 道長様。。。

まひろ 嵐が来るわ。

唐突に終るのは、源氏物語でも同じ。この「嵐が来るわ」を見ていて、平忠常の乱(長元元年(1028年)6月)の勃発から、これから武士の時代が来ると予見するものとされる。しかし、この場面を見て、私はターミネーターの最後のシーンを思い出した。ターミネーターとの戦いに勝ち、メキシコに向かうサラ・コナーが、これから始まるスカイネットとの戦いを思い、「嵐が来る」と伝えられたサラの「わかってるわ」と答えて終る。唐突な終り方だが、道長との物語の後には、武士がいないと、世の中が治められない時代となる予兆と捉えている。源氏物語の終り方より、意味深である。

今まで、ドラマの小道具として使ってきた和歌、漢詩、催馬楽、雅楽などを紹介して、少しでもドラマに違う興味を持って欲しいと思って来たが、最終回と言う事で、自分の考察を感想を述べる。最終回なので、愚考にご容赦を。

コメント一覧

jikan314
@cforever1 クリン様💓😍💓
クリン様の予想も面白いですね☺️読経の中、最後を迎える時代に、祈祷を拒否し、静かに過ごすと言うストーリーも面白く、まひろが臨終に立ち会う、まひろと道長が結んでいた手をそっと布団の中に返す倫子、言葉では許しても、心では許していない😱
道長の最後を、物語で引き留めようとするまひろのストーリーは、千夜一夜を思いました。シャフリヤール王に明日処刑されるかも知れない大臣の娘シェヘラザードの毎夜の物語、自分の命と王の間違いを物語で正すと言う点で。
あと数件光る君へネタをアップする予定ですので、又見てね😃
jikan314
@akatuki1227330 一年生様
コメント有り難うございます😃
実は、最終回を迎え、やっと平安オタク?から解放される😓と思っております(笑)
特に、白氏文集や日本漢詩集、催馬楽など、ドラマの小道具に使われた物が、図書館で探すのも大変でした。聞いた見ただけでは、何の漢詩かは不明だし、謳いなどはひらがなにするのも難儀で、ネット検索すると、中国語ばかり?でした。😰
あと最終回ネタは2つ、総集編までには数件アップする予定ですので、又御來室いただけば幸いです😉
jikan314
@1kamakura 江戸の秋様
コメント有り難うございます😃
途中挫折しかけましたが、江戸の秋様を始め、拙blogをお読みになり、励ましのコメントなど頂いたので、なんとか最終回まで漕ぎ着けました。
湖月抄は、週4ページ読むのがやっとで、アップ遅れ気味となってしまったので、光る君へネタを止めようかと思った次第です。あくまで源氏物語を勉強するのが、本筋だと?
最終回ネタは、あと二つ、総集編までに数件有り、又御來室いただけば幸いです。
cforever1
ぜったいに道長より先にまひろが死ぬと思っていました!
クリンの予測では「まひろあの世へ→道長ショックで法成寺を建立。まひろと極楽浄土で再開したくて仏教にのめり込みすぎる」っていう展開だったんです💡
ちょっとがっかり・・🐻⤵⤵(でも道長の最期の時をお話によってつなぎとめるのは良かったです💛)クリンより🐻
akatuki1227330
こんにちは一年生です。

光る君へ終わっちゃいましたね。

昨日は妻もみてたようです?先週の録画も含めて?

光る君ロスにならないかな?
1kamakura
江戸の秋

光る君へ
ついに終わってしまいましたね。
さみしいです。
最後湖月抄がでてきて、
あ、jikan314さんのブログによく出てくる本だ!
と思いました。
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