常夏
されど、わたり給ひて、御かたちをみ給ひ、いまは御ことをしへたてまつりたまふにさへことつけて、ちかやかになれより給ふ。ひめ君も、はじめこそむくつけくうたてとも思ひ給ひしか、かくてもなだらかに、うしろめたき御心はあらざりけりとやう/\めなれて、いとしもうとみきこえ給はず、さるべき御いらへも、なれ/\しからぬほどにきこえかはしなどして、みるまゝにいとあいぎやうづき、かほりまさり給へれば、なをさてもえすぐしやるまじくおぼしかへす。さはまた、さてこゝながらかしづきすへて、さるべきおり/\に、はかなくうちしのび、ものをもきこえてなぐさみなむや、かくまだよなれぬほどのわづらはしさこそ心ぐるしくはありけれ、をのづからせきもりつよくとも、ものゝ心しりそめ、いとおしきおもひなくて、わが心も思ひいりなば、しげくともさはらじかし、とおぼしよる、いとけしからぬことなりや。いよ/\心やすからず、思ひわたらむ、くるしからむ。なのめにおもひすぐさむことの、とさまかくさまにもかたきぞ、よづかずむつかしき御かたらいなりける。
東屋
つくばやまをわけみまほしき御心はありながら、は山のしげりまであながちに思いらむも、いと人ぎゝかろ/ヾしうかたはらいたかるべきほどなれば、おぼしはゞかりて、御せうそこをだにえつたへさせ給はず、かのあま君のもとよりぞ、はゝきたのかたに、の給しさまなどたび/\ほのめかしをこせけれど、まめやかに御心とまるべき事とも思はねば、たゞさまでもだづ ねしり給らん事とばかりおかしうおもひて、人の御ほどのたゞ今世にありがたげなるをも、かずならましかばなどぞよろづに思ける。
第十一 戀歌一
題しらず 源重之
筑波山端山繁山しげけれど思ひ入るにはさはらざりけり
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