
金闕西廂叩玉扃轉教小玉報雙成
聞道漢家天子使九華帳裏夢中驚
攬衣推枕起徘徊珠箔銀屏邐迤開
雲鬢半垂新睡覚花冠不整下堂来
風吹仙袂飄颻擧猶似霓裳羽衣舞
玉容寂寞涙欄干梨花一枝春帯雨
含情凝睇謝君王一別音容兩渺茫
昭陽殿裏恩愛絶蓬萊宮中日月長
迴頭下望人寰處不見長安見塵霧
唯将舊物表深情鈿合金釵寄将去
釵留一股合一扇釵擘黄金合分鈿
但令心似金鈿堅天上人間會相見
臨別殷勤重寄詞詞中有誓兩心知
七月七日長生殿夜半無人私語時
在天願作比翼鳥在地願為連理枝
天長地久有時盡此恨綿綿無盡期
婦人苦
蟬鬢加意梳蛾眉用心掃幾度曉粧
(紅葉が書物に落ちる)
乙丸 お、お方様!
まひろ 帥様!
隆家 もう帥ではない。
隆家 中々に風情のある住まいだな。
隆家 太閤様の御加減が悪いそうだ。
金闕の西廂に玉扃を叩き
転じて小玉をして双成に報ぜ教む
聞く道く漢家天子の使と
九華帳裏夢魂驚く
衣を攬り枕を推し起ちて徘徊し
珠箔銀屏邐迤として開く
雲鬢半偏して新に睡覚め
花冠整はず堂を下りて来たる
風は仙袂を吹きて飄颻として挙り
猶霓裳羽衣の舞に似たり
玉容寂寞として涙闌干
梨花一枝春は雨を帯ぶ
情を含み睇を凝らし君王に謝す
一別音容両ながら渺茫
昭陽殿裏恩愛絶え
蓬莱宮中日月長し
頭を廻らし下のかた人寰を望む処
長安を見ずして塵霧を見る
唯旧物を将ちて深情を表すとも
鈿合金釵寄せ将ち去らしむ
釵は一股を留め合は一扇
釵は黄金を擘き合は鈿を分つ
但心をして金鈿の堅きに似しむれば
天上人間会ず相見む
別に臨みて殷勤に重て詞を寄す
詞中に誓有り両心のみ知る
七月七日長生殿
夜半人無く私語の時
天に在りては願はくは比翼の鳥と作り
地に在りては願はくは連理の枝と為らむと
天長く地に久しきも時有りて尽く
此の恨は綿綿として絶ゆる期無からむ