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新古今和歌集の部屋

美濃の家づと 四の巻 恋歌三5

 

 

             定家朝臣

歸るさの物とや人のながむらんまつよながらのあり明の月

めでたし。 我はまつ夜ながらに、むなしく明ゆく

此有明の月を、よその人は、思ふ人に逢て、かへるさのも

のとや見るらむと、うらやみたる也。 或抄に、有明の月の

かなしさは、別れてかへるさの物とばかりや、人の思ふらん、

といへるは、二三の句の詞にかなはず。

摂政家百首哥合に契戀   慈圓大僧正


たゞたのめたとへば人のいつはりをかさねてこそは又もうらみめ

たゞたのめは、とやかくと疑はず、たゞひたすらに我ガいふこと

をたのめと、契る人にいふ也。 たとへばといふは、いまだ其

事のなき時に、もししか/"\の事あらむに、といふ時につ

かふ言也。此つかひざま、此ころの物には、たゞの文にもをり/\

見えたり。此哥にては、いまだ偽を重ねはせざるに、もし此

後いつはりのかさなる事あらば、其時にこそいといふ意也。

  人は、こゝにては、我をいふ、かなたのうへよりいへば、我は

人なり。 結句は、又とは、上のかさねてといふにかけ合たり。

然れば、此哥は、人の恨むるにつきていへる意にて、今までの


事は、ともかくもあれ、今より後は、たゞ我を頼み給へ、此

うへ我ガ僞リの重なりたらむにこそ、又も恨み給はめといへる

なり。 或抄に、たとへばを、たとへば人に偽有とも、まづ

たゞたのめと注したるは、かなはず。

題知らず         小侍従

つらきをもうらみぬ我にならふなようき身をしらぬ人も社あれ

我こそ、わがうき身のとがに思ひなして、君がつらきをも恨み

ね、その恨みざまにならひて、よきことゝ思ひて、人につらく

あたり給ふなよ。人は我ごとくには、おもひなだめぬこともあ

らむにとなり。 うき身をしらぬとは、我はうき身なれ


ばといふことをわきまへぬをいふ。

※歸るさの 或抄 不明
 
※たゞたのめ 或抄 不明
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