2012年シーズンのJリーグも終わり、あとはクラブW杯に出場している広島の活躍と、天皇杯に興味が残るだけとなった。
今シーズンの中で、このブログで取り上げたチームが二つある。一つは4月7日に取り上げたガンバ、もう一つは6月3日に取り上げた鳥栖だ。
ガンバの降格は、Jリーグのスターティング10(テン)の中で、降格経験のないチームの一つだったのでニュースインパクトも大きかった。
しかし、4月7日の段階で、私は今シーズンのガンバの行く末に予感を覚え、思わずブログで「何の根拠があって寺田がPKを蹴るのか」と厳しく指摘した。
その日、広島との試合、以下ブログにこう書いた。
「前半2点リードされたガンバ、後半早々1点を返し、さらにPKのチャンス、得たのは確かに寺田だったが、何の根拠があって蹴るのが寺田か?
これを決めるか決めないか、シーズン全体の流れにもかかわる場面だ。それは勝負の世界に身をおいている人間なら本能的にわかる。
この場合、結果に納得を得られるのは遠藤保仁が蹴ることだ。少なくともキッカーが遠藤であるべきなのは誰の目にも明らかだ。それがピッチ上で判断されないなら、あとは指揮官が指示すべきことだ。」
そして、最後にこう締めくくった。「それをやれなかったピッチのメンバー、指揮官。今シーズンのガンバは当分浮上できない。」
あの時のPK失敗で失った試合の流れ、その試合は結局、後半40分台にさらに2点を失い大敗。そしてシーズンを終え降格という結果を招いた。最善の選択をしないと悔いを残すのだ。
松波監督でなくとも、もし同じ対応であれば、勝負の世界に身をおいている者としては甘い。私が「まずいっ、寺田でなく遠藤に蹴らせろっ」と感じたのは、あとあと禍根を残す可能性があるぞ、という本能からきたものだ。
もう1チーム、鳥栖は5位でフィニッシュした。ACL出場権のかかった最終節を落としチームとしては大魚を逃したと思っているかも知れないが、ACL出場は戦力的な分厚さがないと戦えないし、うかつにシーズンに突入するとガンバの二の舞になる。むしろクラブ全体として戦略をキチンとしてからACLを狙って欲しい。
鳥栖については、6月3日に「鳥栖、ユン・ジョンファン監督にみる『監督力』」というブログを書いた。つまり、あぁ、この監督に率いられているうちは、このチームはそこそこやるな、という感覚だ。
まず、豊田陽平選手をはじめとした主力選手の持つ潜在能力を引き出す力量が、この監督は高いと感じたのが一つ。
そして、前線からのプレッシングを可能にする体力維持のトレーニングが、夏場に再度可能だという日程的な運、この運を味方に付けられる監督だとも感じたのだ。
そしてシーズン終了、5位というフィニッシュは初昇格のチームとして史上最高順位とのこと。エースの豊田陽平選手は今シーズンのベストイレブンとなった。彼はそれぐらいの力量のある選手だったわけで、それをユン・ジョンファン監督は的確に引き出したと言える。豊田選手にとって、ユン監督は、今後の選手生活を含めても、おそらく最高の監督との出会いとなったことだろう。
研究され、戦力に変化も生ずる来シーズンの鳥栖の戦いぶりに注目したい。6月3日のブログで私はこう締めくくっている。
「名将への道のりには幸運も必要であり、いろいろな意味で巡り合せの良さも条件の一つかも知れない。松本育夫監督という伯楽との出会いから始まったユン・ジョンファン監督の名将への道、当ブログは、これから20年ぐらいのスパンで彼を追ってみたい。
これも『サッカーを愛する者』にプレゼントされた『夢』といえるだろう。」
それにしても、「スターティング10」という栄誉あるチームでありながらチーム初の降格という屈辱を味わったガンバ、片や、チーム消滅の危機にさらされたこともある金欠チームながら初昇格で史上最高順位でフィニッシュした鳥栖。
私は、折に触れ、かつてJリーグ初代王者に輝き2連覇したもののJ2に降格して低迷を続けるヴェルディと、そのヴェルディに、理不尽なジャッジもあって敗れたと信じて疑わず、その後、圧倒的な三大タイトル奪取数を誇ってJリーグに君臨するチームを作り続けたアントラーズとの彼我の差を思うのですが、ガンバと鳥栖の未来にも似たような行く末が待っているのではないかと考えてしまいます。遠藤保仁、今野泰幸といった日本代表クラスが、そうならないよう踏ん張ることを願っています。