長嶋さん、松井さんが国民栄誉賞同時受賞とのこと。
長嶋さんは、まだだったの?と思えるほど当然のことだと思うし、松井選手の場合、ややギモンとの声もあるやに聞くが、そもそも受賞基準が「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があった方」という、恣意的なものだし、先頃の引退が大きな話題になったことや、長嶋さんの子弟関係のことを思えば、なかなか味な選出ともいえます。
国民栄誉賞、サッカー界では、なでしこジャパンが男子を出し抜いて選出されたことが記憶に新しいところです。サッカーが国民を熱狂させた歴史は、1993年以降ですから、個人で国民栄誉賞レベルの選手がまだ現れないのは、やむを得ないかも知れません。
プロ野球界では、王選手、衣笠選手がすでに受賞しているほか、二人が受賞を打診されたにもかかわらず辞退しているというのですから、サッカー界とは比較にならないほど国民的な素地がある分野といえます。
その辞退者の中に、今回、書こうと思った一人がいます。辞退者の一人はイチロー選手ですが、彼ではありません。彼の辞退理由は「まだ現役で発展途上の選手なので、もし賞をいただけるのなら現役を引退した時にいただきたい」というものです。イチロー選手らしい聡明な考えです。
もう一人は「世界の盗塁王」、福本豊選手です。当時の世界記録となる通算盗塁記録を達成した時、中曽根内閣から受賞を打診されたそうですが、その理由というのが、いわばイチロー選手と対極にあるともいえる、庶民的・生身の人間的理由で「受賞したら、簡単に呑み屋にも行けへんようになるし、へたな失敗もできない窮屈な生活をしなければならない」と伝えられています。
そして、このコメントはいわば公式発言向けに脚色されたもので、実際のコメントは「そんなもんもろたら立ちションもできんようになる」だったようです。福本さんは、現在、関西地区の野球中継の解説者をされていらっしゃるそうで、その解説も関西のお笑い芸人顔負けの、ボケ、ツッコミのオンパレード、抱腹絶倒もののコメント数知れずという人気解説だそうです。
これは羨ましいことです。世界を極めた達人アスリートの誰もが、紳士然とした人ばかりでなくとも、何の不思議もありませんし、紳士然としていなくとも国民栄誉賞に値いする、というところがホッとさせられます。
サッカー界には、まだ世界を極めたり、前人未到の記録で国民を熱狂させたりする選手は現われていませんが、これから10年、20年の中で、国民栄誉賞に値する選手が何人か出てきた時、そのうちの一人ぐらいは、福本選手のようなキャラクター、何も辞退しなくてもいいですから、そういう人が含まれるといいなぁ、と思ったものです。
ちなみに、福本選手は、国民栄誉賞は辞退されたわけですが、大阪府知事からの賞は受けられたそうで、人は「日本の英雄」より「大阪の人気者」であることを選んだと評しています。
福本さんの解説の楽しさに思いをはせれば、やはり「サッカー界の福本豊」の出現も関西出身に期待するのが自然かも知れません。
ここからの書き込みは、4月9日に追加したものです。
なぜ追加で書きたかったかと言いますと、いま、サッカー界に福本豊さんにもっとも近い人が一人いたと思ったからです。
ずばり、その人はドラゴン久保こと、久保竜彦さんです。なぜ彼に気づいたかといいますと、スカパーのJリーグ放送で、彼の解説を耳にしたからです。久保選手現役時代の超人的な能力はサッカー選手なら誰しも認めるところで、決して福本豊さんほどではないにしても、ドラゴン久保と命名されたその魅力は、このブログでも取り上げたことがあります。
その久保さん、かねてから無口さと、数少ないコメントの奇抜さでもサッカーファンを楽しませてくれたものですが、その魅力を彼の地元、広島のテレビ局が見抜いていたようです。
その結果、こうして私たちは、独特の解説ぶりを楽しめることになったようです。おそらく、彼が解説者としてキャリアを積んでいけば名言集なのか迷言集なのかわかりませんがサッカー界における福本豊さんのような域に近づけるのではないかと予感させられました。