昨日の判決は画期的なものであった。
(写真は朝日新聞Web版より)
元・社会保険庁職員が休日に地域で「赤旗」号外を配布していたところを国家公務員法違反で拘束された「堀越事件」で、昨日(2010/3/29)東京高裁・中山隆夫裁判長は、一審東京地裁判決を覆し、この弾圧が憲法違反に当たるとして画期的な「逆転無罪判決」を言い渡した。
この事件では、被告の堀越明男さんが「赤旗」号外を配布するところを
【警視庁公安部が、のべ171人もの警官を動員。1カ月間にわたって堀越さんを尾行・監視し、ビデオで撮影するなど、堀越さんのプライバシーと人権を著しく侵害】(「赤旗」3/30付け)した、国家権力によるスパイ活動による情報収集を『国家公務員法違反』の証拠としたと言う点でも異常なものであった。
元々「国家公務員による政治活動の禁止」という理念は、高級官僚などが国家権力を嵩に着て一般庶民に特定の候補者への投票を強要したり、日本共産党などの特定の政党を弾圧するために『告げ口』を強制してきたという戦前の悪弊を糾す事にあったはずなのだが、最近ではもっぱら日本共産党員や支持者を逮捕・起訴するために使われている。
無罪判決を受け、支援者にあいさつする
堀越明男さん=29日午前、東京高裁前
(写真は河北新報Web版より)
今回の判決で中山隆夫裁判長は
「被告の機関紙配布行為を罰することは、表現の自由を保障した憲法に違反する」
とし、
「1974年の最高裁判例以降、国民の意識は変化し、表現の自由が特に重要だという認識が深まっていると指摘。勤務時間外まで全面的に政治活動を禁止するのは、規制が不必要に広すぎるとの疑問がある」
とした。
【その上で、被告が行った機関紙配布行為は、休日に職務と無関係に、公務員であることを明かさずに行ったにすぎないとして、「国の行政の中立的運営や国民の信頼の確保を侵害するとは考えられない」と判断。「被告を処罰することは、国家公務員の政治活動の自由にやむを得ない限度を超えた制約を加えるもので、憲法21条などに違反する」と結論付けた。 】 (時事通信)
堀越明男被告に逆転無罪の判決が言い渡され、
東京高裁前で報告する弁護士=29日午前
(写真は河北新報Web版より)
赤旗配布で逆転無罪 罰則適用「憲法違反」
河北新報 2010年03月29日月曜日
公務員の身分で共産党機関紙「しんぶん赤旗」を近所に配ったとして、国家公務員法違反(政治的行為)の罪に問われた元社会保険庁職員堀越明男被告(56)の控訴審判決で、東京高裁の中山隆夫裁判長は29日、罰金10万円、執行猶予2年とした一審判決を破棄、逆転無罪を言い渡した。
中山裁判長は判決理由で「被告の行為は職務と関係がない単発的行為で、行政の中立的運営と国民の信頼という保護法益が損なわれる危険性を認めるのは難しい」と指摘。
「被告の行為に罰則規定を適用することは国家公務員の政治活動の自由に対し、限度を超えた制約を加えていると言わざるを得ず、表現の自由などを保障した憲法に違反するとの判断を免れない」と述べた。
さらに、公務員の政治的行為について「相当許容的になっている。さまざまな視点の下に刑事罰の対象とするかどうかや、その範囲などを再検討する時代が到来している」と異例の付言をした。
弁護側は「配布は職場と離れた場所で休日に行った。公務に影響のない私的行為で、行政の中立性を侵害していない」と無罪を主張していた。
河北新報 2010年03月29日月曜日
【関連サイト】
国公法弾圧・堀越事件ホームページ
国公法弾圧堀越事件・日本国民救援会
国公法弾圧堀越事件・事件あらまし
堀越事件2審無罪判決・中山研一の刑法学ブログ
国公法弾圧堀越事件、東京高裁で無罪判決・どこへ行く、日本
守られた「表現の自由」・しんぶん「赤旗」1面TOP記事
弾圧の意図挫(くじ)く意義ある判決・しんぶん「赤旗」主張
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赤旗配布で逆転無罪、東京高裁 元社保庁職員の男性(共同通信) - goo ニュース
2010年3月29日(月)12:49
【視点】「赤旗」配布 政治活動規制のあり方問い直す(産経新聞) - goo ニュース
2010年3月30日(火)08:00
元社保庁職員に逆転無罪=「機関紙配布、処罰は違憲」-国公法違反事件・東京高裁(時事通信) - goo ニュース
2010年3月29日(月)11:03
政党機関紙配布、元社保庁職員に逆転無罪 東京高裁
朝日新聞 2010年3月29日(月)10:17
休日に政党の機関紙を配布したとして、国家公務員法違反(政治的行為の制限)の罪に問われた旧社会保険庁(現日本年金機構)の年金審査官だった堀越明男被告(56)の控訴審で、東京高裁は29日、罰金10万円、執行猶予2年とした一審・東京地裁判決を破棄し、無罪とする判決を言い渡した。中山隆夫裁判長は「このような配布に同法の罰則規定を適用するのは国家公務員の政治活動に限度を超えた制約を加えることになり、表現の自由を保障した憲法に反する」との判断を示した。
堀越元審査官は2003年の衆院選前に共産党の機関紙「しんぶん赤旗」の号外などを自宅近くのマンションで配ったとして起訴された。国家公務員が同法違反の罪で起訴されたのは、社会党(当時)のポスターを掲示・配布した郵便局職員が1974年の最高裁大法廷判決で有罪(一、二審は無罪)となった「猿払(さるふつ)事件」以来だった。
この日の判決は「国家公務員の政治的行為を制限した国家公務員法の規定は合憲」と述べ、猿払事件判決の司法判断の大枠は維持した。その一方で「国民の法意識は時代の進展や政治的、社会的状況の変動によって変容する」と指摘。猿払事件当時と比べて「民主主義は成熟し、表現の自由が重要な権利であるという認識が一層深まっている」との状況認識を示し、「公務員の政治活動を全面的に禁止することは、不必要に広すぎる面がある」とした。
そのうえで、起訴された元審査官の行為を検討。元審査官は社会保険事務所に勤務する事務官で、職務に裁量の余地がなく管理職でもない▽休日に勤務先やその職務とかかわりなく、勤務先から離れた自宅周辺で、公務員であることを明らかにせずに配布しており、目撃した一般国民がいたとしても、公務員の政治的行為と認識する可能性はなかった――と言及した。
さらに、機関紙の発行、編集をするのに比べると政治的な偏向が認められないことや、集団的な政治行為ではなかった点も考慮。「行政の中立的運営や国民の信頼という保護法益が損なわれる抽象的危険性があるとするのは、常識的に見て困難だ」と結論づけた。
中山裁判長は判決理由の最後に「付言」として国家公務員の政治的行為の禁止について言及。諸外国と比べても厳しく、制定当時と比べても大きな社会意識の変化が起きていることや、地方公務員に対する制限とも異なることを踏まえ、「組織的に行われたものや、ほかの違反行為を伴うものを除けば、表現の自由の発現として、相当程度許容的になってきている」と指摘。「刑事罰の対象とすることの当否、その範囲などを含め、再検討され、整理されるべき時代が到来しているように思われる」と述べた。
06年の一審判決は、猿払事件の最高裁判決を踏襲して、堀越元審査官の行為を「政治的中立性を損なう恐れがある」と指摘。「公務員の政治的行為が禁止されていることを認識しながら、支持政党の機関紙を配布したことは正当化できない」と述べ、執行猶予付きの罰金刑を言い渡した。このため、有罪を不服とした弁護側と、量刑を不服とした検察側の双方が控訴していた。(向井宏樹)
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〈公務員の政治的行為〉 国家公務員は国家公務員法によって政治的行為が禁止されている。人事院規則で具体的な禁止行為が定められ、政党や政治団体の機関紙の発刊や編集、配布のほか、政党への勧誘、署名活動、集会で政治的目的を持つ意見を述べることなどが禁じられている。現在の法定刑は3年以下の懲役、または100万円以下の罰金。地方公務員も、地方公務員法で政治的行為が制限されている。
(朝日新聞 引用終わり)