菅総理は昨年10月、本部長として中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)を舞台にした原子力総合防災訓練に参加した。
その訓練の主眼は、静岡県の中部電力 浜岡原発で原子炉の冷却機能が喪失し、放射性物質が放出される恐れがある ――という、今回の原発事故とほぼ同じ事態を想定したものだった。この訓練に、首相自身は「本部長」として首相官邸で参加していた。
しかし、昨日の国会での答弁は、「詳しい内容は記憶していない。地震を想定したことではなかったか」であった。
原子炉の事故と言う記憶が無かったと言う。また、その訓練では地震は想定されていなかったそうだ。
本部長がこれでは、訓練の成果があまり見込めそうもない。
そのためか、関係省庁がまとめる訓練の評価結果が半年たっても仕上がっていないという。
首相はこれを追究されると
「首相は森羅万象のことに対応しないといけない。私は細かいところまで全てを承知していない」と開き直ったとのこと(読売)。
「細かいところまで全てを承知していない」ことを責めるものではないが、それなら『細かいところまで、それぞれの持ち場で知っている』官僚たちを使いこなさなければならない。
国会議員もそれほど『細かいところまで』詳しく知っているはずがない。
“それぞれの分野で”『細かいところまで』知っているのは官僚や保安院の天下り官僚や原子力安全委員会の専門家たちである。
「政治主導」というのは、総理が指導力を発揮して、これらの人々を使いこなすことであり、官僚を無視して政治家や国会議員だけで進めるものではない。
官僚に依拠しないので、官僚の方も「別に頼まれもしないのに助けてやる必要は無い」とでも思って、国民の命に思いを馳せることをしないのであろう。
とにかく、お粗末な限りで、その発端は、
「おれは原子力には誰よりも詳しいんだ」と事故発生当初言ったといわれる菅総理の思い上がりにあったのだと私は思う。
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原発事故想定の防災訓練、首相「詳しくは記憶してない」
(朝日新聞) - 2011年4月18日(月)23:52
18日の参院予算委員会で菅直人首相が自ら参加した原発事故を想定した防災訓練の内容を問われ、「詳しくは記憶していない」と答弁する一幕があった。
自民党の脇雅史氏が「原子力総合防災訓練のテーマを覚えているか」と質問。首相は「詳しい内容は記憶していないが、いろいろな地震等を想定したことではなかったか」と答弁した。首相は昨年10月、本部長として中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)を舞台にした原子力総合防災訓練に参加。放射性物質放出の恐れが出たという想定だった。
脇氏が「今回と同じ想定だ。何の記憶もないのか。何のための訓練か」と詰めると、首相は「原子力事故は過去に多くあったので、一般的な認識は持っていた」などと釈明した。
首相しどろもどろ・開き直り…初動遅れ追及され
(読売新聞) - 2011年4月19日(火)15:13
「十分な対応ができている」――。東日本大震災に関する18日の参院予算委員会で、菅首相は危機対応に不備はなかったと繰り返した。
(中略)
強気で押した首相だが、野党議員の追及が進むにつれ、しどろもどろの答弁も目立った。
自民党の脇雅史氏は、震災当日に福島第一原発の1、2号機の緊急炉心冷却装置が使用不能になってから、政府が原子力緊急事態宣言を発令するまで2時間半かかったことを挙げ、「初動の遅れは大変な問題だ」と批判した。首相は「原子力災害対策特別措置法に基づいて、全力を挙げて行動している」と反論した。
しかし、脇氏が昨年10月に原子力安全基盤機構がまとめた「原子炉を冷却できない状態が3時間半続くと、圧力容器が破損する」との報告書を引用し、「冷却不能」との報告時にただちに宣言すべきだったとたたみかけると、首相は「ご指摘のものは読んでいない」と認めざるを得なかった。
震災前に、首相が危機管理の重要性を十分認識していなかった可能性も浮上した。
「詳しい内容は記憶していない。地震を想定したことではなかったか」。首相がこう答弁したのは、昨年10月に行われた政府の原子力総合防災訓練の内容について、脇氏がただした時だ。
この訓練のシナリオには、地震発生は含まれていなかった。それよりも、訓練の主眼は、静岡県の中部電力浜岡原発で原子炉の冷却機能が喪失し、放射性物質が放出される恐れがある――という、今回の原発事故とほぼ同じ事態を想定したものだった。この訓練に、首相自身は「本部長」として首相官邸で参加していた。
訓練後、関係省庁がまとめる評価結果が半年たっても仕上がっていないことも指摘されたが、首相は「首相は森羅万象のことに対応しないといけない。私は細かいところまで全てを承知していない」と開き直った。
参院集中審議 菅政権は場当たり対応を慎め
(読売新聞) - 2011年4月19日(火)01:15
自民党の脇雅史参院国会対策委員長は、政府の原子力発電所事故の初動対応が、震災翌日の菅首相の原発視察や与野党党首会談開催によって遅れた、と追及した。
政府が震災当日、緊急炉心冷却装置が作動しない異常事態の連絡を受けてから、「原子力緊急事態」の宣言まで約2時間半もかかったのは問題だ、とも指摘した。
首相は自らの視察について「その後の対策に有効だった」と述べ、初動対応についても「十分な対応ができている」と反論した。
複数の危機が同時進行する「複合事態」だけに、初動対応が難しかったのは事実だ。それにしても、その後、政治家と官僚の足並みがそろわず、多数の本部や会議が乱立して指揮系統が混乱し、対応が後手に回ったのは否めない。
その責任は無論、菅首相にある。各種世論調査でも、多くの国民が首相の指導力不足に懸念を示している。統一地方選前半戦における民主党の敗北も、震災対応の不手際が要因と見られている。
被災地の復旧・復興は遅れ気味だ。原発事故の収束に向けた工程表も多くの課題を抱えている。
菅首相は、「政府全体の動きは一定の評価を頂いている」などと強弁するばかりでなく、政府・与党の震災・原発対応のあるべき姿を冷静に考える必要がある。