米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授(58)が22日、同大の学生主催のシンポジウムで、参加者と議論を交わした。震災で生まれた日本への共感は、国境や文化を超えた共同体意識が芽生えるきっかけになる――そう訴える教授に、参加者はそれぞれの意見をぶつけた。 (朝日 4/23)
同様の記事は読売新聞にも掲載されていました。
サンデル教授「原発議論は民主主義の試金石」
(読売新聞)- 2011年4月23日18時41分
また、米ハーバード大の学生主催のシンポジウムの後、朝日新聞などの取材に応じた。 (朝日 4/24)
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「原発議論が民主主義深める」サンデル教授インタビュー
(朝日新聞) - 2011年4月24日(日)09:17
サンデル教授は22日、米ハーバード大の学生主催のシンポジウムの後、朝日新聞などの取材に応じた。主なやりとりは次の通り。
――福島第一原発の問題をどう見ているか。
危機が起きる前、米国は原発推進に向かっていたが、再考を迫られた。他のすべての国も、エネルギー政策の安全性やリスクを新たな枠組みで議論することが避けられないだろう。
だが、根本的には、膨大なエネルギー消費に依存する物質的に豊かな生活様式をどうするか、我々がどんな社会に住みたいかという価値観の問題になる。
――日本での原発の賛否をめぐる議論は激しいものになるかもしれない。
私のアドバイスは、思慮深く、丁寧な議論をすること。絶対に議論を避けてはならない。社会が直面する最も困難な課題について、賛否両派が相互に敬意を持って、公然と討議できれば、民主主義は深まる。だからこそ、建設的に議論するための枠組みの設定が非常に重要となってくる。
――誰が枠組み設定を担うべきか。
政治指導者に責任があるが、しばしば機能しない。有権者が望まないからだ。民主主義に不可欠な、自ら考えて議論する市民を育む教育の責任が大きい。メディアも意味ある議論を提起する義務がある。
――日本政府は11年度予算の途上国援助(ODA)削減を決めた。
日本が震災後の緊急事態を過ぎた時、途上国援助で再び寛大な役割を担うことに、私は疑念がない。(ケンブリッジ=春日芳晃)
震災後の世界の話をしよう サンデル教授が白熱議論
(朝日新聞) - 2011年4月23日(土)20:23
東日本大震災後の世界のあり方をめぐって、対話型講座「正義」のテレビ放送や著書が爆発的人気となった米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授(58)が22日、同大の学生主催のシンポジウムで、参加者と議論を交わした。震災で生まれた日本への共感は、国境や文化を超えた共同体意識が芽生えるきっかけになる――そう訴える教授に、参加者はそれぞれの意見をぶつけた。
サンデル教授はまず、日本へのかつてない共感を広げた東日本大震災で、国境や文化を超えて、他者の痛みや喜びを自分のことのように共有する「世界市民」の意識が生まれるだろうかと問いかけた。答えは「共感だけでは変わらない。私たちが他者と持続的なかかわりを築くことができるかにかかっている」。そのためには、他者と開かれた対話を続け、コミュニケーションを深めることが最も重要だと強調した。
「世界市民という考えに感動した」という女性には、自分の支持する政治哲学は「論理と理性」と「共感的理解」を分けるものではなく、双方を含んだものと説明。世界中の人々が共同体の意識を深めるための議論も、感情や情熱と理性を切り離す必要はなく、むしろそれらを反映しながら、公の場で堂々と議論すべきだと提案した。
ある男性は、推定で23万人超が死亡した2010年のハイチ大地震と、28万人以上の死者を出した04年のインド洋大津波に言及し、「東日本大震災よりひどい災害。これらの災害と東日本大震災の間に違いはあるのか」と質問。暗に東日本大震災の「特別扱い」を批判し、「世界市民」意識の発展の可能性にも疑問を呈した。
「災害は災害」と切り出したサンデル教授は、「ただ、それぞれの災害からどういう意味を見いだすかについて、私たちはまだ答えを出せていない。どれだけ多く亡くなったかは答えにならない。どういう答えを出すかは、私たちにかかっている」と慎重に言葉を選んだ。
主催者の1人、ハーバード大4年の久間木(くまき)宏子さん(22)は福島市で生まれ、仙台市で育った。「3月11日からずっと震災ニュースにくぎ付けで、何もできないもどかしさ、悔しさ、申し訳なさの中で過ごしてきた。シンポの成功はハーバード大学全体が応援してくれたから。被災地の状況を気にかけているという皆の思いを届けたかった」と語った。(ケンブリッジ=春日芳晃)
サンデル教授「原発議論は民主主義の試金石」
(読売新聞)- 2011年4月23日18時41分
【ケンブリッジ(米マサチューセッツ州)=吉形祐司】
ベストセラー「これからの『正義』の話をしよう」の著者、米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授(58)(政治哲学)は22日、読売新聞などと会見し、福島第一原子力発電所の事故を受け、いかに原発の将来を議論するかが「民主主義の究極の試金石となる」と述べ、建設的な論争を求めた。
1人殺せば5人を救える場合、1人を殺すことは正義か――こうした「究極の選択」を講義で論じる教授は、原発是非論に関して「激しく対立する問題で議論を避ける傾向があるが、間違いだ。(互いに)敬意を払い、開かれた議論ができるかどうか、民主主義が試されている」と断言した。
議論のリード役については、「まず政治家だが、政治家はいい仕事をしていない。市民がそれを要求していないからだ。メディアの責任は大きいが、娯楽的な『どなり合い』ではなく、真剣に討論する場を提供すべきだ」と述べた。
(2011年4月23日18時41分 読売新聞)