醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  354号  白井一道

2017-03-26 12:16:05 | 随筆・小説

 石川県の名酒「手取川石川門」を楽しむ

侘輔 石川県のお酒と香川県のお酒なんだ。
呑助 石川県というと「菊姫」とか「天狗舞」が有名ですよね。
侘助 まさに地酒界の雄かな。一九七〇年代の末には日本全国に知られるようになったお酒だからね。
呑助 今日のお酒はどこの蔵のお酒ですか。
侘助 石川のお酒は白山市の吉田酒造、銘柄は「手取川」が有名かな。香川県のお酒は金刀比羅さんで有名な琴平ある金陵酒造の「月中天」なんだ。
呑助 香川県のお酒は記憶にないような気がするな。
侘助 そうかもしれない。香川県にも美味しい酒はあるんだ。お遍路さんが楽しみにするような美味しいお酒があるんだ。讃岐の「綾菊」とか「川鶴」かな。
呑助 へぇー、日本中、どこに行っても美味しい酒があるんですね。
侘助 そうなんだ。それでこそ日本の地酒かな。
呑助 今日は「手取川」のグレードは何ですか。
侘助 純米・吟醸。
呑助 醸造用アルコールの添加が無いんですね。
侘助 そうなんだ。吟醸だから、精米歩合は麹米が五〇%、掛米が五五%のようだ。
呑助 大吟といってもいいくらいなお酒ですね。
侘助 そうだよね。「獺祭」は精米歩合が五〇%の酒を大吟醸として売っているからね。
呑助 そう言えばそうでしたね。
侘助 このお酒は本生のお酒なんだ。一度も火入れをしていないお酒なんだ。普通、生酒というと生貯蔵酒が多いかな。火入れをせずに貯蔵し、出荷前に火入れして出荷するお酒だよね。そのほかに火入れをして貯蔵し、出荷するお酒もあるけれど、少ないようだよ。
呑助 じゃー、酵母がまだ生きているんですかね。
侘助 だから聞いてみたんだ。まだ発酵しているんですかとね。今年のお酒はほとんど発酵はおわっていますと言っていた。
呑助 それでは辛口の酒になってるんですかね。
侘助 きっとそうなんじゃないかな。本生のお酒は貯蔵管理がしっかりした酒販店でなければ酒蔵は怖くて出荷しないそうなんだ。本生の酒は絶えず腐敗のリスクが伴うからね。だから特定のお得意さんの酒販店にしか出荷していないお酒なんだ。
呑助 そのため、このお酒は蔵元のホームページには紹介されていないお酒なんですね。
侘助 そのようだよ。さらにこのお酒は無濾過だからね。炭で濾過していないお酒なんだ。だから炭で濾過すると綺麗なお酒になると言われているが、美味しさもまた奪われてしまうからね。お酒本来の美味しさが味わえるお酒なんだ。
呑助 加水はしているんですか。
侘助 いや、原酒だから加水はしていない。
呑助 純米吟醸生原酒のお酒なんですね。
侘助 そう。酒造米が「石川門」という銘柄の「酒造米」で醸したお酒だから、銘柄は「石川門」と言っているようだ。
呑助 石川県原産の酒造米なんですかね。
侘助 石川県オリジナルの酒米のようだ。この酒米「石川門」100%で醸した酒が今日楽しむ「手取川・石川門」の酒のようだ。二十年におよぶ研鑽の結果、徐々に普及してきている酒米のようだ。