小学生の女の子が、クラスでちょっと男の子にからかわれて学校に行きたくないと言った。
転校生だった女の子は、平均より少し身長が高かったために「デカ!!」と言われてしまったのである。
皆が目撃した事実といえるのは、これだけのことだった。
それからしばらくして、学校から少し離れたゴミ置き場に、なくなった体育着の帽子が捨てられていたのが見つかった。
お兄ちゃんのおさがりだった名前が書かれているその帽子を見て、母親は怒りを隠せなかった。
即、学校側と話し合いがもたれた。
だが、それからも女の子への嫌がらせが続いた。
文房具が盗まれたり、図工の作品が壊されたり、教科書のページにハサミが入れられているのも見つかった。
女の子は体調不良を訴えて、休むことが多くなった。
先生たちは何度も話し合って対策が練られた。
子どもたちは学級会で「いじめ」について話し合って、父兄にも特別に集会が持たれた。
匿名でアンケートをとったり、もし彼女が登校した日は、どうやって迎えてあげればいいかも意見を出し合った。
女の子の荷物は、すべて職員室に預かることになった。
生徒たちのハサミは回収されて、必要な時は先生からもらうようになった。
女の子のクラスだけは、朝来ても全員が揃うまで、廊下で待機するルールも設けられた。
人がいない時に、誰にも不審な行動をさせないようにである。
授業中に別の先生が後ろに立って、生徒一人一人の視線を追うような監視もした。
「疑わしい」と思われる子に、それとなく面談も行われた。
しかし、嫌がらせは「犯人がわからないまま」一年以上も続いたのである。
「せめて誰がやったのか」
それが解ればこんなに苦しまずに済むのにと両親は悩んだ。
久しぶりに登校した女の子が、手提げカバンからシャープペンが無くなったと泣いたのを見た両親は、「学校側は本気で調べる気はあるのか?」と、教育委員会にも足を運んだ。
女の子の精神はずっと安定せず、精神科に通って薬を服用するようになった。
改めていうが
皆が見たのは「男の子にちょっとからかわれたこと」ただ一つだったのである……
この話、子どもの話と侮ることなかれ。
大人でも自分が辛いとアピールしたかったら「本当はこれだけのこと」を、幾重にも広げたくなるものある。
そうなると作りはしないまでも、自分に都合のいい話ばかりが目に留まる。
それは誇大に語り、不都合は聞く耳をもたなくなる。
毎日叫び続けてもそれでも足りなくて、もっともっとと情報を集めたくなって、しまいには会ったこともない異国の人間にまで疑心暗鬼な妄想を巡らせる。
シンパ内では妄想ではなく「鋭い洞察力」として感嘆されるのかもしれないが。
傍からみたら滑稽でも、本人は冷静で真剣なつもりである。
「たったこれだけ」ではなく、事は深刻で重大で甘くないことのにするためなら。
そうは思わない人間は「冷たい」或るいは「おめでたい」と言われたくないために、幾つもの「真実」を苦笑いしながら許容すべきなんだろうか。
転校生だった女の子は、平均より少し身長が高かったために「デカ!!」と言われてしまったのである。
皆が目撃した事実といえるのは、これだけのことだった。
それからしばらくして、学校から少し離れたゴミ置き場に、なくなった体育着の帽子が捨てられていたのが見つかった。
お兄ちゃんのおさがりだった名前が書かれているその帽子を見て、母親は怒りを隠せなかった。
即、学校側と話し合いがもたれた。
だが、それからも女の子への嫌がらせが続いた。
文房具が盗まれたり、図工の作品が壊されたり、教科書のページにハサミが入れられているのも見つかった。
女の子は体調不良を訴えて、休むことが多くなった。
先生たちは何度も話し合って対策が練られた。
子どもたちは学級会で「いじめ」について話し合って、父兄にも特別に集会が持たれた。
匿名でアンケートをとったり、もし彼女が登校した日は、どうやって迎えてあげればいいかも意見を出し合った。
女の子の荷物は、すべて職員室に預かることになった。
生徒たちのハサミは回収されて、必要な時は先生からもらうようになった。
女の子のクラスだけは、朝来ても全員が揃うまで、廊下で待機するルールも設けられた。
人がいない時に、誰にも不審な行動をさせないようにである。
授業中に別の先生が後ろに立って、生徒一人一人の視線を追うような監視もした。
「疑わしい」と思われる子に、それとなく面談も行われた。
しかし、嫌がらせは「犯人がわからないまま」一年以上も続いたのである。
「せめて誰がやったのか」
それが解ればこんなに苦しまずに済むのにと両親は悩んだ。
久しぶりに登校した女の子が、手提げカバンからシャープペンが無くなったと泣いたのを見た両親は、「学校側は本気で調べる気はあるのか?」と、教育委員会にも足を運んだ。
女の子の精神はずっと安定せず、精神科に通って薬を服用するようになった。
改めていうが
皆が見たのは「男の子にちょっとからかわれたこと」ただ一つだったのである……
この話、子どもの話と侮ることなかれ。
大人でも自分が辛いとアピールしたかったら「本当はこれだけのこと」を、幾重にも広げたくなるものある。
そうなると作りはしないまでも、自分に都合のいい話ばかりが目に留まる。
それは誇大に語り、不都合は聞く耳をもたなくなる。
毎日叫び続けてもそれでも足りなくて、もっともっとと情報を集めたくなって、しまいには会ったこともない異国の人間にまで疑心暗鬼な妄想を巡らせる。
シンパ内では妄想ではなく「鋭い洞察力」として感嘆されるのかもしれないが。
傍からみたら滑稽でも、本人は冷静で真剣なつもりである。
「たったこれだけ」ではなく、事は深刻で重大で甘くないことのにするためなら。
そうは思わない人間は「冷たい」或るいは「おめでたい」と言われたくないために、幾つもの「真実」を苦笑いしながら許容すべきなんだろうか。