サイボクに買い物に行った帰り、ほんの少し智光山公園の都市緑化植物園に立ち寄ってみた。
里には、まだ紅葉は下りていなかった。薬草園を覗くと、クコの花が数輪咲き残っていた。
7月頃から咲き始め、霜が降りる頃まで花を付け続けるという。まだまだ花期のうちってことらしい。
小さな白いドットが目をかすめた。なんだろうかと近寄って見ると、モモの花のようである。
一般的に、旧暦のひな祭りの頃に開花するといわれるから、だいぶフライング気味だ。異常な気象が体内時計を狂わせているのかな?
ビナンカズラ(美男葛)ともいう。古から身近な植物とされ、歌にも数多く詠まれていたとか。
さね葛 後も逢はむと 夢のみに うけひ渡りて 年は経につつ(万葉集第11巻:2479番)
訓み:さねかづら のちもあはむと いめのみに うけひわたりて としはへにつつ
現代語訳:きっと逢えわよね、な~んて夢の中で祈り続けていたんだけれど、まだ逢えずに歳月ばかりが流れ過ぎてしまったわ
柿本朝臣人麻呂之歌集 作者不詳
この類の歌は、サネカズラがつる(蔓)性であるってことがキーポイントらしい。サネカズラが逢うにかかる枕詞ってことなのだろうか。どこまでも、果てしなく、うねうねと伸びていくつるとつる。いつかはきっとそのつるの先と先とが相まみえ、絡み合うっていうイメージなんだろうね。
ところが、僕の場合、この実を見ると和菓子の一つを思い出す。色は違えど、あの鹿の子のように見えはしまいか。な~んだ、情緒もへったくれもないなんておっしゃいますな。色気よりも食い気、そう、食い意地ってやつも、ヒト属の健全(?)なる欲の一つなのであるから。