ちわきの俳句の部屋

メカ音痴おばさんの一念発起のブログです。
人生の後半を俳句にどっぷりと浸かって、…今がある。

兼題は〝秋の風〟

2020年09月18日 | 俳句

 新型コロナウイルスでしばらく中止していた俳句教室が、今週からは会場が3時間使えるということで、今日は久し振りの教室でした。

 このままいけば、明日も来週もと引き続いてあるんですが、本来なら今月はこんなものでは済まなかったんですよ。この連休にはあしかび会の一泊研修会で伊良湖崎へ行く予定でしたし、26日の土曜日は俳人協会県支部の俳句大会が防府であったはずなんですから。全てコロナで中止になりました。これ…私にとってはよかったことなのかしら? アハハハ…

 さて、今日の兼題は〝秋の風〟でした。一見容易そうな季語だと思うかもしれませんが、こういうのが意外と難しいんですよ。春や夏、冬の風とはしっかり区別しないといけませんから。そうしなければ、きっと〝季語が動く〟とか〝季語が効いていない〟とか言われるに違いありません。

 更に、〈秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる〉(『古今集』藤原敏行)のような、いまだ秋風とは気づかないような風に感じる秋意から、はっきりと気象現象としての秋風とわかるものまで、秋に吹く風いっさいをいうのですからね。

  あかあかと日は難面(つれなく)も秋の風        

  石山のいしより白しあきの風

  物言へば唇寒し秋の風

 3句とも芭蕉の有名な句ですから、ご存じの方はたくさんいらっしゃるでしょうが…、説明します。

 最初の句は、 「もう秋になったというのに、日は知らぬげにきびしく、なおあかあかと照りつける。しかし、さすがに吹く風には秋の涼しさが感じられることだよ」という意味です。1689年の東北・北陸の旅の途中、加賀国金沢(現石川県金沢市)で7月17日(旧暦の7月は初秋)、俳人立花北枝の自宅で開かれた句会で詠まれたもの。 『おくのほそ道』にも収録されています。

 次の句も『おくのほそ道』です。「この寺の石は、風雨にさらされて白々としているが、今吹き渡っている秋風は、この石の山の石よりも、もっと白く感じられることだよ」という意味。1689年8月5日(陽暦9月18日)、芭蕉が山中温泉で曽良と別れ、北枝と共に那谷寺を訪れた時に詠まれた句です。石山を滋賀の石山寺とする説もありますが、本文中で「奇石さまざまに、(中略)殊勝の土地なり」と那谷寺の石のことを書いていますので、これは小松(石川県)の那谷寺の石と考えるのが妥当でしょう。
 中国では白秋や素風(白い風)と言われているように、秋の風が白いというのは芭蕉の新しい発想ではなく、句としても格別なものとは言えません。しかし、句の出来以上に広く知れ渡っているのは、「石山の石より白し」と「石」をたたみかけていることと、「いしやまのいしよりしろし」という「し」の頭韻が、独特のリズムと味わいをもたらしているからでしょうか。 

 また、秋の風のことを「色なき風」ともいい、秋全般に使う季語になっています。これは〈吹き来れば身にもしみける秋風を色なきものと思ひけるかな〉(『古今和歌六帖』紀友則)からといわれています。

 最後の句は、今ではもう辞書にも慣用語として掲載されていますから、よく耳にされる句でしょう。1684年ごろに成ったといわれる「座右の銘」、「人の短をいふ事なかれ、己が長をとく事なかれ」の後に添えられているものです。句意は「人の短所を言ったあとには、秋風が吹いてくるように淋しい思いがすることよ」。それが〝なまじ余計なことを言えば、そのためにわざわいを招く〟ということに転用されるようになったものです。要するに〝口は禍の門〟というのと同じ。恐らく芭蕉は初めからそういう意味ではなく、純粋な秋風の実感を詠んだだけだったのではと思うのですが…。

 以上のことから考えれば、最初の句の秋風は初秋、2番目は仲秋から晩秋、最後の秋風も〝寒し〟といっていますから、晩秋に近い秋風といっていいでしょう。

 今回の句会では、2つの句に点が集まりました。ここではその句を発表することは出来ませんので、悪しからず。だだ一つ参考になることがあります。実は今日から入門された方がいて、ご自分の句を選句されていたということなんです。お分かりでしょうか?

 俳句の世界では、…いや、俳句だけではないかも知れませんが、どんなに自分の句が一番上手いと思っても(笑)…決してそれを採ってはいけません。他人様の句を差し置いて自分のを採るなんて!と、非常に嫌われます。また、これはその句会に参加された方にとても失礼なことなんですよ。なんせ俳句は品格を重んじる文学なんですからね。アハッ…

 写真は、今日の俳句教室が終って帰るときの夕空。午前中は雨がパラパラ降っていましたが、夕方には止んでこんな西空と反対側の空です。明日もこれぐらいなら…といいたいところですが、どうでしょうか。

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする