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ちわきの俳句の部屋

メカ音痴おばさんの一念発起のブログです。
人生の後半を俳句にどっぷりと浸かって、…今がある。

〝蟹〟さんって?

2021年08月29日 | 俳句

 今日はもう8月も29日…残りあと2日です。朝のラジオ体操もなし、教室の句会もしばらく通信でということになりました。

 何だか手足をもがれた蟹(かに)さんのような気分…はて、蟹さんはそれでも横這いするのかな?片手や片足の一本ぐらいならできるのかも…

 さて、〝蟹〟はいつでもいるように思われますが、俳句では夏の季語なんです。それも磯や山や川にいる小蟹のことで、あのタラバ蟹やズワイ蟹などのような食用の大形の蟹は冬の季語になります。

  川蟹の踏まれて赤し雷さかる  角川源義

 あれは夏だったのかしら?いや、秋の初め頃だったような…。早朝、川の傍を車で走っていると、路上におびただしい蟹のような残骸が見えましたので、車を停めて降りてみました。それは全て踏みつぶされてぺちゃんこになった川蟹の姿でした。なんとも言えない…こんなに無惨な…まるで戦乱の後のような有様…。もちろんこれはみんな人間の仕業です。きっと夜川蟹が産卵のためにこの道へ登ってきていたんだわ、それを通行の車が次々に…と思いました。

 実は、随分昔のことですが、以前の家の近くに切り通しがあって、ある月夜にその坂を下っていると、月光に照らし出された小さな生きものがゾロゾロと…。それはまるで地中から沸いてくるようにひっきりなしに坂を登って(下ってかも?)いました。よくよく見るとそれが全て小さな蟹だったんです。その産卵に行く蟹たちの映像は私の目に焼きついて、その後俳句を始めてからの私にとても役に立ちました。

  子を産みに山の小蟹の列なして  小林草山

 生きものはみな生まれた環境でそれぞれに生きていくしかないし、寿命にしたって与えられた時間しかない…。それが当たり前だし、それにナンの疑問も持たずに一生を終える。しかし、沢蟹などは10年も生きるんですって。おまけに脱皮を繰返しますので、その度に亡くした手足などはまた新しいのが生えるんだとか。スゴい!人間も少しは脱皮できるといいのに…(笑) そうすると膝などの痛みで病院へ通わなくてもいいのにね。まるで夢のような笑い話!

 しかし、災害などというものは人だけではありません。私たちはその災害で家を失い肉親を失い…と嘆き悲しみます。が、その陰には五万という他の生きものたちも同じ災害に見舞われて死んでいったのではと思います。そういうときって人は自分たち以外の小さな生きものには目もくれないでしょう。当事者になればそれが当たり前。だって自分が苦しいときというのは心に余裕がなくて、他者への目配りなんて出来ませんものね。

 でも、そういうとき、もしそんな小さなものへの〝思いやり〟という目を持っていたとしたら、それは光り輝きますよね。

 山口県には大正時代末期から昭和時代初期にかけて活躍した童謡詩人の金子みすゞがいます。彼女の作品の中に次のような「大漁」という有名な詩がありますが、ご存じでしょうか?

朝焼け小焼だ、 大漁だ
大羽鰮(おおばいわし)の 大漁だ。

浜は祭りの ようだけど、

海のなかでは 何万の、
鰮(いわし)のとむらい するだろう。

 また、この詩を山口県出身のシンガーソングライターちひろさんが歌っておられますので、聞いてみて下さい。心が洗われるようですよ。

 〝生きる〟ということは、その陰には必ず何らかの犠牲が伴うこと。そして、その立場を変えてみれば、それがある意味傲慢であったことにも気付かせてくれます。

 詩だけに限らず、俳句でも…私はそんな人の気付かない心の襞を〝ことば〟と〝五七五〟に託して伝えたいと思うのです。音楽でも…そうですよね。

 〝心にしみる〟…秋とはそんなセンチメンタルな気分の似合う季節ですね。せめてコロナ禍に疲れた体は無理だとしても、自分の心だけは自分で癒やしてあげましょう!自分の好きなことでいいんですから、誰にでも出来ることなんですよ…ネッ!この歌を聞いてみるのも…ほら、いいかも。

金子みすゞ「大漁」 歌:ちひろ MISUZU KANEKO「BIG CATCH」CHIHIRO

#金子みすゞ #大漁 #ちひろ 金子みすゞの最も有名な代表作の一つ。 矢崎節夫氏の努力により埋もれていた詩人が現代に甦るきっかけとなった詩。...

youtube#video

 

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14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (信州人)
2021-08-29 23:05:42
ちわきさま、こんばんは。

自分は音楽は何でも聴きますのでさっそく、拝聴しました。
海なし県の信州にも大漁の喜びは伝わります。
豊作、秋の恵、日本はよかよかですが、とむらいでがっと場面が変わって、ここに詩がありますねえ。
飛魚のアーチを進む練習船  信州人

もう早場米は収穫間近です。道中のコンビニで
早稲の香や昼餉に伏せる一輪車  信州人

志賀の旅、幸い天候に恵まれ、ロープウェイで2000メートルまで上りました。
そして天空の東館山高山植物園、無防備で行ったので紫外線の強さに日焼けをしました。
ただいま、おでこには熱さまシートです。
下りは歩きで・・・
蒼穹を杖一本の花野かな  信州人

何故かその植物園に三好達治の「雪」という詩の碑がありました。
太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

掠れたる達治の歌碑へ秋の蝶  信州人

多くを作って多くを捨ててきた志賀の旅でした。
といっても20句くらいですが、作句のときは立ち止まり無口になり、嫁さんの不思議そうなまなざしが痛い(笑)
おやすみなさいませ。
返信する
こんばんは (ミルク)
2021-08-29 23:35:25
心が洗われるような、美しい歌声と、美しいメロディでした。
金子みすゞさんの詩の全集を持っています。
以前は良く読んでいましたが、最近は全く(^^;
読み返してみようと思います。思い出させて頂きました。
返信する
Unknown (ちわき)
2021-08-30 09:38:38
信州人さん、お早うございます。
志賀高原への旅…〈幸い天候に恵まれ、ロープウェイで2000メートルまで上りました。そして天空の東館山高山植物園…〉、いいですね。羨ましい!
でも高山植物は少し遅いのでは?
大抵高山植物を見たいと行っていたのは7月末から8月初めでしたから。
この温暖化で益々早まってるのではと思うのですが…
〈多くを作って多くを捨ててきた志賀の旅でした〉…
それはなかなかいい心掛けです…〈といっても20句くらいですが〉と、でもそれで十分ですよ。立派、立派!

〈飛魚のアーチを進む練習船〉…
やはりアーチを進むは無理でしょう。〈飛魚を従へ…〉とか〈飛魚を先立ててゆく…〉などにしないと…

〈早稲の香や昼餉に伏せる一輪車〉…
今一つかな。〈早稲の香〉では何をしているか?ここは〈早稲刈るや〉ではっきりと一輪車が見えてくる。

〈蒼穹を杖一本の花野かな〉…
これも〈杖一本〉が言い足りていないし、〈花野〉では高い山は見えてこない。ここが高山ということになれば〈お花畑〉という季語を…。ただし夏の季語になりますがね。

〈掠れたる達治の歌碑へ秋の蝶〉…
三好達治のこの「雪」というのは、短いけれど詩ですから、〈詩碑〉と。ここは〈へ〉でなく〈や〉でしっかり切りましょう。後は季語が効くかどうか…「雪」の詩ですからそれを連想させるような季語を見つけてみましょう。
よく頑張りました。ハナマルをあげましょう!
返信する
Unknown (ちわき)
2021-08-30 09:45:05
ミルクさん、お早うございます。
私も始めて金子みすゞに出逢ったとき、いろいろな本を買いあさって読みましたが…
でも東北大震災のとき復興CMで彼女の「こだまでしょうか」が流され、全国的に知れ渡るようになったことが嬉しかったです。
この詩に曲を付けて歌われているのは知っていましたが…じっくりと聞いたのは初めてです。
よかったら他のも聞いてみて下さい。
返信する
切通し (風の盆)
2021-08-30 15:28:28
>以前の家の近くに切り通しがあって
日本は山が多い。海辺で川辺でも山がある。そこに道を道路を作るので道路が狭くなるな。東京の多摩なぞは道が狭いな。もっとも多摩だけではないが

切通しは山を切り開いて道路を作る。鎌倉は山に囲まれている。鎌倉は何カ所も切通が見られるな
古代の人は大したものだわ
もっとも青の洞門だったかな、坊主がノミで道を作ったな。もっともトンネルだったが
田中角栄の故郷、長岡も山にトンネルを地元民が掘ったとか

返信を入れて置いた

金子みすゞは、確か西條八十だったかな、発掘したのは
どうも詩歌よりも不遇な男尊女卑を思い浮かべるな
確か太平洋岸でなく、日本海岸沿いだったかな
日本海でも鰯が取れるんだな

蟹でも、川と海では違うな
沢ガニだったかな。小さいが。
川でも食える大きな蟹が取れる
夜モジリをかけると朝には取れるが
返信する
Unknown (ちわき)
2021-08-30 20:44:27
風の盆さん、コメントありがとうございます。
金子みすゞは長門市仙崎の出身なので、日本海がすぐ傍なんです。
〈日本海でも鰯が取れるんだな〉…
獲れないと思っていましたか?仙崎の手前は萩ですが、そこに日本一小さい火山のある笠山が海に面してあり、そこの椿の原生林が観光名所になっています。行くと必ず鰯を干した目刺を試食販売しているんですよ。この萩から日本海沿岸のどこでも目刺や白子干しや烏賊の一夜干しなど…海産物の宝庫なんですよ。
風の盆さんはこちらに来られたことはないんですか?
川蟹もモクズガニと言うのは食べますよ。タラバガニやズワイガニなどより味は濃厚で美味しいんですが、面倒くさい。それで獲れたら叩きつぶして、豆腐や野菜を一緒に入れて吸い物にし、〝カニ汁〟として食べるんですよ。福岡ではこの川ガニをやはり叩きつぶして、塩からにして食べていました。これは〝ガンヅケ〟といって、父の大好物でしたが…。
〈夜モジリをかけると朝には取れるが〉…
モジリというのは漁具なんでしょうが、方言ですか?それとも袖がらみのことかしら…
返信する
Unknown (信州人)
2021-08-31 22:07:49
ちわきさま、こんばんは。

そうですねえ、高山植物は盛りを過ぎておりました。
褐色のきすげの群れに種ばかり・・・
怜悧な青のえぞ紫陽花群れ咲きは旬でした。
「紫陽花に秋冷いたる信濃かな  久女」
久女の紫陽花の品種はこれでしょうか。

自分は毎年、盆過ぎのこの時期に夏休みをとります。
ぐっと観光客も減り、宿もお安いので。
盛りの高山植物の園は未体験です。
美ヶ原の湿原もいつもこの時期でありました。
熊鈴の音色の別れ霧の原  信州人

ざっとではありますが、入門20週を読み、一応俳句の型を勉強しました。
師匠の叱咤激励のおかげであります。
朝顔は今日も元気に咲いております。
下五を推敲しつつ、花衣・・下巻へ読みすすめます。
嵌め殺しの窓へ朝顔ひしめけり  信州人
返信する
Unknown (ちわき)
2021-09-01 08:48:35
信州人さん、お早うございます。
こちらはまたちょっと蒸し暑さがぶり返して、爽やかな秋はまだですね。
〈怜悧な青のえぞ紫陽花群れ咲きは旬でした〉…
 これは見たことないですね。やはり信濃の秋は早いのでしょうから…北九州にいた久女が里帰りをしたときなどに見た景かも。その〈怜悧な青〉にいち早く「秋冷」を見て取ったのでしょうか。
〈熊鈴の音色の別れ霧の原〉…
霧と鈴の音色…情緒がありますね。いい雰囲気ですが、〈別れ〉がイマイチかな。
俳句は常に誰が(作者)どこにいて何を見て詠んでいるのかが分かってこないといけません。よく考えてみて!
〈嵌め殺しの窓へ朝顔ひしめけり〉…
原句の〈きそひけり〉と変らないかな。やや主観が消えた分まあこちらの方がいいでしょうがね。
ここで考えてみて!まず〈嵌め殺し〉という語が、意味は別にしても強くておどろおどろしい言葉でしょう。それに〈ひしめけり〉ではどう感じますか?〝苦しい〟でしょう。
例えば〈嵌め殺しの窓へ朝顔手を伸ばす〉と詠むと、イメージはどう変りますか?これも考えてみて…
さて、さていつも激励はしていますが、〝叱咤〟してますかしら?(^0^)
返信する
Unknown (elvisk)
2021-09-01 15:15:44
ちひろさんの大漁 いいね‼︎
返信する
Unknown (ちわき)
2021-09-01 20:22:50
elviskさん、こんばんは!
いいでしょう。声もきれいですし、
この動画の制作もいいと思いませんか。
ちひろさんは以前コンサートでこの歌と違うのを歌われたのを聞いたことがありました。
コメントありがとうございました。
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