昌栄薬品です
薬学博士故渡邊武著 自然とのバランス健康法『わかりやすい漢方薬』
第一章 漢方薬はなぜ効くか
3 身体のバランスを考える
あなたは汗かき型ですか 人間にとってバランスとは、自然に帰ることです。
春夏秋冬の気候や風土に人間が調和することです。
しかし、現代医学では科学という名でバランスが無視されてきました。
漢方は身体の偏りを正常化し、人間のバランスを調和する哲学であり、漢方薬はその調和剤なのです。
先に述べた陰陽虚実説は、漢方のバランスの哲学ですが、この哲学を後漢のころ、もっと実証的にわかりやすく説いたのが「傷寒論」です。
この傷寒論は漢方の原典であり、人間の体質を幾つかのタイプに分類して考えているのです。
人間の体質には、汗かき型と無汗型があります。
つまり、いま風にいえばウェットかドライかということです。
が、この二つのタイプは非常に違いがあるのです。
山陽地方のような乾燥地帯に住む人はドライで、三陰の雨の多い地方に住む人はウェットだとかいいますが、これは大きく地域で分けた場合であり、各個人になるとまたドライかウェットかはいろいろです。
では、どうして二つのタイプを見分けるかというと、手を握ってみて手のひらが湿っているか、乾いているかではっきりわかります。湿っている人は汗かき型なのです。
汗かき型というのは、よく手に汗を握るといいますが、非常に神経質な人です。
仕事をしながら汗をかくのは、皮膚は正常な場合は水分を気体で発散していますが、体内の水分が出し切れないと皮膚から水分を出します。
皮膚表面は、気体で出そうとして血液がどんどん流れていくわけです。
そのため心臓は余分に働き、ちょうど、漏電していると同じことになるのです。
逆に無汗型、ドライな人は、まだ体力があり、皮膚から気体でどんどん出せます。
気体で出すために皮膚の汗腺が閉じたり開いたりしますが、その調節力があるということです。
この場合は身体の水分は、まだ汗で出す余裕があるので、発汗剤で出してやったらいいわけです。
人間は皮膚表面から気体なり液体で放出して、体温を調整していますが、汗かき型は絶えず気化熱で体温を奪っているので、扇風機にかかっているのと同じことになり、寒気がするわけです。
鼻から水分を出せば、鼻で体温を奪っていくのですから、クシャミが出るのです。
その人間の身体の異変の前兆を、手を握ってみることだけでも、汗かき型か無汗型かとらえることができます。
これは漢方でいう証(改善薬の決め手)として重要な要素になるのです。
汗かき型と無汗型で、使用する漢方薬が全然違ってくるのです。
手が湿っている人は気剤で汗を発散させてやればいい。
気剤の代表的な薬に「桂枝」というのがあります。
よく子供のころ、夜店で買って飲んだ肉桂水―しゃぶった肉桂の香りが高くて辛い味―実はこれが桂枝なのです。
桂枝には湿りを乾かして気体で出してくれる効き目があるのです。
反対に無汗型は汗をかかせなければなりません。
その場合桂枝に「麻黄」という薬を加えて使います。
これをまちがって与えると大変なことになります。
湿った人に汗を出させる麻黄を与えると肺炎にならないとも限りませんし、乾いた人に乾かす薬の桂枝を飲ませると、心悸亢進をおこすかもしれません。
店頭で売っている漢方薬にはこの二つの種類、麻黄の入った薬と桂枝の入った薬があります。
女性の婦人病の漢方薬など、麻黄が必要な無汗型の人が、桂枝の入った婦人病薬を飲んだりすると、いつまでも出血が止まらないことがあります。
これはいいかえると、漢方薬が人間の体質に応じて、的確に薬が効くように処方されるということです。
汗かき型と無汗型は、漢方流に理屈っぽくいうと、陽虚証と陽実証ということになり、体質のバランスをみる物差しになってくるのです。
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葛根湯は桂麻剤といって桂枝(桂皮)と麻黄が入った処方で発汗作用があります。
葛根湯証は無汗であることが第一条件です、医師はこのことを無視している方がいます。
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