渡辺武著わかりやすい漢方薬
第二章 漢方はどう診断するか
1 身体の中の熱と冷え
漢方処方の原理
熱性下痢か、冷えによる下痢かを見分けるには、大便を見ればわかります。
便が白ければ、胃や腸に水滞があり、冷えているのだから、冷えによる下痢です。
便が赤く色がついていれば、熱性下痢です。
白ければ辛温の薬を、赤ければ苦寒の薬を、黄色なら甘い薬をと、色が薬を決める手だてにもなっています。
下痢の原因は、熱があって起るか、血証があって起こるか、水滞からきているのか、三つの原則がはっきりしています。
熱があって血証のある熱性下痢の場合は、身体の左上か、右下を調べると、何かの異常があるはずです。
水滞があって冷えによる下痢の場合は、右上半身、左下半身に何かの訴えがあります。
背中を触ってみると、右側がつっているのです。
背中は健康である時は平板ですが、つってくると山のようにもり上がってきます。
漢方にはこうした状態を引き出す決め手があるのです。
排泄される便を見ればもっとはっきりします。
二重にも三重にもテストして確かめているわけです。
胃に炎症がある場合、胃潰瘍であるとか、ゲップや胸やけがするとき、胃の粘膜に炎症が起っているわけですから、胃の薬の寒熱温涼平の分類によって、甘寒の冷やす薬を与えるのが、普通の場合の薬の処方の原理です。
胃が悪いからといって、胃の薬だけを処方するのは、漢方では上工(名医)ではない、素人芸だといわれています。
腸は胃の下にある腑、胃が不消化であれば、腸もまた吸収ができなくて不消化便を出さなければなりません。
胃に原因があり、腸には責任がない、と知らんぷりはできないのです。
必ず腸に負担がかかってくるわけです。
胃が悪ければ胃の薬、次は腸の薬を与えるべきです。
胃の子供は腸、腸の子供は腎臓や膀胱です。
腸が悪ければ腎臓や膀胱に負担がかかってきます。
親が悪ければ子から孫までの三段がまえで、病気を未然に防ぐ、胃が悪ければ胃の薬と腸の薬と膀胱や腎臓の薬を処方するのが、上工の薬の処方といわれているのです。
胃の薬には、心臓の苦い薬か、腸の辛い薬が調合されます。胃病は心臓と腸に関係があるのです。
胃がチャブチャブするということは、腸も水滞になることで、水滞は鼻や口や皮膚の粘膜から気体を出して体温を奪って、血液が胃や腸に回っていない状態です。
胃や腸は冷やされているわけですから、辛温の薬を調合して、温めて中和してやればいいのです。心臓の苦の薬は、胃が炎症を起しているのですから、心臓は熱くなってオーバーヒートしているわけです。苦寒の薬で心臓を冷やしてやるべきです。
これが寒熱の薬の使い分けなのです。
漢方の古書に「上工は未病を治すとは何ぞや」という言葉があると書きました。これは漢方薬の処方の原理といわれています。
その意の底にあるのは、人間の身体の五臓六腑はすべて親子孫の関係にあるということ、未病まで治すには、その身体の家族を総動員して治すということなのです。
p86 渡邊武著わかりやすい漢方薬 1身体の中の熱と冷え 吉益東洞という上工
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先日、白っぽい下痢をしました、ビール・西瓜を飲食して冷えてしまったようです。
桂枝加芍薬湯・藿香正気散を各1包
胃苓湯を4錠を食前に2回服用で治まりました。
もう少し早く治したければ、お湯に溶かし服用すれば早かったかもしれません。
ビールは苦寒
西瓜は甘寒
の薬味薬性があります。
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