渡辺武著わかりやすい漢方薬
第二章 漢方はどう診断するか
2 氣のやまい(気毒症―気滞証)
現代生活はストレスばかり
日本語の「心」というのは、人間の身体のどこをいうのでしょうか。
広辞苑を引いてみると、「人間の心臓の通称となり、更に精神の意味に進んだ。知識・感情・意志の総体」とあります。
漢和辞典では「心臓・胸・もと」とあります。
そういわれると、心臓なのか、内臓なのか、あるいは脳なのか。
形がなくて「ここだよ」と誰も答えられないのではないでしょうか。
漢方では〝気の症〟とか〝気の道症〟というのがあります。
この〝気〟も形のない精神とか神経を指しています。
「気は心」という言葉もありますから、気と心は無形なもので、長さ、重さ、容積などの形以上の物、つまり、現代の科学の物差しでは測れないものという点では一致するわけです。
すると気の症とは神経症のこと、人間の心という、つかみどころのない病気ということになります。
それでは漢方は気をどのようにとらえ理解しているのでしょうか。
気持、気づまり、気になる、気を張る、気性、平気、短気、頭に来る、神経質等々からノイローゼ、自律神経失調症に至るまで、現代人にも常用の言葉がありますが、気が合う、意気投合などは、相互の気が同調し、共鳴することで、漢方ではそればかりか、先に述べた心気から胃気、肺気、腎気、肝気、胆気などと五臓六腑にも気があると説いています。
これを現代人にわかるように解釈すると、今日のメートル法や尺貫法の物差しでは測れない、神経という無形のもので、意志力とか生活力とか生命力というか、もっとはっきりつめて具体的にいえば人間の体表と体裏、つまり皮膚と粘膜の生活リズムが亢進しているか、減衰しているか、正常か異常かということになるかと思います。
禅でよく問われる平常心は、漢方の考え方からは、心の持ち方、精神の在り方を、以上の全身的正常化を以てはかればよいことになると考えられます。
その中でも一番気を発散しているのが、皮膚と鼻・口・気管・肺といった呼吸器と大腸(おならという無形の気体を発生する)です。
このように理解すると、神経性胃潰瘍とか自律神経失調症とかアレルギー体質とかの、近代医薬学的にあいまいな病名の疾患にも、漢方薬は有力な武器として、その改善に有効なことがわかります。
また、生まれつき、体質、気のせい、年のせい、更年期などと医薬の責任範囲外で病人個人の持って生まれた責任といわれたり、不定愁訴などといって顧みられない症状や疾患にも、十分打つ手があることがおわかりになるでしょう。
人間は数日食べなくても生きていられますが、神経を四六時中使いっ放しで、睡眠と休養をとらねば、一週間と生きてられない生物です。
寝ても醒めても気を張りつめていると、神経の失調やアレルギー症状を呈するのです。
手に汗をかきっ放しのウェットな人も、いつも頭をカッカさせて気を放出し、横になって寝ていても、エンジンである心臓を吹きっ放しで空転させ、漏電をしている人たちは、生命力の無駄使い、我と我が身をさいなみ、生命を縮めていることになるのです。
それを正常化し、漏電や空転を排除するのが漢方薬の気剤なのです。
ある有名な雑誌の副編集長のKさんは、ある日、朝起きると頭痛と劇しい吐下痢におそわれて、寝込んでしまいました。締切り間近で、原稿集めや取材の結果が気になって仕方ないのですが、身体に力が入らなくて、肩がこり、全身が疲労して食物も摂れず、その上電車に乗ると、電車がゆれ動くようで不安になってくるのです。
病院で種々の検査をしたわけですが、結果は〝自律神経失調症〟という病名をいただいたというのです。
このKさんの自律神経失調症は、漢方でいういわゆる〝気の道症〟なのです。
この気の病はどうして起るのかというと、現代生活は、神経ばかり使って追いかけ回されているからです。
まず、生活環境や食物環境というストレスは、もう気が許せません。
神経を過剰に使わなければ身動きできない状態にあります。
この環境という外の条件の悪化が第一です。
二番目は内の条件で、人間が食物として摂っている蛋白質が問題です。
蛋白質は生命を造る源です。
日本人は戦後、食生活が変って、大動物から蛋白質を摂るようになりました。
この蛋白質の摂り方にまちがいがあるのです。
食べた蛋白質は消化しなければなりません。
牛の肉や豚の肉がくっつくわけはありません。
だが、人間という動物はどん欲で、食べたら全部消化できると思っているのです。
頭では簡単に消化できると思って食べさせたが、胃や腸は大変な負担がかかって四苦八苦、頭と胃が分裂状態になっているのです。
デンプンとか炭水化物を摂るのとはわけが違います。
生肉をそのまま放置しておけば腐ってくることを考えて下さい。
胃の中だって同じです。
食べた肉を腐敗しないで消化するには、それを補助する調味が必要になってくるのです。
日本人は農耕民族であり、ヨーロッパ人は狩猟民族、ヨーロッパ人は昔から肉を食べてきた民族で、肉を食べる時に、消化を助ける補助剤を食べてきました。
これが各家庭に六十種類はあるといわれるスパイス―香辛料なのです。
漢方でいう気剤のことです。
日本人はこの補助剤の香辛料をたくさん摂る原則を知らないのです。
蛋白質の肉を食べ、魚を食べ、豆腐を食べるときは、必ず胃腸や呼吸器の薬である辛い薬、香辛料を食品につける必要があります。
牛肉などはヘドロを食べているも同然です。
それを消化するには多量の香辛料、漢方でいう気剤は欠くべからざるものです。
日本人に欠乏しているのは、この香辛料です。
香辛料なしで肉を食べて頭脳と胃や腸が発散も消化も助長されないと、いらいらするのは当然のことなのです。
三番目に大きな問題点は、冷暖房による公害です。現代生活は、どこのビルでも夏と冬は冷暖房が効いています。
便利で結構なことだといいたいのですが、自然な人間の身体にとっては、急に外から暖かい所に入ったり、冷たい所に入ると、気ばかり使うことになるのです。
たとえば、夏に冷房の効いたビルに入ると、汗を出していた外とは条件が違ってきます。
逆に外の冷えから身体を守らなければなりません。
もっと詳しくいいますと、人間は下から小便、大便を排泄していますが、この冷暖房の効いた条件だと、上部は暖かく、足もとは冷たいので身体の下に血液が循環しなくて冷えてきます。
すると排泄作用が不十分になってきます。
この排泄できない水分は、どこが代替しているかといいますと、皮膚や口や鼻から出さざるを得なくなってくるのです。
頭から鼻から気を出している状況は、冷えのぼせということで、神経ばかり使っているわけです。
これでは頭の中枢神経というコンピューターの源と、身体の五臓六腑が同調できず、失調せざるを得ません。
日本人はそのさ中に生きているのです。
四番目の最大の原因は、これらの元凶である水分代謝の失調、つまり過量の水分の摂取によっておこる水滞(水毒)ですが、これは項を改めて述べることにします。
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