昌栄薬品です
渡辺武著『わかりやすい漢方薬』第一章 漢方薬はなぜ効くか より
2 現代医学の盲点を救う
p32 薬は病名薬ではない
西洋医学というのは、一方ではペニシリンに代表される抗生物質を生み、他方ではビタミン剤の濫用をつくり出しました。
客観的には性病、肺炎、肺結核、腸チフスやハンセン氏病など、細菌による外的な病気を克服してきましたが、これで人間の病気が片付いたわけではありません。
人間の生命の根源である心臓、胃などの五臓六腑、脳や血管の病気、主体的な人間の身体の病気については多くの問題が山積みされています。
たとえば、内科一つとってみても、確かに細かく分科され研究されています。
最近、専門分野のことならわかるが、その他のことになると我関せず、という医者が多くなりました。
それは西洋医学が、病気の部分の病名を決めるということから進歩してきたことにあります。
医者は病名で専門家され、薬を選ぶ原点も、病名薬と作用薬という二つの分け方で決めています。
医者の診断は病名を決めることなのです。
しかし、同じ病名でも病気は十人十色です。
十把ひとからげに病名薬を与え、風邪だったら咳止めか熱さまし、痛み止めには鎮痛剤という作用薬、この二点からだけで、果たして病気に的確に選べるでしょうか。
薬の解熱とか鎮痛ちかいわれる作用は、近代科学でいう生物活性ということで、動物実験とか微生物の抗菌作用などで発達してきたものです。
しかも動物実験の場合など、人間と同じような症状で病気を起しているのではなく、健康な動物を無理矢理実験に使っているのですから、いわゆる病体薬理ではないのです。
健康体をわざわざ病体と想定しての実験結果なのです。
薬の作用とか効き目は、大ざっぱにそちらの方向の薬であるというだけで、これぞまことの薬と証明されているわけではないのです。
この薬学の常識は、医師にはわかっているようでわかっていない点です。
だから、薬を飲ませて効かなければ大量投与をしてきたのです。
これが薬によって病気をつくってきたいわゆる薬公害です。
これでは素人も同じことです。
情報時代の今日では、うちの孫だって私に「飲まないより、飲んだ方がいい」と薬を教えてくれる時代、簡単な病気の病名なら誰でもわかるし、咳止めや熱さましの薬ぐらいなら素人だって決められるということになります。
こうした間違いが起るのは、病名と作用薬だけで薬を簡単に決めていることに原因があるのです。
近代薬学では作用薬を決めるために、この薬は中枢神経に働く薬とか、各器官臓器に働く薬とか、大腸を調整する薬であるとか、病名や作用によって分類しています。
解熱剤や鎮痛剤や催眠剤は中枢神経の薬です。コンピューターでわかるように、1、2、3、4という番号を付して、1と書いた薬は中枢神経の薬、11と書いた薬は末梢神経用薬であるとか、123は自律神経剤になるとか三連番号であらわします。
これによると、たとえば、心臓病の薬なら強心剤を使ったらいいとか、強心利尿剤がいいということになります。
だが、心臓病の原因が、水分代謝が悪くて心臓が圧迫され、むくみが起ったとしたら、利尿剤で水分を外に出した方がいいということになります。
もっともそれだけでは薬は決められないし、的確とはいえないのですが・・・・。
ところが、総合病院では、薬は薬二千五百種、細かく分けると五千種になるとさえいわれています。
新薬は山ほどあるのです。
医者は病名を決めて、薬の効能書の作用を信じて、どんどん薬を消費します。
どこの病院でも安く仕入れて高く売れる薬が選ばれます。
医者に薬剤がプラスされて、もはや医は仁術ではなくなり、算術になってしまったのが現実です。
漢方薬の場合は、新薬と違って動物実験ではなく、二千年の歴史の中で、人間が薬の効き目や副作用などについて、人体実験をやってきた自然薬なのです。
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