鳥!連続写真!掲載中!

近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

技術・技能・知識の伝承内容その2

2016年08月04日 00時00分01秒 | 紹介

 一般的な技術・技能の伝承はどうであろうか?通常は、時系列を考えれば、退職と同時に後継者が雇用され、前任者との引継ぎである。接触することがなければ、在職者の中で行えばよいし、上司が責任を持てばそれで済む。接触があれば、必要なことを引き継げばよい。この段階で問題となっている後継者の技量が追従できず、退職者が不在となれば生産が落ちるとの危惧である。今までにそのような企業は見たことはないが、個人企業ではあり得ると思うが、企業組織ではありえない。退職は予め退職時期が決まっているし、突然ではないので、十分引継ぎができる機会があるからである。


 企業内訓練の衰退は人材育成にかかる経費を無駄だとする経営者側の問題で、制度として無くなったことで、大問題にはなっていないのは、不思議なことであろう。問題にならないことは、制度が無くても企業が存続していれば、その企業にとって必要なかったのかもしれない。または、すでに自動化機器等の導入が進み、ほとんど業種に関係がない従業員であっても生産できるということなのであろうか、指導者側の問題にも考慮しなければならない。

 

 企業内訓練が衰退した原因として考えられるのは、OJT(オンザジョブトレーニング)による人材育成の限界である。賃金制度の変更は、その原因の一つといわれている。年功序列型賃金制度は、賃金を考慮しなくても先輩後輩の関係が維持できるが、成果・実績型の賃金制度に代わると、先輩後輩関係は崩壊し、指導者対子弟という関係は崩れる。意識的に教えなくなるといわれる。

 

 更には、生産人口の減少であり、時間的な余裕の減少である。生産現場は効率を上げるために極度に数値化され、個別に能力に合わせ、スケジュール管理が徹底されている。ノルマに追われ、生産効率が高められる。場合によれば自動化され無人化を引き起こす。人を介さず24時間稼働する自動化工場は、異様に映る。照明が消えた工場内に作業者は見当たらない。制御室に数人いるだけで、情報管理機器の監視員である。すべての生産工場は無人化まで至っていないが、その傾向は今後も進むであろう。

 

 このような作業環境を想定すれば、もはや後継者育成存続自体の意味を問われるのは至極当然なのである。従来のようなOJTを行うこと自体の意味まで失ったわけではなく、引継ぎ自体の形態、内容が極端に変化してきたといえよう。傾向としては外部人材育成機関の利用や、OFF-JTが主流となっていること、異業種交流、グループ企業、同業他社への出向等の形態を取り入れていることも頷ける。


技術・技能・知識の伝承内容その1

2016年08月03日 00時00分01秒 | 紹介

  では伝承といっても果たして何を伝承するのかという素朴な疑問がわく。新たな人材をどのように育成していくのかは、後継者問題の最終項目である。実際は4W1Hを考慮して対策を取る。伝承は人材育成の方法論に帰着する。伝承の中身を整理しておきたい。

 

 業種、業態が成り立っていくのは、根本には経済原理があり、広くとらえれば、システム全体が含まれる。単に技術や技巧が伝承されれば済むかというと、そうではない。技術や技巧は伝承すべき事柄の一部であるが、材料の加工や製品化は、解明されていない原理原則はほとんどない。再現できないことはないのであり、カンやコツといったものも、解明されていないという人もいるが、果たしてそうなのであろうか。

 

 自分の経験では明確になっていないものを探す方が難しく、それが必要な世界は伝承ができないため、淘汰されるであろう。むしろ、非公開にし、公開されない技術や技巧は、意図的なもので、盗まれれば不利益を生じるなどと考える一部の者のすることと思うが、伝承されなければお蔵入りであろう。技術や技巧が広がることによって、さらなる工夫や、発展ができる世界が広がる。無料のアプリケーションが、誰しも改編できる時代なのである。

 

 秘伝や、口伝の世界はすでに終わっていて、ほとんどの情報はインターネットで検索可能である。最先端技術や、特殊な工法の中には特許や著作権で保護されているものもあるのは確かで、これも永久ではないし保護される期間が50年であれば、その後は誰でも利用可能となる。公開されたとしても、50年後に必要となるような技術がどれだけあるのか疑問である。

 

 実際問題として、近隣諸国の経済発展や、高度技術には、退職者が引き抜かれ、または高級で処遇する等技術流出の問題もあり、企業同士の合併や傘下に入るなど企業ぐるみの争奪戦があるのも事実である。後継者に必要な中身を具体化する意味もないことなので、割愛するが、要は、個人の能力などたかが知れており、大上段に構えて後継者問題を語る必要はないのである。

 

 事務引継ぎとの違いを考えてみたいが、事務職の場合には、書類の保管場所ぐらいのことで、引き継ぎ書1枚で済むであろう。なぜならば、取り扱う書類は定型化されているし、処理方法も規則や規定、要領等があるので、引継ぎにさほど時間がかかるものではない。個人の能力によって、大幅な変更が生じない職種といえよう。


技術・技能・知識の伝承背景その4

2016年08月02日 00時00分01秒 | 紹介

  現状の技術・技能・知識を概観してきたのであるが、切り口からすると、1.企業内訓練の衰退、2.団塊の世代の大量退職、3.非正規労働者の増加、4.賃金制度、5.情報通信技術の進展等が背景にあることをお示しした。これらの切り口が、継承とどうかかわってくるかは、常に変化する制度やシステムが、問題の発生を解消するというベクトルに向かい、新たに登場した新技術を取り込みながら、転換する姿を見ることができる。

 その意味では、問題解決が契機となり、新たな制度やシステムが構築されていくことにつながってくる。

 

 見方を変えれば、川の流れのごとく、高低差が生じれば、流れが生まれ、広がっていくという物理現象に当て嵌めることができるであろう。そこには、停滞は許されず、流れに対しては抵抗となり、またはよどみとなるため、自然の流れに乱れを生じさせ、流れの方向を変える場合もあるが、落ち着くところといえば、高低差がなくなるような動きとなる。

 

 伝統を継承するということの意味は、流れを止めることなく、包含しながら、必要なものだけを後世へ伝えるのであり、そこには淘汰や改廃が常に付きまとうものである。伝統を温存することは変化に対しての抵抗と見ることもでき、歴史として知る必要はあるが、固執することは流れの逆行を意味する。その原則に立ち返って考えるとおのずと結論が出る。

 

 全面否定しているわけではなく、継承ということは単に古くから行われてきたことをそのまま伝えることではない。また、時代背景が異なれば適合しない部分があるのは当然である。継承する時点では取捨選択がなければ次の世代には重荷となり、いずれはオーバーフローしてしまうであろう。技術・技能の継承とは未来を予見し、取捨選択した再生を意味している。

 

 一例をあげると、技能検定という資格制度がある。試験問題に対して、現場との遊離が指摘され、大幅な変更がないまま存続はしているものの、技能オリンピックなどの国際大会でも、課題には相当抵抗があり、課題作成だけに必要とされるテクニックを新たに学ばなければならないというおかしなことが起きている。これも表面に現れた検定の限界を示すもので、かつては主流であった技術や技能が使われなくなった現代に基礎的課題としても、時代錯誤となる可能性を秘める。現実離れした資格試験として注視しなければならない。検定も時間経過とともに疲弊する。陳腐化した技術技能を検定して何になるか疑念がわくが、根本的な改善が望まれている。

 


技術・技能・知識の伝承背景その3

2016年08月01日 00時00分01秒 | 紹介

 博物館、宝物館、伝統資料館等の展示品にふさわしい技術や技能をどのように継承するかは、学術的な意味合いでの修復や、現代産業への衣替え等との可能性が十分採算に合えば、自然と継承できるのであり、国を挙げての助成や、支援が国民の納得がいけば可能性もあるが、単なるノスタルジーだけでは継承は困難であろう。

 

 後継者不足の問題については前者のような、業種の問題と若干異なる面がある。専門技術・技能者が大量に定年を迎え退職したことによって、後釜を補充できなかったこと、企業内訓練が衰退したこと、給与体系が年功序列型賃金から成果・実績型賃金に移行したこと、情報機器や自動化機器に代替えできる時代になったこと等が理由として考えられる。

 

 この問題は、団塊の世代が一斉に退職時期を迎えるという、年齢構成上の問題であり、定年となる前から予測ができた案件である。それに対して、人事部門等が、適切な対応を取ってこなかったという失策を棚に上げた案件であり、その保証をどうするかなど、低次元の問題すり替えである。ついでに言うが、管理ができていなければ、担当者を変えるしかないであろう。要は、退職後の生産部門の体制づくりには十分な時間があり、もし、退職者の都合で継続雇用が不可能であれば、経験者を追加募集しなければならないであろう。

 

継続雇用の拒否は職場環境ではなく、処遇にあると推測できる。通常、労働時間は同じで、基準となる給与が半額となれば、躊躇するのは当然であろう。最近は少しではあるが、退職前の給与と同額を保証するという企業も出てきている。今後は年金との関係で、併給調整は避けられないが、雇用条件は改善しつつある。

 

 他の理由は企業の経営方針であり、技術や技能の継承よりも、企業の人件費削減がもたらした結果といえよう。情報機器の導入は、一種の産業革命で、センサー等の電子媒体や、インターネットがもたらした情報革命の影響である。この影響は、情報技術の高度化による技術者・技能者の能力を高め、人材の質と量を大幅に変えたともいえる現象である。その意味では、従来型の多能工から、情報機器操作や、その成果を知った高度熟練工を誕生させている。少数の熟練工の誕生が、新入社員に対し、教育訓練の機会を無くし、企業内教育訓練の形態を変えることに成功した。その方向は、教育訓練を行わないということである。

 

 これによって、未経験者である非正規社員であっても、十分に対応できる体制となっている。したがって、マンツーマンであった企業内職業訓練が衰退しても、生産が極端に低下するという予想に反して、十分とは言えないまでも、対応が取れているのである。