kebaneco日記

日々の出来事、考えたこと、行った場所、見たもの、なんかを記録してます

青紅葉の都旅 東福寺編

2023年06月12日 | 携帯から(旅先からも)

JR東福寺駅から徒歩で東福寺へ。月下門から境内に入った。月下門は亀山天皇から下賜されたという言い伝えのある、東福寺最古の建築物の一つ。ここをまっすぐ行くと、そこから望む通天橋が美しいとされている臥雲橋。

 

青紅葉まっさかり、その先に小さく通天橋

 

こうやって日差しに輝く青紅葉は、この旅で一番みたかったものでもある。ここまでのびのびと育った紅葉をみられて、すでに幸せな気分。日下門を通って、殿鐘楼と禅堂の間の道を進む。もっと人が多いと思っていたら、拝観受付終了直前で閉門時刻の1時間ちょっと前だったせいか、いい感じで空いていた。

 

さっそく通天橋へ

 

実は朝起きた時に、朝一番はやっぱり東福寺かなぁと思っていた。でもどういうわけか、ホテルをチェックアウトして京都駅に着くまでのあいだに、順番を逆転させて大徳寺から始めようと決めた。それがよかったのかもね〜、なんて話をしながら歩いた。

 

左は方丈の白壁

 

眼下に渓谷の洗玉澗、緑の雲の上に架けられた橋のよう

 

東福寺には何度も来たことがあるのだけど、ここまで人の少ない通天橋は初めて。ある意味独り占めだね〜などと言いながら橋を渡り、せせらぎの方へ階段を降りてみた。サツキの盛りは終わっていて、紫陽花の見頃にはまだはやかった。が、そのおかげで緑のグラデーションが際立つ。

 

通天橋を仰ぎ見るとこんな感じ

 

と、次はもう一つのお目当ての方丈のお庭を拝見することにする。方丈と庫裡は明治時代に再建。方丈には重森三玲によって1939年に完成された、「八相の庭」と名付けられた東西南北の4つの庭がある。八相の庭とは、この4つの庭に配置された蓬莱、方丈、瀛洲(えいじゅう)、壺梁(こりょう)、八海、五山、井田市松、北斗七星の8つを、釈迦の生涯の八つの重要な出来事を指す八相成道にちなんで命名された、とのこと。

 

東庭 円柱は北斗七星に見立てられている

 

南庭 正面に回るのが待ちきれず背後からパチリ

 

写真奥の方から手前に向かって築山の五山と、石組みの方丈・壺梁・蓬莱・瀛洲。4つの石組みは中国の蓬莱神仙思想でいう東の大海の彼方にある仙人が住む島(四仙島)を表していて、その前(右側)に広がるのが八海。

 

南庭 正面の恩賜門と呼ばれる唐門の繊細で美しいこと

 

西庭、井田市松

 

二つ前の写真の奥にある白壁の向こうに広がるのが西庭。サツキの刈り込みが、大きな市松模様になっていて、あまりにも有名な北庭をここから予感させてワクワク。でもその途中に通天台と呼ばれる舞台があり、ここからも通天橋や渓谷を一望できるつくり。落ち着け・落ち着け・と言われている気分(笑)。

 

そして、あまりにも有名な北庭

 

盛り上がって生命力を感じさせるウマスギゴケの緑やエンジと、直線的で無機質な敷石の対比、まんまるに刈られたサツキのユーモラスな佇まい、一つ前の西庭の大きな市松とこちらの小さい市松のつながり、いろいろと楽しい作りになっている。イサム・ノグチはこの庭を「モンドリアン風の新しい角度の庭」と言ったらしい。モンドリアンとは画家のピエト・モンドリアンのことで、多分誰もがみたことがある、画面を大胆に直線で区切って大小の四角を作りそこに赤・青・黄・白といった色で彩色した連作、「コンポジション」という代表作を持つ、新造形主義の19世紀から20世紀に活躍したオランダの画家。鎌倉時代という質実剛健な時代に建てられたお寺に、直線的な市松模様、面白い組み合わせだなぁと思う。でも、モンドリアン風と言われてもなぁ(苦笑)。

 

期待を裏切らないお庭だったね、よかったね〜、と方丈を出て時計を見る。実はもう1箇所行けたら行きたい場所があった。雪舟庭園を持つ芬陀院である。早足で来た道を戻り日下門を出て直進、間に合った。

 

東福寺の塔頭の一つ別名雪舟寺、一條家の菩提寺。さっそく中へ

 

鶴亀の庭

 

禅院式枯山水という様式で、京都で最古の枯山水庭園の一つとされる。奥の石組みは鶴石、折り鶴を表す。手前が亀石、二重基壇で亀の姿を表している。雪舟が幼少期を過ごした備中宝福寺は東福寺の末寺で、雪舟が東福寺に来た時にはこの芬陀院に滞在したと伝えられている。その関係で一條兼良公が所望し、雪舟が作庭した。

 

東庭と図南亭

 

後陽成天皇の皇子にあたる関白一條恵観公は茶道を愛好したことから茶関白と呼ばれ、東福寺参拝の折にはここでお茶を楽しんだとされている。躙口のない貴人好みの茶室。実は最初に到着した時、本来拝観料を払う入り口のところにどなたもいらっしゃらなかった。とりあえず拝見しようと上がって、不用心だね〜などと言いながらしばらくお庭を眺めていたら、人の気配がする。再び入り口に戻ったら若い住職がいらっしゃった。「あ〜よかった、どうしようかと思いました〜」「すみませんでした〜」と拝観料を払ってパンフレットをいただいた。上がり込んでパンフレットまで手にして、っていうのはちょっと憚られたので。でも、内容を読みながら拝見するとまた違って見えるので、本当に良かった。「おかげで何倍も楽しめました」「それはよかったです」というやりとりをしてお寺を後にした。

 

 

雪舟じゃない人が書いたネズミもあった(笑)

 

再び日下門から境内に戻り、今度は三門を目指す。国宝ですからね、しかも2階建ての現存する最古最大の門だという、これを見ないで帰るわけにはいかない。室町時代に再建されているらしいが、楼上部分には明兆とその弟子による極彩画が描かれているという。明兆は本堂の大涅槃図を描いた、淡路出身の画僧で、出家後安国寺に入りのちに東福寺に入った。僧侶としての高い位を目指すのではなく、一生を寺院専属の画家として送った。猫のいる大涅槃図は東福寺の本堂にあるのだけど、残念、公開されるのは春の涅槃会のみ。

 

思遠池の向こうに三門、圧倒される重厚さと潔さ

 

トリビアなネタを仕入れていたあたしは、さらにそこから六波羅門へ。六波羅探題の遺構を移築したと伝えられるもので、最初に東福寺に入ってくる時に通った月下門とともにこのお寺で最も古い建築物とされている。

 

立て看板が残念だけど、左が六波羅門、右奥に三門

 

六波羅門の柱に残るのは

 

足利尊氏の軍に攻められた時の矢傷の跡、歴史を感じまする。これが見たかった(笑)。てなわけで、出たり入ったりしながら閉門時間ギリギリに、このお寺で一番古い門のひとつをくぐって東福寺を出た。今回はお天気にも恵まれて、暑くもなく寒くもなく、行こうと思っていたお寺さん全部見られたし、充実の旅だったね〜、でもちょっと歩きすぎだよね(結局2万歩歩いた)、などと言いながら角を曲がると、最後に素敵な小径が現れた。

 

右は東福寺の壁、左は塔頭の一つの東光寺

 

名残惜しくなるような光景であった。後ろ髪を引かれる思いでゆっくり歩きながら駅を目指す。予約してあった居酒屋は二条城のすぐそば、東福寺駅から京都駅まではJRで、そこからはバスで移動。今回は地下鉄・バス乗り放題カードを購入し(JRは含まれない)、完全に元を取った(笑)。京都はバスが複雑だと言われるけど、スマホのアプリを使えばそうでもない。見たい場所が比較的離れていて、なおかつJR以外の交通機関が主たる移動手段の旅程の場合は、これは便利でお得だと改めて思った。

 

二条城あたりに着くともう夕暮れが迫っていた


 
で、京都最後のご飯を食べて新幹線に乗ったkebaneco一族、今回のやや短かった都旅の日記は以上で終了でござる。次はいつかな?次はどこに行こうかな〜。そのためには軍資金貯めるため仕事頑張るじょ〜、といつもの決意で帰宅したのでありました。

 


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
東福寺 (よう)
2023-06-12 07:15:21
行ってみたいです。
重森三玲は 岡山県吉備中央町(岡山市のすぐ北で 市の西北部にある我が家
から近い)出身です。
宝福寺の方丈の前の庭は 重森三玲の作と看板がありましたが
若い住職の手入れが行届き 美しいです。https://blog.goo.ne.jp/tabasami189/e/a9eb851879658c72cdd691c4de242ae3
田植えが終わったら 京都までとは無理でも 近くの神社参りをして
心を清めたいなあ。
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ようさま (keba)
2023-06-12 23:19:54
宝福寺のエントリー、拝見しました。
お手入れの行き届いた、清々しい美しさですね。
今回拝観した3社はどこも塔頭がいくつもあり歴史もある、大きなお寺です。
でも、宝福寺のような雰囲気のいいお寺にも心を惹かれます。
ぜひお参りして田植えが無事終わったご報告をなさってください。
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Unknown (tsubone)
2023-06-13 00:30:48
台風一過の直後でお天気回復、人出は少な目と、良いタイミングでお出かけできましたね。
青紅葉と素晴らしく端正なお庭。
なんか息詰まるように写真を見ながらスクロールしてたら、雪舟じゃないネズミの絵で力が抜けましたw
モンドリアンの絵、パクらせてもらってタイルに描いて焼成しました。
確かに似てますね。
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Unknown (keba)
2023-06-13 02:14:17
tsubone さま

あたしは新幹線が動かないんじゃ無理だ〜と半ばあきらめてましたが、主人が、予約が取り直せたら行こうって言ってくれたので、ちょいとがんばっちゃいました。
今回行ったお寺プラス二条城と貴船でランチ、の予定だったので、
かなり復元できたなぁと我ながらあっぱれな旅でした。
モンドリアンとモンドリアン「風」、違いを追求するのも面白いかもです。
雪舟のお寺は色んな意味で印象深かったです。
若い住職とのやり取り、雪舟じゃないネズミ😅

実はもう次の旅を画策中(笑)
あまりに旅先での出会いが楽しくて。
でもその前に労働の日々ですぅ〜
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