今日のうた

思いつくままに書いています

教団 X ①

2016-06-09 17:42:42 | ⑤エッセーと物語
中村文則著『教団 X』は、567頁に及ぶ壮大な物語です。
「現在」がふんだんに盛り込まれていて、ここで起きている様々なことが、
まるで現実であるかのような錯覚に陥ります。
「国」というもの、「企業」というもの、そして「人間」というもの、
その底知れぬ怖さを思い知らされます。
そして最後に、ジグソーパズルの数多くのピースがピタッと納まるように、
うっすらとではあるが、希望のあかりが見えてきます。
作者の、今書かずにはいられない強い思いが、読者にビンビン伝わってきます。
心に残った言葉の一部を引用させて頂きます。

(1)NHK不払い運動をしようと思いながら私の一存ではいかず、
   引き落とされた年間一括¥24770の重みを感じていたところ、
   次の提案を見つけ大いに共感を覚えました。

「…日本のことで言えば、NHKを二つに分けたい。NHKは国民の受信料で運営しているから、
 国の権力からも、企業からも本来は独立しているはずなのに、政府の顔色を窺ってしまう。
 もちろん理由はある。
 国民から選ばれた政府の顔色を窺うのは国民の顔色を窺うことと同じという論理。
 でもそれは違う。だからといって、NHKに、政府に攻撃的な放送ばかりさせるのも
 妙だから二つに分けたい。
 一つはこれまでのように公平で安定した報道をするNHK。それにももちろん大きな価値が
 ある。そしてもう一つは、イギリスBBCをもっと推し進めたような、挑発的にスクープを連発
 する先鋭的な国民放送。
 企業の『犯罪』だけを取り上げるのではなく、企業の『犯罪的な利益追求』もきちんと
 取り上げさせる。企業広告と関係のない強力なメディアの出現を望みたい」(引用ここまで)

(これだったら喜んで受信料をお払いします。NHKは是非、お考えください)

※参考までに
 「元NHK職員が『受信料支払いの凍結』呼びかけ 6月10日 週刊金曜日編集部 BLOGOS」

http://blogos.com/article/178957/

(2)私は舛添さんを弁護する気はさらさらありませんし、お子さんのためにも
   早く払うものは払って辞職しては、と思っています。
   ですが、お昼のどのチャンネルを回しても、出てくる出てくる、舛添バッシングの
   凄まじさ。人々にインタビューを繰り返し、ひどいですね~、せこいですね~、
   早く辞めて欲しいですね~のオンパレード。
   東京オリンピック招致の「お・も・て・な・し」の時と同じ、
   国が一色に染められてゆく不気味さを感じます。
   このこととは趣が違うかも知れませんが、「気持ちよさ」について引用させて頂きます。

「今、日本の中に気持ちよくなろうとしている勢力があります。第二次世界大戦の時、日本は
 気持ちよさを求めた。個人より全体、国家を崇めよ。その熱狂の中に身を置くことには
 快楽があった。人々は自分の卑小さを忘れることができ、大きな「大義」を得ることで、
 自分の人生を自分で考えなければならない「自由」という「苦労」から解放された。
 今日本の一部は、あの熱狂を再現しようとしている。

 確かに気持ちがいいでしょう。日本人としての誇りを感じ、例えば何者かを命を懸けるほど
 崇め、国旗に向かって敬礼する。気持ちがいいでしょう。
 ですが、その気持ちがいいという状態は、ほんの少しのきっかけで暴走を生む、
 人類にとって非常に危険な状態なのです。

 ナチス政権下でのドイツで、ハイル・ヒトラーと叫び右手を挙げていた当時の国民達の
 中には、そこに快楽を感じていた者が大勢いたでしょう。人間が陥るあの状態を、
 もう繰り返してはならない。これは日本だけのことではありません。
 昔から現在に至るまで、世界のあちこちでこの気持ちよさは生まれています。

 第二次世界大戦の前から敗戦まで、日本の政権は17回代わりました。でも戦争の
 泥濘の一途を辿った。日本ではシステムが出来上がればもう止めることができない。
 気持ちがいい、という状態をつくった政府は、その気持ちよくなってしまった自分達も
 国民達も止めることができなくなった。いくらトップが代わっても、中ほどにいる気持ち
 よくなってしまっている軍人達は、降伏など考えられなくなってしまった。
 部下達に滅茶苦茶な作戦を命令し続けていた。
 あの戦争において世界中から怒りを買った関東軍の中国での暴走を思い出してください。
 穏健な政治家達もあの暴走を止めることができなかった。
 あの気持ちがいい状態のまま、平和国家としてバランスを保つのは不可能です。

 今の政治家に、そんなバランスを保つ力量があるとお思いですか?
 1億2千万人全てを、丁度いい全体主義の気持ちよさのバランスで永遠に保つなんて
 ことが?また同じように暴走していくだけです。
 あの気持ちよさが復活すれば日本は危険な状態になる。日本人以外を迫害し、
 その気持ちよさに溺れ、また歴史に汚点も残すでしょう、第二次世界大戦の時と同じです。
 一部が暴走し、皆がそれに引っ張られていく。

 我々がしなければならないのは、あの戦死者達を英雄としてではなく犠牲者として
 心から追悼することです。もちろん、あなた達は英雄である、として戦地に行かせて死なせ、
 戦後突然、あなた達は犠牲者だったというのは酷い話です。
 ですが、この酷い話を通過しなければ私達は前に進めない。
 国のトップが代表として、亡くなった兵士達に頭を下げるべきなのです。
 泣きながら彼らに語るべきなのです。
 
 私達は平和を望む。あの気持ちよさを復活させてはならない。だから誠に勝手では
 あるけれども、酷い話ではあるけれども、あなた達をこれから犠牲者として扱いますと。
 私達は、あなた達を英雄として戦地に送り出し、そして犠牲者に変えたことを永久に意識
 し続けると。そしてあなた達をを追悼し続けますと。
 重すぎる教訓として、あなた達の全てを私達は受け止め続けると。
 そしてその代わりとして、その償いとして、我々は世界を平和にすると」 (引用ここまで)
(②につづく)
 


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教団 X ②

2016-06-09 17:39:25 | ⑤エッセーと物語
(3)戦争は正義のためだけにするわけではありません。多くは利権が絡んでいます。
   拡大してゆく日本の軍需産業は、これからどうなるのでしょうか。
   本文の一部を引用させて頂きます。

「我々は、平和平和と連呼する、戦争を望む国々から煙たがられる存在になるべきです。
 じゃあ何か、他国で紛争が起こり民衆が苦しんでいても見捨てるのか。
 これは強烈な意見です。ですが、その『紛争』の裏にあることを考えたことがある
 でしょうか?大国たちの思惑が絡んでいる。巨大化した軍需産業が利益を得、
 戦後の復興で利益を得ようとしている企業達も暗躍している。
 
 私達は表面ではなく、その裏を糾弾する国家でありたい。紛争が起こりそうな地域があれば
 飛んでいって、そのような『紛争』で大国の企業達が利益を得るような状態を防ぐために、
 『紛争』を事前に防ぐ行為をし続けたい。
 我々は平和理念を維持するべきです。我々はそれを理念として掲げ続けなければならない。
 これが変わってしまったら、現在でも大分逸脱している現実の、その歯止めがそれこそ本当に
 利かなくなる。

 もし他国で紛争が起ってしまったら、世界に堂々と主張しましょう。
 この裏には何国と何国の企業がいて、何国と何国がこの紛争で利益を得ようとしていると。
 そんなクズのような連中が背後にいると。背後にいる彼らの動きが止まれば戦争など終わる。
 逆に言えば、背後で動き続ける者達がいる限り戦争は終わらない。

 戦争を現実的に可能にできないシステム作りに尽力するべきです。
 暗躍する軍需産業を野放しにするわけにはいかない。今、この瞬間にも彼らが大量にばら
 撒き続けている武器を何とかしなければならない。
 武器が世界に溢れれば溢れるほど紛争は誘発される。
 裏で小国や武装勢力を操る大国達にも毅然と意見を言わなければならない。

 私は日本は軍を放棄しろなどと生温く無責任なことを言うつもりは一切ない。
 私達はただ先進国に見合うそれなりの軍備を自衛権として保有していればそれでいいのです。
 それだけでも私達の保有する軍備は世界有数のものなのです。
 
 私達は第二次世界大戦の単純な加害者ではない。原爆と民間人の空襲虐殺などを経験した
 被害者でもある。私達は加害者であり被害者でもある特殊な経験をした。
 そんな私達の特殊性を、他の国と同化することで失っていいのだろうか?
 私達のオリジナリティを、失っていいのだろうか?
 スイスが永世中立国なら、日本は平和追及国家になるべきだ。
 私達がこのオリジナリティを失ったらあの第二次世界大戦での膨大な戦死者達の死がそれこそ
 無駄になるのでは?

 私にはそんなことはできない。私には絶対にそんなことはできない。
 私達はあの戦死者の命を思いながら、世界で戦争をなくそうと動く特殊な国になりたい。
 日本は本当はそういう国になるべきなのです。
 大国の指導者達や一部の多国籍企業達は眉をひそめるでしょうが、世界の民衆達は絶大に
 支持するでしょう。
 戦争で被害をこうむるのはいつも我々民衆なのだから。
 戦没者達もそれを望んでいるはず。
 自分達を英雄と見てくれなんて狭い精神の者はいないはず。
 彼らはそれくらい高潔であるはず」 (引用ここまで)

(参院選の前に、「個別的自衛権」と「集団的自衛権」の違いをはっきりさせてください。
 日本が他国から攻撃された場合に、日本が単独で戦うのが個別的自衛権。
 そしてアメリカと一緒に戦うのが集団的自衛権。
 日本は単独では戦えないから、安倍政権が閣議決定した集団的自衛権を認める
 安保法制には賛成だ――この考えは 間違っています !
 しかも間違って覚えている人が、かなり多いのです。

 その原因の一つは、「集団的自衛権」という言葉にあると思います。
 アメリカをはじめとする複数の国と一緒になって、日本も他国の戦争に参戦する。
 これは「集団的他衛権」ではないでしょうか。
 他国のために戦うことは、巡り巡って自国を守ることにもなるという声が聞こえて
 きそうですが、私は言葉のまやかしだと思います。(かなりの切れ者が考え出した?)
 アメリカをはじめとする集団に日本も加わって、他国の戦争に自衛隊を派兵する。
 そのために、これまでは認められなかった「集団的自衛権」の行使を認める安保法制を
 閣議決定した。
 そして憲法違反と言われないためにも、発議に必要な衆参3分の2の議員を確保して
 速やかに憲法改正を行う。
 こう言ってくれたら、間違える人が減るのでは……。
 政治の世界では真実を隠すために、言葉をまやかしに使うことが多いように思う。
 これでは言葉が可哀そうだ!

 自衛のために武器を持つことや自衛隊を持つこと、そして外国からの違法な侵害に対して
 自国を守るためにする武力行使は憲法で認められています。
 これは「個別的自衛権」です。
 安倍政権が閣議決定した「集団的自衛権」の行使は、日本が攻撃されてもいないのに、
 アメリカなどの国と一緒に、海外に派兵して戦うことです。
 アメリカはこれまでに間違った戦争をしています。
 このままいくと、そうした場合にも日本は派兵しなければならない時が来るでしょう。
 当然参戦するのですから、死傷者も出ると思います。

 安倍政権は「歯止め」という言葉を使います。
 これまでは憲法9条が、かろうじて歯止めの役割りをしてくれていました。
 だが安倍政権が進める憲法改正で9条がなくなれば、歯止めはかけられなくなるでしょう。

 モホメド・アリは、ベトナム戦争の時に徴兵されました。
 しかし次の言葉をいって兵役を拒否しました。

 「ベトコンはオレを差別しないし、オレがベトコンを殺しに行く理由は何もない」

 もしあの時に、日本で集団的自衛権の行使が認められていたならば、
 アメリカと一緒になって、日本も南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)と戦って、
 多くの死傷者が出たかもしれません。
 ちなみに韓国は1964年から73年までに、約35万人をベトナムに派兵して、
 約5千人の死者と2万人の負傷者を出しています。

 次の言葉もよく聞きます。
 「アメリカは日本を守ってくれるのに、日本はアメリカが攻撃された時に守らなくて
 よいのか、それではフェアではない」
 しかし「日米安保」により、日本はアメリカに対して多くの基地や多額の軍事費を負担して
 います。それゆえ日本が攻撃を受けた時には、アメリカは日本を守る義務があるのです。
 日本は日本で、個別的自衛権で充分対処できるのです。
 集団的自衛権は、日本が直接関与しない場所での戦闘に巻き込まれることなのです。
 そして、この集団的自衛権の行使を認めたものが「安保法制」なのです。

 憲法を変えてまでアメリカが主導する他国の戦争に、あなたが、あなたの子どもが、
 その連れ合いが、そしてその子どもたちが、行くことになるかもしれないのを
 黙って見ていますか?
 どうせ行くのは自衛隊だから関係ない、と思っているかもしれませんが、
 防衛大学校の任官拒否が、今年は過去最高でした。
 辞めていく自衛隊員も増加の一途をたどっています。
 そうなったら、いつか召集令状が・・・ということも、絶対に無いとは言えないと思います)

 

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選挙行こうよ!! (107)

2016-06-09 17:38:30 | ②一市民運動
(1167)「報道の自由、岸井さん強い懸念 集会で『状況は深刻』
     6月9日 東京新聞 TOKYO Web」

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016060901001739.html

(1168)「安倍首相 『立法府の長』発言を訂正…議事録では行政府 6月9日 毎日新聞」

http://mainichi.jp/articles/20160610/k00/00m/010/049000c

●なんとまあ、セコイことしますね~。
 これではまるで、
 ――返された答案用紙の×の部分を消して模範解答を書き、
    自分で赤丸を付けて点数を改ざんする。
    そして何食わぬ顔をしてお母様にお見せする――ようなものだとは思いませんか?

(1169)「『安保法違憲』関西の713人提訴 平和的生存権を主張 6月8日 
朝日新聞デジタル」

http://www.asahi.com/articles/ASJ6855NTJ68PTIL01L.html

(1170)「日本会議産みの親『生長の家』が安倍政権と日本会議の右翼路線を徹底批判!
     『日本会議の元信者たちは原理主義』 6月10日 LITERA」

http://lite-ra.com/2016/06/post-2325.html

●これは必見です!

(1171)「世界のトヨタを上回る2兆4千億円。原発再稼働の流れに沿って息を吹き返す
      『原発広告』の特殊すぎる実態 6月7日 週プレNEWS」

http://wpb.shueisha.co.jp/2016/06/07/66320/

(1172)「『生活保護』は、働いていても、若くても、持ち家があっても、
     車があっても申請可能です。 2015年 1月18日 THE BIG ISSUE ONLINE」

http://bigissue-online.jp/archives/1017549370.html
               ↓


(1173)「市民連合参院選2016ガイドブッックお申し込み受付開始
     1部20円で10部から申し込めます」

http://shiminrengo.com/archives/913
               ↓




(画像はお借りしました)


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時間

2016-06-09 16:57:55 | ⑤エッセーと物語
堀田善衛『時間』2015年11月17日 第1刷発行 岩波書店を読む。
本文と辺見庸さんの解説の中から、心に残る言葉を引用させて頂きます。

本文より
「戦争は人間を(判断力の未熟な、あるいは欠けた)こどもに還すのかもしれない。
 ひょっとすると、あらんかぎりの獣性を発揮してみせてくれた日兵たちも、
 一人前の判断力の役に立たぬ組織のなかに繰りこまれて、こどもに
 還されていたのかもしれぬ。
 あの、無意味に蛙や魚や蛇をなぶり殺しにして楽しむこどもの残酷さに。

 青年の堕落を鞭うつ声が上がりはじめたら、若者よ、大人たちは戦争の準備を
 はじめているのだ、と思って間違いはない」

解説より
「歴史認識という、おそらく人智のみがなしうるすぐれて高度な思考作業は、げんざい、
 国家間の利害を反映する政治的な行為にすりかえられ、政治利用されることが
 しばしばであり、南京大虐殺にかんしてもまたその例外ではない。
 過去をどうふりかえるのかは、ほんらい政治に統制、左右されるものではない
 にもかかわらず、である。
 それは人間個体それぞれの記憶、回想、想起、記憶、解析、伝承といった潜在力と営為に
 ゆだねられるべきものなのに、げんざいは人間個体をおしのけた国家による国家のための、
 「過去の確定」作業がかつてなくさかんである。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)は2015年10月、中国が申請していた旧日本軍に
 よる南京大虐殺にかんする資料を世界記憶遺産に登録したと発表した。
 中国が「旧日本軍の犯罪」の記録とする歴史資料がユネスコによって「世界的に重要」と
 認定されたことになり、中国指導部は今後、歴史認識をめぐる対日攻勢を
 いっそうつよめそうだという。

 これにたいし日本側は「一方的な主張にもとづき申請されたもので、中立公平であるべき
 国際機関の行動として問題であり、きわめて遺憾だ」「(資料の)真正性に問題がある
 ことはあきらかだ」とする外務省報道官談話を発表した。
 中国側は南京大虐殺の世界記憶遺産入りを対日政治攻勢のテコとし、他方、
 ニッポン側は史実を過小評価して、できごとの真相解明に意欲をしめすのではなく、
 もっぱら中国側の政治姿勢への反発に終始しているようにみえる。
 人智のみがなしうるすぐれて高度な思考作業=歴史認識は、
 いまや政治によってもみくちゃにされている。
 わたしの言う「記憶の危機」とはこのことである」

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