大道寺将司著『最終獄中通信』を読む。
大道寺さんは、三菱重工爆破事件などで死刑判決が出た人だ。
日本の死刑囚は判決が確定すると同時に、家族、弁護人を除いて
友人・知人と交流が出来なくなるそうだ。
そこで「大道寺将司くんと社会をつなぐ交流誌 キタコブシ」が発行された。
そこには大道寺さんの手紙というかたちで、30年間のさまざまな交流や
社会の出来事とそれに対する彼の考え、そして獄中での生活などが描かれている。
何度も書いているが、私は2012年の第二次安倍内閣まで、政治・経済に
全く関心がなかった。新聞も飛ばし読みしていたので、政治や経済、社会の動きに
対しては断片的な知識しかない。
この本では1997年から亡くなる2017年までを、彼の目を通して
日本のさまざまな出来事が見えてくる。
知らなかったことも多く、日本という国を知る上で役に立つ。
何の雑音もない獄中だからこそ見えてくるものがあるようだ。
驚きや発見の文章を引用すると膨大な文字数になるので、その中の一部と
気に入った俳句を引用させて頂きます。
1、ゲバラ忌や小声で歌ふ革命歌
2、独房の点景(てんけい)とせむ柿一個
3、囚人(めしゅうど)の残飯殖(ふ)ゆる油照(あぶらでり)
4、ここでは、ぼくと同じ立場の死刑囚ロバートとのインタビューで気づいたことに触れます。
著者が、「死刑囚でも変わることが断定できる?」と問うと、ロバートは、
「全員とは言い切れない。変われない人だっているさ。
変わらないという選択をみずからする人がかならずいるものだ。」と答えます。
同感です。そしてそれは死刑制度があり、彼(女)が、死刑囚とされたが故に
変われないのだと思います。死刑を宣告されて一切の希望をなくし、
自己変革の意欲を失ってしまうこと、また死刑を受け容れることで自分の犯した
殺人の罪悪感を「消し去って」しまうからでしょう。死刑はそうような思想的頽廃を
もたらすのです。(1999年3月29日)
5、君が代を齧(かじ)り尽(つく)せよ夜盗虫(よとうむし)
6、蟻(あり)地獄後戻りする戦前に
7、余寒(よかん)なほ舎房に響く施錠音(せじょうおん)
8、干蒲団(ほしぶとん)死者に貰(もら)ひし命かな
9、石原慎太郎の「三国人」発言が報じられましたが、失言などではなく確信犯としての
排外主義です。関東大震災の際の朝鮮人大虐殺という事実を知りながら、
「外国人が凶悪事件を繰り返しており、大きな災害時には騒擾(そうじょう)事件が
想定される」から自衛隊の治安出動が必要などというのは、かつての権力者と同じ
発言です。しかも、漫画家やTVキャスターなどではなく、都知事の発言ですから
どうしようもありません。そして、石原が日の丸排外主義者であるのが明らかなのに、
彼を知事に選んだ都民が百数十万人いたわけですからね。
(2000年4月18日)
10、シンキロウ(森喜朗)というのはマッチョなだけかと思っていましたが、
「日本は天皇を中心とする神の国」発言には呆れました。
でも、「第三国人」発言の都知事石原も、ともにかつての青嵐会のメンバーです。
(2000年5月19日)
(※参考までに青嵐会(せいらんかい)の趣意を付け加えます。weblio辞書より)
趣意
1.自由社会を守り、外交は自由主義国家群との緊密なる連携を堅持する。
2.国民道義の高揚を図るため、物質万能の風潮を改め、教育の正常化を断行する。
3.勤労を尊び、恵まれぬ人々をいたわり、新しい社会正義を確立するために、
富の偏在を是正し、不労所得を排除する。
4.平和国家建設のため、平和は自ら備えることによってのみ獲ち得られるとの
自覚に則り、国民に国防と治安の必要性を訴え、この問題と積極的に取り組む。
5.新しい歴史における日本民族の真の自由、安全、繁栄を期するために
自主独立の憲法を制定する。
6.党の運営は安易な妥協、官僚化、日和見化の旧来の弊習を打破する)
11、雨の朝捕へられたる五月(ごがつ)かな
12、生くる日の日課をこなす夜の秋
13、右腕に食器口(しょっきこう)より隙間風
14、凍(い)てゆるむ大地に死者の呻きあり
15、風船の黄泉(よみ)から戻る途次(とじ)ならむ
16、それから、辺見さんは、死刑囚は「記憶に日夜さいなまれる者」であるとお書きですが、
まさしくそうです。娑婆から断ち切れられてしまったのでそうならざるを得ないのですが、
それだけではなく、どうしても記憶を反芻し、それと向き合わないわけには
いかないのです。(2001年4月10日)
17、そのうえで、辺見さんから、タイトルが辞世めく、生き抜いて句を詠み続けよと
叱咤されました。ありがとうございます。安易に刑死に逃げ込むことなく、
死刑と対峙しつづけます。(2001年5月15日)
18、炎天や愚痴をこぼさぬ毛物(けもの)どち
19、雲の嶺絶顚(ぜってん)にして崩れけり
20、小泉がと言うべきか、日本政府がと言うべきか、実に愚かです。
米軍による報復攻撃への自衛隊の支援を宣言し、早速、自衛隊の戦艦が
米空母に随伴しました。あたかも米空母の露払いと太刀持ちであるかのような
自衛隊戦艦の随伴図は、日本が米軍の衛星国、傀儡であることの反映です。
米軍への支援は”主体的判断”であると小泉は強調していますが、
そのように言い立てれば言い立てるほど、日本政府が米国の言いなりになり、
忠勤を励んでいることを物語るものでしかありません。
仮に、主体的な判断だとすれば、米軍に随伴してアフガニスタンなどに
武力攻撃ことが正しいと判断したというわけですから、その根拠をそれこそ
主体的に示すべきですね。コバンザメのように米軍に追従するのは反日感情を
煽ることになるでしょう。 (2001年9月22日) 2につづく
大道寺さんは、三菱重工爆破事件などで死刑判決が出た人だ。
日本の死刑囚は判決が確定すると同時に、家族、弁護人を除いて
友人・知人と交流が出来なくなるそうだ。
そこで「大道寺将司くんと社会をつなぐ交流誌 キタコブシ」が発行された。
そこには大道寺さんの手紙というかたちで、30年間のさまざまな交流や
社会の出来事とそれに対する彼の考え、そして獄中での生活などが描かれている。
何度も書いているが、私は2012年の第二次安倍内閣まで、政治・経済に
全く関心がなかった。新聞も飛ばし読みしていたので、政治や経済、社会の動きに
対しては断片的な知識しかない。
この本では1997年から亡くなる2017年までを、彼の目を通して
日本のさまざまな出来事が見えてくる。
知らなかったことも多く、日本という国を知る上で役に立つ。
何の雑音もない獄中だからこそ見えてくるものがあるようだ。
驚きや発見の文章を引用すると膨大な文字数になるので、その中の一部と
気に入った俳句を引用させて頂きます。
1、ゲバラ忌や小声で歌ふ革命歌
2、独房の点景(てんけい)とせむ柿一個
3、囚人(めしゅうど)の残飯殖(ふ)ゆる油照(あぶらでり)
4、ここでは、ぼくと同じ立場の死刑囚ロバートとのインタビューで気づいたことに触れます。
著者が、「死刑囚でも変わることが断定できる?」と問うと、ロバートは、
「全員とは言い切れない。変われない人だっているさ。
変わらないという選択をみずからする人がかならずいるものだ。」と答えます。
同感です。そしてそれは死刑制度があり、彼(女)が、死刑囚とされたが故に
変われないのだと思います。死刑を宣告されて一切の希望をなくし、
自己変革の意欲を失ってしまうこと、また死刑を受け容れることで自分の犯した
殺人の罪悪感を「消し去って」しまうからでしょう。死刑はそうような思想的頽廃を
もたらすのです。(1999年3月29日)
5、君が代を齧(かじ)り尽(つく)せよ夜盗虫(よとうむし)
6、蟻(あり)地獄後戻りする戦前に
7、余寒(よかん)なほ舎房に響く施錠音(せじょうおん)
8、干蒲団(ほしぶとん)死者に貰(もら)ひし命かな
9、石原慎太郎の「三国人」発言が報じられましたが、失言などではなく確信犯としての
排外主義です。関東大震災の際の朝鮮人大虐殺という事実を知りながら、
「外国人が凶悪事件を繰り返しており、大きな災害時には騒擾(そうじょう)事件が
想定される」から自衛隊の治安出動が必要などというのは、かつての権力者と同じ
発言です。しかも、漫画家やTVキャスターなどではなく、都知事の発言ですから
どうしようもありません。そして、石原が日の丸排外主義者であるのが明らかなのに、
彼を知事に選んだ都民が百数十万人いたわけですからね。
(2000年4月18日)
10、シンキロウ(森喜朗)というのはマッチョなだけかと思っていましたが、
「日本は天皇を中心とする神の国」発言には呆れました。
でも、「第三国人」発言の都知事石原も、ともにかつての青嵐会のメンバーです。
(2000年5月19日)
(※参考までに青嵐会(せいらんかい)の趣意を付け加えます。weblio辞書より)
趣意
1.自由社会を守り、外交は自由主義国家群との緊密なる連携を堅持する。
2.国民道義の高揚を図るため、物質万能の風潮を改め、教育の正常化を断行する。
3.勤労を尊び、恵まれぬ人々をいたわり、新しい社会正義を確立するために、
富の偏在を是正し、不労所得を排除する。
4.平和国家建設のため、平和は自ら備えることによってのみ獲ち得られるとの
自覚に則り、国民に国防と治安の必要性を訴え、この問題と積極的に取り組む。
5.新しい歴史における日本民族の真の自由、安全、繁栄を期するために
自主独立の憲法を制定する。
6.党の運営は安易な妥協、官僚化、日和見化の旧来の弊習を打破する)
11、雨の朝捕へられたる五月(ごがつ)かな
12、生くる日の日課をこなす夜の秋
13、右腕に食器口(しょっきこう)より隙間風
14、凍(い)てゆるむ大地に死者の呻きあり
15、風船の黄泉(よみ)から戻る途次(とじ)ならむ
16、それから、辺見さんは、死刑囚は「記憶に日夜さいなまれる者」であるとお書きですが、
まさしくそうです。娑婆から断ち切れられてしまったのでそうならざるを得ないのですが、
それだけではなく、どうしても記憶を反芻し、それと向き合わないわけには
いかないのです。(2001年4月10日)
17、そのうえで、辺見さんから、タイトルが辞世めく、生き抜いて句を詠み続けよと
叱咤されました。ありがとうございます。安易に刑死に逃げ込むことなく、
死刑と対峙しつづけます。(2001年5月15日)
18、炎天や愚痴をこぼさぬ毛物(けもの)どち
19、雲の嶺絶顚(ぜってん)にして崩れけり
20、小泉がと言うべきか、日本政府がと言うべきか、実に愚かです。
米軍による報復攻撃への自衛隊の支援を宣言し、早速、自衛隊の戦艦が
米空母に随伴しました。あたかも米空母の露払いと太刀持ちであるかのような
自衛隊戦艦の随伴図は、日本が米軍の衛星国、傀儡であることの反映です。
米軍への支援は”主体的判断”であると小泉は強調していますが、
そのように言い立てれば言い立てるほど、日本政府が米国の言いなりになり、
忠勤を励んでいることを物語るものでしかありません。
仮に、主体的な判断だとすれば、米軍に随伴してアフガニスタンなどに
武力攻撃ことが正しいと判断したというわけですから、その根拠をそれこそ
主体的に示すべきですね。コバンザメのように米軍に追従するのは反日感情を
煽ることになるでしょう。 (2001年9月22日) 2につづく