今日のうた

思いつくままに書いています

最終獄中通信 (1)

2018-08-22 06:56:30 | ③好きな歌と句と詩とことばと
大道寺将司著『最終獄中通信』を読む。
大道寺さんは、三菱重工爆破事件などで死刑判決が出た人だ。
日本の死刑囚は判決が確定すると同時に、家族、弁護人を除いて
友人・知人と交流が出来なくなるそうだ。
そこで「大道寺将司くんと社会をつなぐ交流誌 キタコブシ」が発行された。
そこには大道寺さんの手紙というかたちで、30年間のさまざまな交流や
社会の出来事とそれに対する彼の考え、そして獄中での生活などが描かれている。

何度も書いているが、私は2012年の第二次安倍内閣まで、政治・経済に
全く関心がなかった。新聞も飛ばし読みしていたので、政治や経済、社会の動きに
対しては断片的な知識しかない。
この本では1997年から亡くなる2017年までを、彼の目を通して
日本のさまざまな出来事が見えてくる。
知らなかったことも多く、日本という国を知る上で役に立つ。
何の雑音もない獄中だからこそ見えてくるものがあるようだ。
驚きや発見の文章を引用すると膨大な文字数になるので、その中の一部と
気に入った俳句を引用させて頂きます。

1、ゲバラ忌や小声で歌ふ革命歌

2、独房の点景(てんけい)とせむ柿一個

3、囚人(めしゅうど)の残飯殖(ふ)ゆる油照(あぶらでり)

4、ここでは、ぼくと同じ立場の死刑囚ロバートとのインタビューで気づいたことに触れます。
 著者が、「死刑囚でも変わることが断定できる?」と問うと、ロバートは、
 「全員とは言い切れない。変われない人だっているさ。
  変わらないという選択をみずからする人がかならずいるものだ。」と答えます。
 同感です。そしてそれは死刑制度があり、彼(女)が、死刑囚とされたが故に
 変われないのだと思います。死刑を宣告されて一切の希望をなくし、
 自己変革の意欲を失ってしまうこと、また死刑を受け容れることで自分の犯した
 殺人の罪悪感を「消し去って」しまうからでしょう。死刑はそうような思想的頽廃を
 もたらすのです。(1999年3月29日)

5、君が代を齧(かじ)り尽(つく)せよ夜盗虫(よとうむし)

6、蟻(あり)地獄後戻りする戦前に

7、余寒(よかん)なほ舎房に響く施錠音(せじょうおん)

8、干蒲団(ほしぶとん)死者に貰(もら)ひし命かな

9、石原慎太郎の「三国人」発言が報じられましたが、失言などではなく確信犯としての
 排外主義です。関東大震災の際の朝鮮人大虐殺という事実を知りながら、
 「外国人が凶悪事件を繰り返しており、大きな災害時には騒擾(そうじょう)事件が
  想定される」から自衛隊の治安出動が必要などというのは、かつての権力者と同じ
 発言です。しかも、漫画家やTVキャスターなどではなく、都知事の発言ですから
 どうしようもありません。そして、石原が日の丸排外主義者であるのが明らかなのに、
 彼を知事に選んだ都民が百数十万人いたわけですからね。
 (2000年4月18日)

10、シンキロウ(森喜朗)というのはマッチョなだけかと思っていましたが、
  「日本は天皇を中心とする神の国」発言には呆れました。
  でも、「第三国人」発言の都知事石原も、ともにかつての青嵐会のメンバーです。
  (2000年5月19日)

(※参考までに青嵐会(せいらんかい)の趣意を付け加えます。weblio辞書より)
  趣意
 1.自由社会を守り、外交は自由主義国家群との緊密なる連携を堅持する。
 2.国民道義の高揚を図るため、物質万能の風潮を改め、教育の正常化を断行する。
 3.勤労を尊び、恵まれぬ人々をいたわり、新しい社会正義を確立するために、
  富の偏在を是正し、不労所得を排除する。
 4.平和国家建設のため、平和は自ら備えることによってのみ獲ち得られるとの
  自覚に則り、国民に国防と治安の必要性を訴え、この問題と積極的に取り組む。
 5.新しい歴史における日本民族の真の自由、安全、繁栄を期するために
  自主独立の憲法を制定する。
 6.党の運営は安易な妥協、官僚化、日和見化の旧来の弊習を打破する)

11、雨の朝捕へられたる五月(ごがつ)かな

12、生くる日の日課をこなす夜の秋

13、右腕に食器口(しょっきこう)より隙間風

14、凍(い)てゆるむ大地に死者の呻きあり

15、風船の黄泉(よみ)から戻る途次(とじ)ならむ

16、それから、辺見さんは、死刑囚は「記憶に日夜さいなまれる者」であるとお書きですが、
  まさしくそうです。娑婆から断ち切れられてしまったのでそうならざるを得ないのですが、
  それだけではなく、どうしても記憶を反芻し、それと向き合わないわけには
  いかないのです。(2001年4月10日)

17、そのうえで、辺見さんから、タイトルが辞世めく、生き抜いて句を詠み続けよと
  叱咤されました。ありがとうございます。安易に刑死に逃げ込むことなく、
  死刑と対峙しつづけます。(2001年5月15日)

18、炎天や愚痴をこぼさぬ毛物(けもの)どち

19、雲の嶺絶顚(ぜってん)にして崩れけり

20、小泉がと言うべきか、日本政府がと言うべきか、実に愚かです。
  米軍による報復攻撃への自衛隊の支援を宣言し、早速、自衛隊の戦艦が
  米空母に随伴しました。あたかも米空母の露払いと太刀持ちであるかのような
  自衛隊戦艦の随伴図は、日本が米軍の衛星国、傀儡であることの反映です。
  米軍への支援は”主体的判断”であると小泉は強調していますが、
  そのように言い立てれば言い立てるほど、日本政府が米国の言いなりになり、
  忠勤を励んでいることを物語るものでしかありません。
  仮に、主体的な判断だとすれば、米軍に随伴してアフガニスタンなどに
  武力攻撃ことが正しいと判断したというわけですから、その根拠をそれこそ
  主体的に示すべきですね。コバンザメのように米軍に追従するのは反日感情を
  煽ることになるでしょう。 (2001年9月22日)   2につづく



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最終獄中通信 (2)

2018-08-22 06:55:47 | ③好きな歌と句と詩とことばと
21、アフガンの秋農民の瘠せ骸(むくろ)

22、寒星(かんせい)や難民の子のひた見詰め

23、有事法制関連三法案が閣議決定されました。これは戦争をするための法律です。
  政府・与党は「戦争のできる国」作りのための布石を着々と打ってきましたが、
  有事法制はその仕上げというべきでしょう。であればこそ、この法律はなんとしても
  つぶさなくてはなりません。これまで負け続けてきたが故になおのこと。
  有事法に賛成の”識者”は、「戦前に戻ることはありえないから」などとおめでたい
  ことを言ってましたが、戦前に戻らなくても戦争は出来ます。なんでもアメリカの
  ようになればいいと思っているのでしょうが、そのアメリカは最も好戦的な侵略国
  であることをわかっているのでしょうか。(2002年4月17日)

24、ふりむけば白虹(はっこう)今し立ちあがる

25、往古より鳴き継がれたる蝉の声

26、窓狭き古き囚獄(ひとや)を西日責む

27、また5人の閣僚が靖国神社に参拝したようです。どんなにきれいごとを並べても、
  かつての天皇制軍国主義を懐かしみ、美化することにほかなりません。
  死者を悼むのであれば、千鳥ヶ淵の戦没者墓苑で行えばいいのですから。
  靖国神社は、あらゆる価値を天皇に一元化する近代天皇制の成立とともに、
  天皇のために忠死した戦没者を神として祀り、顕彰する招魂社から成ったものですが、
  境内で競馬や大相撲の興業が打たれるなど実に俗な場だったことを
  参拝者たちは知っているものやら。(2002年8月15日)

28、空つかむごとからびたる油蝉

29、永六輔氏が、拉致に関連して、「向こうが認めたとき、小泉さんも『むかし
  日本も申し訳ないことをしました』と訴えるべきだった」とラジオ番組で話したら、
  けしからんと反響が殺到したとか。永氏の感覚は実にまっとうなものです。
  この程度の発言さえも認めないというのでは、あまりに視野狭窄です。
  一連の北朝鮮関連報道で誰よりもいたたまれぬ思いをしているのは、
  北朝鮮の現体制を支持するしないにかかわらず、在日の人々であるに
  違いありません。在日の子どもたちを襲撃したり、脅迫するような者たちは
  どうしようもないかもしれませんが、永氏に抗議するTVや新聞で煽られた”正義派”
  には、そのことをよく考えてもらいたいものです。(2002年10月23日)

30、いなびかりせんなき悔いのまた溢(あふ)る

31、死はいつも不意打ちなりし十二月

32、紙小屋に吾も寝(い)ねけむ虎落笛(もがりぶえ) 
                ※紙小屋は野宿する場所のようです。

33、文科省は、インターナショナルスクールの卒業生には大学受験資格を与えるが、
  朝鮮学校や韓国学校などの民族学校の卒業生には受験資格を与えない
  方針とか。愛国教育を推し進めようとしているのだから民族学校を差別して
  構わないということか。アメリカの顔色ばかり窺う外務省に右へならえということか。
  腹立たしいことです。民族学校に通う子どもたちのほとんどは日本で生まれ、
  卒業後も日本で生活します。それなのに受験資格を与えないのは政治的な
  差別以外の何物でもありません。民族学校に通う子どもたちに対する差別や
  迫害をやめさせるべき立場にある者たちが率先して差別するのですから、
  一体なんという国なんでしょうか、日本は。(2003年2月21日)

34、うつろひて高みに消ゆる朧月

35、揺れやまぬ生死(しょうじ)のあはひ花芒(はなすすき)

36、風音(かざおと)の慟哭となり春逝けり

37、青簾(あおすだれ)向かうに若き母の居て

38、一塊の雲に気息(きそく)や秋めきて

39、枕辺に手擦(てずれ)の文庫寒昴(かんすばる)

40、人体のごと綿雪の墜ちゆけり

41、朝日新聞が、NHKが自民党の安倍晋三、中川昭一両議員の圧力で教育テレビの
  放送内容を改変したと報じたことに対し、NHKのラジオニュースは、捏造だという
  安倍の発言も含め、長々と反論コメントを流しています。件の教育テレビとは、
  旧日本軍の慰安婦制度の責任者を裁く「女性国際戦犯法廷」を取り上げ、
  戦時性暴力が「人道に対する罪」として問われるようになった歴史的な流れを
  追ったものということですから、安倍や中川は当然にもクレームをつけたことで
  しょう。そして、NHKの体質からして彼らに屈するのは目に見えています。
  内部告発者の存在とその発言内容については触れないことと合わせ、
  NHKの朝日批判、反論は信用できません。(2005年1月17日)

42、あやまちし人の視線や寒の闇

43、たまゆらの震(ふる)へ青葉の歓喜かな

44、胸底をますほに染むる遠花火  ※ますほ(真赭)=赤い色

45、ぼくも写真のお墓に合掌しましたが、墓誌の「昭和四十九年八月三十日
  三菱重工爆破事件に遭遇し歿す」と刻まれた文字から目が離せませんでした。
  胸が塞がる思いです。
  「加害者は自分の行為によって自己実現をしたのである。しかし、犠牲者のほうは、
   自己実現を望んできたとしても、またいまも望んでいるとしても、加害者の
   行為によってその可能性を奪われている」。これは、『失われた記憶を求めて』に
  引用されているヴォルフガング・シュミットバウアーの言葉ですが、
  被害に遭われた方々の無念さと向き合い続けなくてはなりません。
  (2005年9月15日)  3につづく



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最終獄中通信 (3)

2018-08-22 06:55:24 | ③好きな歌と句と詩とことばと
46、新閣僚の就任会見で死刑の執行印を押さないと発言し、1時間後に
   前言を撤回した杉浦法相は、翌日、親鸞の悪人正機説「善人なほもて往生をとぐ、
   いはんや悪人をや」をあげて、改めて「(死刑囚であっても)命を奪うことは
   許されぬ」と述べたそうです。
   法務官僚は言うに及ばず、死刑在置派からの抗議や非難が集中したでしょうに、
   それでもこうした発言をするというのは彼の信念がなまなかのものではない
   ということです。何とか法相在任中、その信念を貫いてもらいたいものです。
   そして真に改革の名に値すべき死刑廃止に向けて一歩でも進めて
   もらいたいものです。(2005年11月17日)

47、花冷えや罪業(ざいごう)てふ身の火照(ほてり)

48、東京都教委は、公立学校の卒業式で「日の丸」に向かって起立し、
  「君が代」を斉唱するという職務命令に違反したとして教職員33人を懲戒処分
  しましたが、こんなことで停職3か月とか1か月という人がいるのですから
  常軌を逸しています。
  「国旗、国歌法」成立時、政府は教育現場で強制はしないと言っていたのに、
  この有様です。今、政府、与党は「教育基本法」を改定し、「愛国心」を含めよう
  としています。その行きつく先がどうなるか今から見えるではないですか。
  「愛国心」を物差しにして教師や生徒を評価し、また、在日の人たちには一層の
  生き難さを強いるものになるでしょう。
  政府、与党の偏狭なナショナリズムはどうしようもない。(2006年4月12日)

49、共謀罪の件で、せめてフランスの10分の1くらいの規模のデモがあって
  しかるべきではないだろうか、新聞だって遅まきながらその問題が明らかにされて
  いるのにと言ったら、今の学生はほとんど新聞を読んでいないのだとか。
  早大ではビラ撒きで、法大では立て看板取り付けで逮捕される時勢だから、
  せめて新聞ぐらい読んでくれないと。デモひとつだになきぞかなしき、です。 
  (2006年5月12日)

50、刑事裁判に信頼が置けるとは到底言えないし、ひとたび死刑判決を受けたら
  その判決を覆すのは至難の業ですが、だからといって諦めなくてはならないと
  いうことにはなりません。
  冤罪という、あってはならないことに対して、死力を尽くして立ち向っていくべきです。
  そうでなくては光明を見出すことはできないでしょうし、4人の元死刑囚の
  無罪出獄こそ何よりもそのことを証しています。(2006年5月)

51、朝日新聞によると、日中戦争で捕虜になった中国人兵士(国民党軍も
  共産党軍も)を中国東北部(満州)に連行し建設現場で、「特種工人」として
  働かせるため、旧日本軍が1943年に作成した極秘の取扱規定が見つかったとか。
  賃金を各部隊が一括保管して本人に支払わないことを明記するなど、
  中国人強制連行、労働の実態を明らかにするものです。
  折しも、自民党では、強制連行、労働についての「河野見解」の見直しをする、つまり、
  国として責任を負うべきものはなかったとする動きがあると報じられていますが、
  今回発見された文書は、そうした姑息な侵略、強制連行隠しを厳しく批判するもの
  になるでしょう。(2007年1月8日)

52、ひとゆるぎして凍雲(いてくも)の溶けはじむ

53、日本の植民地支配に抗して朝鮮民衆が蹶起(けっき)したのは1919年の
  今日でした。それだからでもあるのでしょうか。当時の朝鮮軍司令官だった
  宇都宮太郎大将の日記、書簡などが公表されたとか。日本兵が30人の朝鮮人を
  教会に閉じ込めて虐殺し、証拠湮滅のために焼いた堤岩里事件について、
  宇都宮日記はその事実を認め、しかしながら影響を考慮して、否認、隠蔽を決めた
  経緯などが綴られている由。第一級の資料と言えるでしょうか。
  堤岩里事件について実際がどうだったかについては既に知られていますが、
  この国では学者も政治家も、強制連行はなかったし、従軍慰安婦は「つくりごと
  などと繰り返し公言し、それがまかりとおるだけに、宇都宮日記の持つ意味は
  小さくないでしょう。(2007年3月1日)

54、頽(くづ)ほれし杭(くい)の墓標や雪しまき

55、民草を国家屠(ほふ)るや春の塵

56、当年の芽立ちも知らず逝きにけり

57、病み伏しの狭き視界や霜の朝

57、国連人権高等弁務官は、日本政府に対し、事前に本人や家族に執行が知らされて
  いないことは非人道的であり、75歳の池本さんの執行は正当化できないと
  批判し、そのうえで、死刑執行の停止を求める声明を出しました。
  鳩山法相は死刑は内政問題だと躱(かわ)しましたが、国際社会からの批判には
  真摯に向き合うべきです。
  死刑執行の速やかな停止を!(2008年2月) 4につづく



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最終獄中通信 (4)

2018-08-22 06:55:06 | ③好きな歌と句と詩とことばと
59、ふくろふの目瞑(つむ)りて風を生ましむ

60、草萌(くさもえ)や死の告知めく病舎入り

61、告知受け骨の軋めく春の霜   ※2010年4月多発性骨髄腫と診断された

62、目蓋(まなぶた)を過(よ)ぎる茂りのひかりかな

63、闘癌の浅き眠りの長き夜

64、寒明けの屋根の軋みや雪深く

65、揺れ強く壁鳴り止まぬ浅き春   ※2011年3月11日

66、父母の死を知らざる女児や鳥帰る

67、瘠せ犬の霧の果てより現はれぬ

68、元オウムの平田容疑者が出頭したことを報じるメディアの論調、憶測で気になるのは、
  メディアが、記者が、国家を背負っているかの如くに思えることです。
  3・11後の報道にも見られたけれど、国家の意志をメディアが代弁するのは違うのでは
  ないでしょうか。憶測してもいいし、メディアとしての主張をするのもいいけれど、
  国家意志を代弁することとは明確に一線を画すべきでしょう。
  (2012年1月19日)

69、大阪の教職員は、君が代を歌っているかどうか口の動きまで監視されているとか。
  ものすごいことになっています。うそ寒いというより怖い。まさにハシズムです。
  大阪の人たちは、こんな状況を望んでいたのだろうか?ハシモト人気に乗ろうとして
  いる有象無象の諸君は、口の動きまで監視する全体主義の尖兵になろうと
  いうのだろうか?
  しっかり目を見開き、よく考えてもらいたいものです。
  (2012年4月6日)

70、きれぎれの一生涯よひこばゆる    ※ひこばゆる=ひこばえる

71、NHKには「なぜテロリストの番組を作ったのか」と抗議が殺到しているとか。
  内容を知って、そうなるのでと危惧していました。
  鈴木君はNHKで放送された翌日に用事で太田出版に行ったところ、
  大騒ぎになっていたという。
  太田出版にも抗議電話などが来ていたのでしょうか。
  太田出版とNHKの番組制作スタッフには申し訳ないことです。
  昨日は昌国さんに「外出中に殴られたりしないですか」と尋ねたけれど、
  辺見さんも心配だな。無言電話以上のことをする者が現れないことを念じます。
  (2012年4月19日)   ※放送の内容については72に載っています

72、「失われた言葉をさがしてーー辺見庸 ある死刑囚との対話」の台本と、
  その放送を見て
  寄せられた感想を読み、感激しました。面会で断片的に内容を知らされていましたが、
  ここまで踏み込んだものとは。「よくぞNHKが」という感想がありましたが、
  ETV特集は原発のこともやっていますから、NHKの良心というべきなのでしょう。
  NHKのOBが、ぼくに対する批判を踏まえつつ「よくやった」とディレクターもSさんを
  はじめスタッフを評価していますが、NHKにも骨のある人たちはいるということです。
  (2012年5月10日)

73、ゴビンダ・プラサド・マイナリ元被告の再審開始と無期刑の刑執行停止が
  認められましたが、当然ですね。遅すぎました。ゴビンダ被告がネパール人だという
  差別意識も背景にあったのでしょう。
  この件に限らずですが、警察と検察は一度犯人と決めつけたら、証拠隠しを
  してまでも無実の者を犯人に仕立て上げます。前田検事だけの問題ではない。
  組織的な体質というのか、怖いですね。
  まだまだ、ほかにも今回のケースと同じことがあるでしょう。(2012年6月8日)

74、贖物(あがもの)は身ひとつなり断腸花(だんちょうか)  
                    ※断腸花=秋海棠(しゅうかいどう)

75、三菱重工を爆破した日です。被害者、遺家族の方々に、そして負傷された方々に、
  心から謝罪します。なぜ当時、止めることができなかったのか、加害者である
  ぼくが生き続けている意味も考え続けています。ぼくが害した方々に深く
  哀悼の意をささげます。(2012年8月30日)

76、領土領海国難愛国おけら鳴く

77、アベシンゾウは4月28日に主権回復の式典を開くという。この男には日本が
  米軍に占領されていた過去の知識はあっても、日本政府や
  軍(アベの祖父が政府高官だった)が他国を侵略し、植民地支配していた知識は、
  ”都合よく”欠けているようです。また、その日は沖縄が米軍統治下に置かれた日
  だということも、”都合よく”忘れています。アベの仲間で支持者でもある右翼と
  思われる者たちは、沖縄の自治体首長たちが都内でデモをしたとき、「日本から
  出て行け」と罵声を浴びせたようですが、よくもまあそんなたわごとが言える
  ものです。喜んで出て行ってはどうですか。
  (2013年3月6日)

78、ローマ法王に選出されたベルゴリオ枢機卿(フランシスコ1世)は、就任ミサで
  「飢える者、渇く者、土地になじめぬ者、守られぬ者、病める者、獄にある者を守る」
  と誓ったと報じられています。獄中者に言及した法王など、
  かつていたのだろうか?(2013年3月21日)

79、蛇穴(へびあな)を出(い)づるゆくたて忘(ぼう)じけり

80、加害せる吾(われ)花冷えのなかにあり    5につづく



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最終獄中通信 (5)

2018-08-22 06:54:44 | ③好きな歌と句と詩とことばと
81、漕ぐ人もなき鞦韆(しゅうせん)の揺れにけり

82、橋下徹は従軍慰安婦は必要だったという自分の主張を正当化するため、
  米国も韓国も戦地で女性を性的に利用したと言っています。そうだとしても
  従軍慰安婦が必要だったとなぜ短絡的に結びつけられるのか。軍隊が、戦争が、
  女性を性的に犠牲にするものならば、軍隊や戦争など必要なくすると考えるべき
  ではないか。まして従軍慰安婦は植民地支配をしていた日本の官民が結託して、
  朝鮮の女性たちを犠牲にしたものなのだから。(2013年5月21日)

83、さみだるる被曝の闇の歪みをり

84、自民党政調会長の高市が「原発事故による死亡者は出ていない」と放言したことを
  撤回するとか。原発再稼働や原発輸出に支障が出るからか。姑息に撤回など
  しないで本音を吐いて居直ればいいのに。そして、アベ政権ごと沈没して
  もらいたいものだが。(2013年6月20日)

85、東京電力は高濃度汚染水を海に放出していたことを選挙が終わってから
  明らかにしました。今ごろ認めるかなぁ。東京電力の現場では、日夜廃炉に向けて
  働いている人たちがいる一方で、データを隠し、公表を遅くしたり、しなかったりの
  本社の幹部連中がいる。この本社に巣くう連中は、原発事故を今も他人事に
  考えているのではないだろうか?(2013年7月31日)

86、「英霊」を量り売する残暑かな

87、改憲や秘密保護法についてのアベシンゾウをはじめ政府、与党の底の浅い
  言説に接すると、反天皇派のぼくでも現在の天皇、皇后の認識(彼らは政治に
  関わる発言はしないようにしているが)の方が、至極まっとうなものに思えます。
  (2013年10月24日)

88、山本太郎が脱原発の思いを認めた手紙を天皇に渡したことを批判する人たちが
  いますが、アベ内閣が行ってきた、それこそ天皇(皇族)の政治的利用を批判しないで
  よく言えるものです。これまで山本太郎のような行動をしなかったことこそ
  問われるべきでしょう。(2013年11月1日)

89、特定秘密保護法について、政府与党は、報道の自由や知る権利は侵さないと
  言っていますが、そんなことを言っている大臣や党の幹部は、あと10年か20年
  したらいなくなってしまうでしょう。しかし、悪法は残ります。
  日の丸、君が代がそうでしょう。
  この法律の制定時、自民党政権は「強制はしない」と公言していたのに、
  現在はとんでもないことになっている。東京や大阪などの教育現場では強制以外の
  何物でもありません。アベシンゾウの趣味になる悪法は成立させてはなりません。
  (2013年11月6日) 

90、秘密保護法案の強行採決を見ると、自民党はナチ党かと思ってしまう。
  審議や公聴会はアリバイのようなもので初めから結論ありき。公明党と
  みんなの党は下駄の雪か。実に許し難い。(2013年11月27日)

91、狼のこゑ塵中(じんちゅう)に渡りきぬ

92、枯野ゆくひとり憤怒(ふんぬ)を携(たずさ)へて

93、安倍晋三が靖国神社を参拝したとか。最近は夜のNHKニュース(昼のニュースの
  録音)を聞いていないので、今朝新聞を見るまで知りませんでした。
  靖国神社に参拝して”平和”を口にするなど阿呆というほかありません。
  党幹部が「もう誰も止められない」と発言したそうですが、近隣の三代目かと
  思ってしまいます。短慮と愚かさはぼくも人後に落ちませんが、安倍には負けます。
  靖国神社へのこだわりは国家神道=神社神道への回帰指向としか言いようがない
  のではなかろうか。(2013年12月27日)

94、蒼氓(そうぼう)の枯れて国家の屹立(きつりつ)す

95、癌を飼ふ身を寒中に晒し置く

96、目の冴ゆる寒夜のなんと長きこと

97、翳(かげ)りゆく路地に声なく春を待つ

98、アベシンゾウの暴走が止まりません。改憲などというまだるっこしいことはせず、
  閣議決定で憲法解釈の変更を行うと言っています。なぜ集団的自衛権が
  必要なのかの理由として周辺環境の変化を挙げていますが、危険な状況を
  外交努力などで回避、解消するのが政治家の、とりわけ内閣総理大臣の務めなのに、
  アベをはじめその側近たちは自分たちで挑発的な言動を繰り返して周辺環境の緊張を
  高め戦争ができるようにしようというのだから、短絡的であさはかと言うほかありません。
  東京がウクライナのキエフやタイのバンコクのような反政府闘争の場になっても
  おかしくない状況なのに、日本の皆様はおとなしすぎるのではありませんか。
  それとも戦争なんてあり得ないと信じているのでしょうか。(2014年2月21日)

99、薄氷(うすらい)を茜の空に染めにけり   6につづく
   


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最終獄中通信 (6)

2018-08-22 06:54:25 | ③好きな歌と句と詩とことばと
100、余寒なほ股(もも)に残りし注射跡

101 袴田巌さん出獄
  ほしいまま総身(そうみ)に浴びよ春夕焼(ゆやけ)

102、春愁や巷(ちまた)に充(み)たぬ反戦歌

103、麦秋の恥を知らざるかたちかな

104、北朝鮮がミサイルを発射したようですが、解釈改憲で集団的自衛権を強行しようと
  している安倍政権への援護射撃かと勘繰りたくなるタイミングです。
  中韓関係が濃密になるなか、日朝関係での対抗か?!
  金正恩と安倍晋三には類似点が多いし。(2014年7月1日)

105、暗闇の揺れて蛍の炎(ほむら)立つ

106、今月のはじめの朝日新聞が従軍慰安婦の件で、一部誤報があったと検証記録を
  載せたことで、アベ周辺、自民党の高市、サンケイ、読売、週刊文春・新潮・
  ポストなどは鬼の首を取ったかのように”従軍慰安婦に強制性はなかった”の
  だから河野談話も変更すべきだと言い出しています。しかし、仮に当時の軍隊や
  警察が直接強制的に連れ出したのではなかったとしても、そうした権力と結託した
  業者に”雇われて”出かけたら慰安所だったという場合も、広義の強制性です。
  現状でもひとたび権力がやると決めたことに抵抗、反対することは難しいと考える
  人たちが多いのだから、植民地下での朝鮮であればなおのことではないか。
  そんなことも想像できないのかと言いたくなる。それに、従軍慰安婦そのものが
  なかったかのような主張まで登場するのは、何をか言わんやです。
  (2014年8月28日)

107、戦争を秘むる師走の選挙かな

108、ノッカマップに散り敷く枯葉群れ立てり 
                  ※ノッカマップ=蜂起したアイヌが虐殺された岬

109、冬の雁(かり)こゑをひとつに渡りけり

110、水馬(あめんぼう)描く容(かんばせ)消え残る

111、雨滴押す蟻(あり)の手足(しゅそく)に力みなし

112、をさならの声わらわらと梅雨晴間

113、深更(しんこう)の看守呼ぶこゑ梅雨寒し

114、戦場の水母(くらげ)もひとつづつ消えぬ

115、 戦争法案
   反対を躊躇(ためら)ふ人はなに恐るるや

116、参院でも強行採決とか。予想されたことではあるけれど残念です。戦争法を
  推進、賛成、支持する自民党や公明党の議員たちは、米国に従っていけば
  中国に対抗し得ると本気に考えているのだろうか?しかも、憲法を黙殺、損壊して。
  不思議でしょうがない。軍拡競争に歯止めがかからなくなると思い至らない
  のだろうか?隣人(国)と仲良くすることが戦争を遠ざけることなのに、
  そんな当然のこともわからないのか。(2015年9月18日)

117、ユネスコが世界遺産に中国の申請した「南京大虐殺の記録」を登録したら、
  日本政府はユネスコへの分担金を払わないと恫喝をかけています。了見が狭い。
   日本政府は「南京大虐殺はなかった」ことにしたいのでしょうが、そんなことを
   言っているのは日本政府、自民党(公明党は?)、在特会などの右翼だけでしょう。
   国連で”堂々と”そのように発言してみればいい。(2015年10月14日)

118、冬の蝶揉みしだかれてしまひけり

119、冴ゆる夜の星影風に揺れゐたり

120、高市総相が放送局の電波停止に言及しています。公平を欠く放送を繰り返した
  場合とはいうものの、放送局に対する露骨な恫喝です。(2016年2月9日)

121、冴え返る海より還るこゑのなく

122、オーストラリアが新しい潜水艦をフランス製に決め、日本政府は売り込みに失敗した
  という。久々にいいニュースです。三菱重工の長崎造船所は客船建造で何度も
  火災を出し、納期を遅らせ、何千億円もの損失を出したというのだから、
  オーストラリアにしてみればそんな企業の造る潜水艦には怖くて乗れないと
  いうことでしょう。武器輸出などは止めるべきです。(2016年4月27日)

123、安倍晋三の祖父が首相になったことでも明らかなように、戦前、戦後の区切りが
  ない現在の日本の象徴として軍人恩給制度のことにも触れられているのですが、(※)
  1953年から2011年までに総額50兆円が支給されたということです。自国民には
  これだけ手厚く補償するのに韓国、北朝鮮にはいかに薄手か。
  北朝鮮とは国交回復もしていない。彼の地の対日観が厳しのは当然です。
  ※太田昌国さんの『〈脱・国家〉状況論 抵抗のメモランダム2012-2015』
  (2016年4月28日)

124、沖縄の闇に弦引く蛍かな

125、夏の朝けふも咎むる微熱あり    7につづく

   


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最終獄中通信 (7)

2018-08-22 06:54:04 | ③好きな歌と句と詩とことばと
126、加害てふ言葉も知らず敗戦日

127、つくつくしひとり挽歌を唄ひそむ

128、傷つけて吾永(なが)らふる暮の秋

129、一身の骨軋(きし)まする咳ひとつ

130、短詩さへ詠めぬを嗤(わら)ふ冬の蠅

131、点滴の音を重ぬる小寒夜

132、春立つや真夜の独居に咳ひとつ

133、再びは会ふこともなき夕間暮れ

134、春の宵黄泉(よみじ)の人も浮かれけり


  大道寺将司 自選集

1、召集はうつつか否か五月闇

2、梅青くデモに若人殖えにけり

3、十薬の死後ありありと蕊(しべ)高し

4、蜘蛛の子やいくさは人を狂はする

5、荒梅雨の音を眠りの連れとせむ

6、蜩の屍を風のなぶりけり

7、難民の命軽しや秋の浜

8、赤蜻蛉今宵の塒(ねぐら)定まらず

9、デモの日は秋雨のまた降り込めり

10、阻止線を越え奔流となりしデモ

11、難民の舟の水脈曳く凍つる星

12、過ぎ去りし時代の底に雪しまく

13、春寒し軒端を濡らす雨の脚

14、原発の依存止まざる竹の秋

15、若者のデモとりどりや地虫出づ

16、沖縄の大夕焼けを扶育せり

17、火蛾湧くや日の丸ゆるく翻り

18、天道虫九条はなほ死なざりし

19、北辺の海霧移る迅さかな

20、夜着重く骨の軋みし霧襖

21、幸ひは死者にこそあれ稲光

22、霧深き海にかそけく骨を撒け



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