日頃感じたこと、思ったこと事などを書きとめておきます。
野のアザミ
アカウミガメの守り神・小豆野次則さんのこと
2018-04-07 / 自然
帽子が小豆野さん
またひとり大切な人を亡くした。佐土原海岸のアカウミガメ調査第一人者だった小豆野次則さんが突然亡くなった。訃報を聞いたのは通夜の直前。あわてて駆けつけると、そこには海を背景にした小豆野さんの遺影。
佐土原海岸は、宮崎市の海岸のうち最も北寄りにある旧・佐土原町の海岸だ。地元ではさらに細かく、北より二ツ立(建)海岸、大炊田海岸、石崎(明神山)海岸と呼んでいる。地元言葉で書けば、「ふたったてんはま、おいだんはま、いしざきんはま」となる。その海岸のうち、小豆野さんが担当されていたのは石崎海岸だ。シーズン中は毎日の調査だ。朝、夜明け前のことだ。奥様と二人で出かけ、上陸や産卵を記録し、産卵していれば卵をふ化場に移しふ化を見届けられ、赤ちゃんガメを海に帰されていた。佐土原にとってなくてはならない人だった。
私は、その小豆野さんをガイド役として最近までアカウミガメ産卵観察会を行ってきた。観察場所は、一ツ瀬川と石崎川を挟んだ二ツ立海岸と大炊田海岸だった。産卵シーズンになると毎年4回の観察会だった。最後の2年ほどは小豆野さんの体調も考え年2回に減らしたが、上陸しそうな日を選び、参加者を募って産卵観察会を行うといういいとこ取りの企画だった。小豆野さんを先頭に、真っ暗な夜の砂浜を産卵のために上陸して来るアカウミガメを探してゆっくり歩くのだ。上陸するアカウミガメに出会えた確率は、3分の2ほどだっただろうか。しかし、野生動物だから全く出会えない日もあった。そういう日は、私も小豆野さんも平謝り。イチローが三振した時のような気分だった。そういう時でも上陸した足跡や産卵したあとは幾つもあったので、小豆野さんはそれらを前に話をされた。
話のひとつに、アカウミガメとの出会いがあった。夜の浜でひとりで詩吟をうなっていた時、海から上がってきたのだという。怪獣だと思ったそうだ。あるいは、参加者に「上がってくるのは全部メス。メスには尻尾がない。オスにはあるのになぜか?」と問いかけられた。夏の夜の浜での話は、ちょっと助平心が見えて楽しかった。また「自分はツルで有名な出水市の生まれ、カメに出会い『鶴は千年亀は万年』という実にめでたいことになった」と話をされた。
思い出は尽きない。暗闇の中に見つける一本の筋(上陸したばかりの足跡)、一晩に5頭も出会ったこと、じっと産卵を見守る親子、産卵を終え海に帰っていく姿、何回も産卵場所を探して動き回る姿、あるいは南の空のサソリ座、侵食が進み痛々しい砂浜等々・・・。
冥福を祈りたい。
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