むき出しになったサンドパップ(5月)
5月も半ばを過ぎるとアカウミガメの産卵シーズンになる。以前、産卵観察会を呼びかけていたこともあり、シーズンがくると浜の状態が気になる。ということで、先日浜に出かけた。産卵観察会をやっていたのは宮崎海岸の北部、一ツ瀬川と石崎川間の垂直護岸の部分を除く約2kmの区間だ。かつては、一晩に5頭のカメに出会ったこともある海岸だ。
まず一ツ瀬川の河口へ。地元言葉では二ツ立浜(ふたったてんはま)だ。浜では1組の家族連れと4人ほどの女子中学生グループが談笑中。その賑わいを耳にしながら浜を見渡せば、なんとか産卵できそうな場所が200mほど。だがまだ上陸の痕跡なし。なので、海岸に並行する道路に引き返し、KDDIマイクロ波通信タワー前の大炊田浜(おいだんはま)へ。ちょうど両河川の中間あたりだ。松林を抜けるとクルーザータイプの車が3台。サーファーの車だ。砂浜が広がっているのではと期待を持って砂浜へでると、あゝ無残。見えるは砂浜復元のために埋められた巨大なサンドパックが延々と剥き出し状態。これではアカウミガメは上陸できない。サンドパックの大きさは、一つが幅4.3m・高さ1.5m・長さ20mもある巨大なものだ。人間だって危険だ。それがずっと先まで剥き出しなのだ。1月初めに来た時も同様の状態だったので心配はしていたが、これではとてもダメ。産卵できそうな場所はまるでなし。少しでも可能性を求めて石崎川方向に足をのばしてみると、河口手前に何とか上陸できそうな場所が200mほど。そして嬉しいことに、すでに1頭上陸した様子の足跡。今シーズン、一ツ瀬川と石崎川の間で産卵出来そうなのは、そういうわずかな場所だ。
宮崎海岸の沖には黒潮が南から北へ流れている。しかし、沿岸部の流れは、反対に北から南だ。その流れに棹差して防波堤などをつくれば、ある所は侵食され、ある所には砂が溜まる。河川からの土砂の供給も、ダムやコンクリート護岸などで減っている。そういう中で、かつては幅100mもあった砂浜に防波堤や護岸などの人工物を作り続けてきた結果が今の姿だ。巨大なサンドパックを埋めたり、他所から土砂などを持ってくる養浜(ようひん)などが続けられているが、延々と金をつぎ込まなければならない負のスパイラルに陥っているように思う。
1月初めの海岸(上の3枚)
サンドパック工法の看板