肩を落とした朝の花びら
シュンギクは冬の鍋料理にはもってこいだ。虫もつかず手間いらずで、楽に育ってくれる。その上美味しい。ということで毎年植える。食する時期が終わると、次なる野菜のために引っこ抜くのが例年だ。しかし、今年は育ちの良かったものを1本だけ残しておいた。するとどんどん脇芽が出始め、たくさんの蕾がつき、やがて黄色い花が咲き誇り、畑の中でも一際目を引くようになった。
シュンギクは、ヨーロッパ南部の地中海沿岸が原産とされるが、そこではあまり食されずもっぱら観賞用のようだ。わがアジアでは品種改良が進み、ちょっと苦味のある独特の食材になったようだ。私の所では、葉に切れ込みの少ない肉厚の大葉だ。採っても採っても葉っぱが出てくる元気な野菜だ。花は、ヨーロッパで観賞用とされるだけあって本当に綺麗だ。黄色も色が濃い真っ黄色。葉の濃い緑色と競い合って、グラスに挿しただけで絵になる。このように目を引くシュンギクだが、何故だかミツバチはあまり寄り付かない。すぐそばのネギ坊主にはたくさんのミツバチが葉音を鳴らすのに、こちらには小さなハチばかり。それぞれ好みがあるのだろう等と思いながら、ある朝ふと気付くことがあった。黄色い花びらは開いているものばかりと思っていたら、朝見ると、全部の花びらが肩を落としているのだ。だが、しかしだ。10時ごろになると、肩をもたげるように真っ黄色の花びらを広げてくるのだった。そして虫たちが寄り付き始めるのだ。物ごと、見ていても見えていないことがあるということか。