◇R5年(2023年)の二級建築士試験の問題と正答表が公表されました。
◇内容は「公益財団法人 建築技術教育普及センター」のホームページをご確認ください。
◇本ブログでの解説内容は、R5年(2023年)の試験問題をベースとして、要点整理を図ります。
◇上記財団のホームページで、R5年の試験問題を確認してから、本解説をご覧いただければと思います。
◇面積・高さ計算図形問題の過去の出題傾向
・H23年までは、最初の問題(No.1)は、用語の定義と面積・高さの図形問題との両方の出題でした。
・H24年は図形問題、H25~H28は用語の定義、H29以降は交互に ⇒ 冒頭の整理表参照。
・と言うことで、R5年は、予想通り、面積・高さ計算の図形問題となりました。
・ちなみに、本年度(R5年度)の問題はH29年の試験問題との類似問題です。
・ただ来年度(R6年)は、用語の定義かとの予測もできますが、以前ように両方の出題もあると思います。
・易しい分野ですので、両方ともポイントゲットできることが大切だと思います。
◇R5年の問題(No.1)でのポイントは?
・計算がしやすい敷地面積の算定値と、一目でわかる建築物の高さから正答が分かります。
・敷地面積(42条2項道路絡みの線路敷地から4mセットバック)=20×(17-1)=320㎡
・建築物の高さ=1.5+3+3=7.5mはすぐに判断可能です。
・建築面積は、1階事務室部分の床面積がそのまま建築面積(12×11=132㎡)となります。
・階数はペントハウスが建築面積との判断が必要(建築面積の1/8より大きい)・・・で、階数は3
◇本問(「No.1」の問題)から整理する重点事項は、面積・高さ計算における基本条項「7つの条項」の理解
① 敷地面積(令2条1項一号)
・敷地面積計算では、法42条2項による「みなし道路境界線」が必ず絡むので、理解した計算が必須。
・道路は4mの幅員確保が前提で、宅地間であれば道路中心線より2m後退した線を道路境界線とする。
・反対側が、川とか線路敷地などの場合は、その境界から4m後退した線を道路境界線とする。
・「みなし道路境界線」は、第3章の形態制限の問題にも大きく影響するので、正しい理解が必要。
・「みなし道路境界線」は法令上の境界線としての理解し、斜線制限等の問題を誤答しないように!
② 建築面積(令2条1項二号)
・建築物の高さ計算、階数計算にも影響する大切な基本事項です。
・地階で地盤面上1m以下にある部分は、建築面積算定の対象としない。
・軒、庇などの、柱などの建築物の中心線から突き出したものは、1mまでは計算に入れない。
・バルコニーも同じ扱いで、柱の支えがない、キャンティレバーのバルコニー部分を対象とする。
③ 床面積(令2条1項三号)
・柱、壁等の建築物の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積とする。
④ 延べ面積(令2条1項四号)
・原則、各階の床面積の合計で、緩和条項はない。
・ただし、法52条に基づく容積率計算をする場合には、緩和条項があることに注意する。
・緩和条項① 令2条1項四号イ~へ & 令2条3項:算定時に延べ面積から控除できる面積の部分
自動車車庫1/5、備蓄倉庫1/50、蓄電池1/50、自家発電設備1/100、貯水槽1/100、宅配ボックス1/100
・緩和条項② 法52条3項:地階で天井が地盤面から1m以下の部分
住宅、老人ホーム、福祉ホーム等で、その用途に供する部分の合計の1/3まで控除できる。
・緩和条項③ 法52条6項:政令に定める昇降機の昇降路部分、共同住宅等の共用廊下、階段部分
今回の試験問題の「No.16」で「エスカレーター」が出てくるが、これは控除対象の昇降機ではない。
控除対象の昇降機は、令135条の16に規定されており「エレベーター」と定義している。
⑤ 建築物の高さ(令2条1項六号)
・前面道路の中心線から建築物の高さを算定するものを規定している
道路斜線制限による建築物の高さ制限(法56条1項一号)
建築物の後退距離算定の特例計算(令130条の12)
・階段室等の屋上部分で建築面積の1/8以内のものは、原則、12mまでは建築物の高さ部分に含めない
例外として、避雷針設備設置の判断とする場合の建築物の高さは含める(法33条)
例外として、北側斜線制限のよる建築物の高さは含める(法56条1項第三号)
例外として、高度地区内の建築物の高さは含める(法58条)
・棟飾、防火壁の屋上突出部等は、建築物の高さに含めない
⑥ 建築物の階数(令2条1項八号)
・階数に参入しない部分は、建築面積の1/8以内の次の部分としている
屋上部分:昇降機塔、装飾塔、物見塔、その他
地階部分:倉庫、機械室、その他
・吹抜き部分により階数が異なる場合は、最大のものとするとしている
⑦ 地盤面(令2条2項)
・建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さ(水平面)とする
・高低差3m以内毎の平均の高さとする
以上、第3章の集団規定等の問題に大きく影響する基本事項ですので、充分な理解が必要です。
易しいからと言って、舐めてはダメです!
2023年9月1日 by shrs(シュルズ) 建築基準適合判定資格者、一級建築士