一人想うこと :  想うままに… 気ままに… 日々徒然に…

『もう一人の自分』という小説を“けん あうる”のペンネームで出版しました。ぜひ読んでみてください。

シクラメンの香り

2005-12-25 21:14:07 | 日記・エッセイ・コラム
 クリスマス。
ご主人様は大きな紙袋を抱えて帰って来た。
娘の彼氏に言われたことがこたえたようで、奥様のプレゼントを買ってきたようだ。
奥様に差し出すと、最初の言葉がこれだ。
「どうしたのこれ?
お店で残りそうなので押し付けられたの?」
どうやら、まったくわかってないらしい。
それもそうだ。ご主人様が奥様になにか買ってくるなんてめったにない。
たまになにか買ってくる時は、仕事柄付き合いで買ってくるだけだ。
ご主人様はムッとして、
「なに言ってんだ。ちゃんと花屋さんで買ってきたんだぞ。
結婚記念日も誕生日も忘れてたからな」
と言うと、奥様はニンマリとしながら紙袋を開けた。
すると綺麗な鉢植がでてきた。
どうやらシクラメンらしい。
それもちょっと変わった色だ。
テーブルの上に置くと淡い色合いが心地良い。
Sikuramen3
僕は思わず鼻を近づけた。
ほんのりとやわらかい香りがした。
気がつくと奥様はテーブルに両肘をつき、頬杖をしながらシクラメンを眺めていた。
どうやら来年も安泰のようだ。


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イルミネーション

2005-12-18 21:33:47 | 日記・エッセイ・コラム
 ここんとこ忘年会が続いている。
昨日がピークだったせいか、ご主人様の予定はダブルヘッダーだった。
しかも、開始時間は両方とも午後6時。
 まずは会社関係の忘年会へとススキノへ行った。
タクシーを降りるとすでにススキノは人でいっぱいだった。
宴会の料理は仕事柄、魚料理がメーンである。
どれもこれも素材は一級品。調理の腕も良い。
もっとも、これがだめなら仕事上スムーズにいくものもいかなくなる。
ある意味当たり前の事だった。
 そこを1時間ほどでおいとますると、またタクシーに乗って次の宴会場である大通りに向かった。
ところが、ちょっと走り出すとすぐに渋滞につかまってしまった。
すべる雪道をズリズリと、ほとんど歩く速度と変わらない。
やっと大通り公園に近づくと、煌びやかな灯りが目に入って来た。
illu1-3
イルミネーションだ。
 ご主人様は大通りの手前でタクシーを降りると、公園の中を歩いて宴会場に向かった。
小雪の降る中、葉の落ちた木々が紫や緑にライトアップされている。
「綺麗だ」
久しぶりにそう思った。
illu2-3
 大通り公園を抜け、宴会場に着くと、いつもと変わらない仲間達の笑顔があった。
 今日の忘年会のメーンはご主人様にとっては当然こっちだ。
SWMAという勉強会の忘年会で、みんなご主人様の人生の先輩だ。
休会中のご主人様にとっては半年ぶりの参加だった。
話に花が咲き、予定時間を大幅に越え、店に迷惑をかけたが久しぶりの再会は楽しかった。
 店を出て、それぞれ帰路につくと、ご主人様はまた大通り公園に行った。
あのイルミネーションをもう一度見たかったからだ。
illu3-3
 テレビ塔の方を眺めると、おとぎの国のようだった。
もう何年このような雰囲気の場所に来てないだろう。
周りはほとんどがカップルだ。
今度は奥様も連れてこなければ。
そう思って横を見ると、遠くでSWMAのメンバーの一人が同じように写真を撮っていた。
どうやら考えることは同じようだ。


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雪かき

2005-12-11 21:25:04 | 日記・エッセイ・コラム
yukikaki1-3
 昨日の夜から、どうも天気が荒れているようだ。
寝ていても時折吹き付ける風の音が、窓を通して聞こえてくる。
僕はいつもの時間に起きたが、ご主人様も奥様も休みのせいかなかなか起きてこない。
やっと起きてきた奥様が、窓を開けて外を見るなり大声で叫んだ。
「おとうやん、雪積もってる。
皆雪かきしてるよ!!」
 ご主人様はあわてて起きてきて、踊り場の窓を開けた。
僕も一緒に外を見に行くと、空は晴れ渡っていたが家の前の通りは真っ白に染まっていた。
ご近所の人たちは、すでに雪かきを始めている。
ご主人様も着替えを済ませると、すぐに出て行き雪かきを始めた。
yukikaki2-3
 僕も一緒に外に出た。
カーポートでうろうろしていたが、一年ぶりの雪は冷たかった。
yukikaki3-3
 振り返ると、雪の上に僕の足跡が綺麗に残っていた。
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 そのまま裏庭に出ると、カヌーの上にもほんわりと雪が積もっていた。
「やっと雪が積もった~」
ご近所の人たちも、久しぶりに皆と顔を会わせたせいか、世間話に花が咲いている。
僕も何となく楽しくてしょうがなかった。
でも足が冷たい。そろそろ家に入ろう。
そう思った時だった。
「いって~!」と言うご主人様の声が聞こえてきた。
どうやら雪を跳ねる時、背中を捻ったようだ。
背中のお肉がプルプルと鳴ったと言っている。
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 横で見ていたカラスが何か言ったような気がした。
「あんたもいつまでも若くないんだから、ほどほどにせいや~」
そう言えばこのカラス、前に奥様と戦ったカラスじゃないか。
 ご主人様はチラッとカラスに目をやると、背中を押さえながら家の中に入っていった。
僕も一緒に家に入ると、ご主人様は奥様から痛み止めをもらいすぐに飲むと、そのままソファーに横になってしまった。
後の雪かきは奥様にまかせるようである。
yukikaki6-3
 僕ももう外には出る気はないので、僕専用のイスで寝てしまった。
 今年は雪の降り始めが本当に遅かった。
でも、一年経つと結局毎年同じ量だけの雪が降るようだ。
今年は降り始めが遅かった分、そのうちドッカリと降るんだろうな~。
そんなことを考えながら、僕は寝ていた。


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歯医者

2005-12-10 22:30:12 | 日記・エッセイ・コラム
 今日、ご主人様は歯医者さんへ行って来た。
行くのは決まって主治医であるK歯科だ。
 別に歯が痛いとか、虫歯になった、というわけではない。
ここ数年、年末になるとなぜか歯が痛くなる。
どうも疲れが溜まって歯茎が痛くなるようだ。
 去年なんかは上の歯茎が思いっきり、こぶのように腫れてしまった。
若い時よくやったように、木綿針をライターで炙り刺してみたが、なかなかこぶを破ることはできない。
しかたなく、仕事の合間を見てK歯科に行くと、問答無用で切られた。
治療の後で、ご主人様はK医師に言われた。
「Yさん、もう若くないんですから、ここまでひどくなる前に来てください。
まして自分で針を刺すなんて言語道断ですよ。
これからは予防です。
三ヶ月おきくらいには検診に来てください。
いいですね」
 さすがにこの時はご主人様も懲りたようで、それ以来三ヶ月おき位にK歯科に通っている。
 K歯科はサラリーマンの味方だ。
無理に治療を長引かせたり、問題のない歯をただ被せものが古いという理由で削ったりして高額の治療費を請求するようなことはしない。
その日にできる治療であれば、虫歯が何本あってもその日にやってくれる。
それに、こういう言い方は失礼だが治療費が本当にリーズナブルだ。
待合室で患者を見ていると、結構地方からも来ているようだ。
それだけ信用されているということだろう。
 歯医者を選ぶ時に、何を基準にするか。
それは実際に罹った人の評判だ。良くても悪くても。
人の噂ほど怖いものはない。
実際に消えていった歯医者は近所でも何軒かある。
そう考えると、一日一日を大事に、誠意をもって仕事をすること。
どんな業界でも同じことか・・・
ご主人様はふと考えてしまった。


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12月8日

2005-12-08 21:47:56 | 日記・エッセイ・コラム
 ご主人様にとって、12月8日というのは二つの意味合いがある。
一つは過去の悲惨な戦争。
つまり旧日本軍がハワイの真珠湾を攻撃し、大戦の火蓋を切った日。
当然ご主人様の生まれるかなり前の話だが、機会があれば今度ゆっくりと聞いてみたい。
そしてもう一つは、ご主人様の大好きなジョンレノンが狂信的はファンの凶弾に倒れた日だ。
 数えてみると、今年で没後25年だ。
25年前というと、ご主人様はまだ独身。
この悲報をどこで聞いたかというと、当然独身だった奥様のアパートでだ。
奥の部屋でジョンレノンのレコードを聞いていたとき、台所で夕飯の支度をしていた今の奥様がテレビを見て教えてくれた。
つまり、ご主人様は奥様のアパートに転がり込んでいたのだ。
 あの頃は何もこわいものなどなかったような気がする。
毎日が楽しく、常に上を向いていた。
そして25年経った今、子供達が同じ位の年頃になってきた。
同じように毎日が楽しいようだ。
ほとんど家にいない。
 今日もご主人様が帰って来ると、お迎えに出るのは奥様と僕だけだ。
子供達がいないと、ご主人様はちょっぴり寂しいようだ。
でも、奥様に言わすと、「ちゃんと普通に成長している証拠よ」と言っている。
僕もそう思う。
 ご主人様は風呂から上がると、バーボンを飲みながら、ボーとしている。
なにかもの思いにふけっているようだ。
stereo-3

傍らのステレオのスイッチを入れた。
ターンテーブルにはジョンレノンのレコードが置かれている。
針を置くと『IMAGINE』が流れてきた。
ご主人様は何を思っているのだろう。
昔のことか・・・。
それともこれからのことか・・・。


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熟年離婚

2005-12-04 20:51:11 | 日記・エッセイ・コラム
 ドキッとするようなタイトルだが、ご主人様と奥様が離婚するわけではない。
最近、『熟年離婚』というテレビドラマが流行っているらしい。
bibi9-3
 僕がソファーでゴロゴロとしていると、横で奥様はテレビに見入っている。
チラッと見ると、どうやら『熟年離婚』を見ているようだ。
ご主人様が通りがかって、「おもしろいのか?」と訊くと、「うん」とうなずくだけだ。
それも振り向きもせず。
 ご主人様は、「そうか」と言うと、隣の部屋に行きパソコンを使い始めた。
別に気にもしてないようである。
この時は・・・。

 今日、ご主人様と奥様、それに娘と彼氏の四人はレストランに食事に行った。
行ったのは洋食で、焼きたてパンが食べ放題の店だ。
食べ盛りの彼氏にはちょうど良い。
 いろんな話に盛り上がっていた時に、奥様が「『熟年離婚』というテレビドラマがおもしろい」と言い出した。
そして、ドラマの内容をとうとうと話し始めた。
途中まで聞いていた娘は、話をさえぎるように言った。
「ねえ。それって、うちのおとうやんそっくりじゃないの」
奥様は我意を得たりという顔をしてうなずいていた。
そして話し続けた。
「そうなのよ。それにね、今年も私の誕生日を忘れていたのよ!!」
彼氏と娘の視線がご主人様に突き刺さった。
そしてなぜか彼氏が話し始めた。それも真顔で。
「おじさん。それはまずいですよ。
今年のクリスマスは豪勢なプレゼントを贈った方がいいですよ。
その方が絶対にいいですよ!!」
なぜ、こいつにこんなことを言われなきゃならないんだ?
ご主人様はそう思ったが、考えてみると娘の彼氏は本当にまてなやつだ。
誕生日の贈り物は当然。
ジャケット着用のレストランへも予約して連れて行ってる。
もっともこの時に着て行ったジャケットはご主人様から借りたものだが・・・。
 振り返ると、確かにご主人様は何にもしていない。
直前までは憶えているのだが、当日になるとなぜか忘れてしまってる。
結婚記念日も奥様の誕生日も。
まずいなこれは・・・。
このままいくと、本当にドラマのようになってしまう。
まずい、まずい、絶対に・・・!!

 12月に入っても札幌市内はまったく雪がない。
雪がないと、どうも師走という気分がしない。
でも絶対に忘れないようにしなければ。
もうすぐクリスマスが来る。
忘れないように・・・
忘れないように・・・
絶対に忘れないように・・・!!


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