8月30日で介護病院で6年暮らすお袋は95歳になった。
2月初旬、松濤の介護病院へ見舞うと
車椅子に腰掛け、計算ドリルをしていた。
既に一桁足し算も間違えていた。
コロナの恐怖が人々に認識されると
病院は見舞いを閉じた。
お袋は既に夢遊の世界にいるので
子供達に会えない寂しさない。
私にとっては何時知らせが来るのか
落ち着かない日々。
今年の夏
激暑だ。
蝉時雨の言葉は、それだけで音を感じる。
山里、神社、寺
に歩んでいくと突然の蝉時雨。
15年前 夏、甥っ子が20歳で自死した。
ビルの屋上から下りた。
妻の妹 その夫
妻と私
沈黙の葬儀をした。
若者の死を4人が受け入れることができなかった。
花々に包まれた棺を見詰めても涙は滲むこともなかった。
霊廟塔の階段を登り、納骨した。
塔を囲む木々からけたたましく蝉が鳴き出し、忽ち連鎖の鳴き蝉。
私達は、それぞれの帰り道で、無言の礼をして別れた。
甥っ子の刹那の生涯。
甥っ子が先祖になる。
だが、まだ墓石はない。
語るべき言葉はない。
夢で逢えたら 大瀧詠一
サンチョパンサは何を見たか?
君は天然色……
過ぎ去った過去 しゃくだけど今より眩しい
もう一度 そばに来てはなやいで
うるわしの Color Girl ✳