春風吹く干潟の夕

2012-04-04 23:10:21 | 鳥(Birds)


オグロシギ(Limosa limosa melanuroides) Black-tailed Godwit


日曜日。うららかな春の日差しに誘われて、干潟を訪れた。
この日は小潮で、満潮の時に到着したにもかかわらず、干潟の一部は既に露出していた。

脛まで浸かる水位を優雅に歩くセイタカシギ達は、今年は少し多めに渡来しているようだ。
思い返せば、大学に入って最初に先輩に連れて行ってもらったのはこの干潟だった。まさにこの時期、このセイタカシギ達が歩く区画で、目の前で美しく結ばれたセイタカシギのペアを見て、心底感動した記憶が蘇る。
潮の動かない間、シギチ達は皆休息中のようで、無数のハマシギの群れやダイゼン、メダイチドリ等のほとんどは僅かに露出した干潟部に集合して、顔を背中にうずめていた。
一方、一匹狼のホウロクシギは満潮でも構わず歩きまわっている。

私はまず、逆光で強風の吹きつける岸から水面を見て、採餌中のコガモを片っ端からチェックした。
この条件化での捜索はなかなか困難なもので、風でぶれるスコープや双眼鏡を見過ぎてめまいを起こした。こうして船酔いしたかのように気分が優れなくなってきたところで、やっと側胸に縦白線がビシッと入る亜種アメリカコガモを見つけた。
これを見つけると、不思議と優れなかった気分が回復するものだ。

潮が引き始めて干潟部がどんどん広がり始めると、さっきまで休んでいたハマシギやダイゼン達が分散して採餌し始めた。
しまった、早くしないと。干潟部が拡大すればするほど鳥が探しにくくなる。

今までどこへ行っていたのか、6羽ほどのオオソリハシシギが姿を見せた頃、干潟部はもうかなり拡大していた。澪の側に佇むさっきのホウロクシギも、満腹だといわんばかりに休息体勢をとった。

スコープを使って遠くばかりを探した後に、ふと手前側を見ると、換羽中のユリカモメが飛び交う中に1羽のシギが顔を隠して休息していた。
見た瞬間、すぐさまピンときた。コイツだ。
するとまもなく目を覚ましたそのシギは、まっすぐにシャープな嘴を見せてくれた。
今日一番見たかった鳥、オグロシギだ。
まだ冬羽のオグロシギは、嘴の形や尾の色もさることながら、体形がオオソリハシシギに比べて明らかに華奢で、特に頸は際立って細長い印象を受けた。
オグロシギが飛翔時に見せる白い翼帯もはっきりと見ることが出来た私は、満足して家路についたのだった。



【2012/04/01/千葉 Chiba,Japan/Apr.2012】


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4 コメント

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Unknown (piyoco)
2012-04-05 22:58:18
タロ様

シギチいいですね。でも、オグロシギには苦い思い出が・・・

昨年春の見島で、一羽の鳥が頭上を超えていきました。
「何だ、この鳥は?」「ピュー」とも「ピョー」ともとれる鳴き声。
その場に居た三人が鳴き声を聞きました。
図鑑で該当の鳥を探すと、オグロシギっぽい。
鳴き声は「ピュオッ」と書いてある。
「あっっっ、翼下面の前半分が黒かったよ!」と私。
「アメリカオグロシギだー!」と興奮する三人。

少し前の田んぼに舞い降りた姿に、ん?と違和感を感じつつも
近くの人達に「アメリカオグロシギっぽいのが居ますよ。」と教えてまわる。
だって見島でしょう。何が出ても不思議じゃないもの。

羽を広げた瞬間、「ただのオグロシギじゃん!」とブーイングの嵐・・・

よく晴れた日。下から見ると厚みのある前半分側が影になって黒く見えただけでした。

もう穴があったら地球の裏側まで行ってしまいたいぐらい恥ずかしかったです!
いま思い出しても凄い恥ずかしい~~~

あのピューとかピョーの鳴き声は何なのでしょうか?謎だらけです。


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鳥を見るということ (タロ)
2012-04-06 20:09:47
>piyocoさん

お気持ち、よくわかります。
鳥をはじめに見た時(鳴き声を聞いた時)に一番最初に入ってくるイメージ(雰囲気)。
これは後になって考えると正しいことが多いと思いますが、だからこそ、なかなか思い込みをしやすいものでもあると思います。
さらに、鳥を何度も見ていくと、図鑑にも自分の経験にも合致しない、イレギュラーな要素が出てきて、判断基準を揺らがされる時がありますよね。

piyocoさんに比べるとかなりレベルの低い間違いですが、
例えば、僕もハッキリと覚えている経験があります。
オーストラリアにナマリイロヒラハシという鳥が居ます。これの雄は色味などよく見れば全くもって違いますが、どことなくクロエリヒタキに似てなくもない鳥なのです。
これをはじめ見た僕は、「クロエリヒタキしゃない?ド珍鳥だよ!」などと愚かな発言をしました。同行していた友人にしらけた目で見られたのは言うまでもありません。

しかしながら、間違いをしてこそ、二度と間違うものかとさらに詳しく勉強出来て、ためになるというものです。
そうして何度も鳥を見て、何度も間違えて、それでも鳥を見続けたなら、個体差やイレギュラーをもカバーするほどの「観察眼」を手に入れて、真のバーダーになるのではないかと思います。
度々思いますが、鳥を見るということは、奥が深いですね。だから止められない、のでしょう(笑)
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Unknown (piyoco)
2012-04-06 23:19:40
タロ様

ナマリイロヒラハシという鳥の名を初めて知りました!
確かにクロエリヒタキに似てますね。
私はペーペーのバーダーなので、間違いなくクロエリヒタキと識別すると思います(笑)。

何せ、マミタ・コマミタの識別も出来ないので、タロさんの昔のブログを見て必死に暗記中です。

今年は、昨年より少しでも多く、観察眼が増すといいなぁと思います。
いっぱい間違えて恥をかいて、その悔しさや恥ずかしさをバネに頑張って覚えなきゃ。
女は度胸!なので、どんどん間違えますよ(笑)。

いつも勉強になるお話をありがとうございます。
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Unknown (タロ)
2012-04-08 07:47:46
>piyocoさん

ご謙遜を!

しかし、普段から疑ってかかるということはとても重要なことだと思います。
僕の尊敬する鳥の先輩は、
「生息地や出現率で識別するのは好きではない」といつも言っています。
図鑑に書いてあることは目安でしかなく、
生息地の推移や迷行には対応していないわけですから、まさにその通りだと僕も思うわけです。
むしろ生息地やレア度といった先入観に捕らわれて、視野が狭くなってしまうことすらもありますし。
例えどんな普通種でも、特に渡りの時期ではなくても、常に疑いの目を持ってかかることが人より多種類見つけるコツなのでしょう。
当たり前と言えば当たり前のことですけれどね。

ですから、間違えることは恥じではないと思います。
オーバーな解釈ですが、
間違えることの少ない人間は、
完璧に詳しい人か、疑うことをせずに可能性を失っている人のどちらかですからね。
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