バイクで海岸線を走行していると、コンクリートの法面でアゼトウナが花を咲かせていた
もしかして、アゼトウナは耐アルカリ性植物なのかと思い、調べてみたが特にそのような記述はない
更に調べてみると、コンクリートは大気中の二酸化炭素を吸収中和し、施工後時間が経過するとともに、表面のアルカリ性は弱まるとの事だ
ただ、周辺土壌をアルカリ化する懸念があり、コンクリート施工物の周辺植生への影響を記した論文も見られる
一般的な植物は、土壌のpHが6.0~6.5で正常に生育すると言われているが、それよりアルカリ性に傾くと、カリウム、マグネシウム、鉄、ホウ素等の吸収が障害され、欠乏症をまねくようだ
山野草に詳しい方であれば、蛇紋岩地帯に珍しい山野草が自生している事を知っているだろう
蛇紋岩地帯では植物に必要な窒素、リン酸、カリウムが不足し、マグネシウムと鉄が多く、土壌がアルカリ性に傾き、吸水障害を起こしてしまう
しかし、このような過酷な環境にも適応できる植物が存在するのも事実である
一例として、ムラサキセンブリが蛇紋岩帯で見られる事は良く知られている
ムラサキセンブリは蛇紋岩帯以外にも自生しているものだが、中には蛇紋岩帯にしか見られない特有な植物も存在するようだ
(下図は、以前撮影した蛇紋岩帯の渓谷に自生するムラサキセンブリ)
話が脱線してしまったが、アゼトウナについて
晩秋~初冬の海岸線を彩るアゼトウナは、九州では大分県と宮崎県に自生している
似ているホソバワダンは、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県に分布しており、見事に縄張りを分けているのだ
しかし、アゼトウナについては、おそらく鹿児島県で、ホソバワダンと共存しているのだろうと思われるのだが、その報告はまだ聞いたことがない
九州における分布状況から、私はホソバワダンは対馬海流型、アゼトウナは黒潮型と勝手に分類している
ホソバワダンが海外にも分布するのに対して、アゼトウナは日本固有種である
ホソバワダンとアゼトウナの見分け方について、ホソバワダンの下の葉が茎を抱くのに対して、アゼトウナの下の葉はあまり抱かないと言われている
下図はアゼトウナの側枝の葉だが、かなり茎を抱いているように見えるのだが・・・
アゼトウナの葉の形状は、変異が大きいように思えるが、もしかしたら、ヤクシソウやアキノノゲシ、コウゾリナと交雑したものなのかもしれない
それらは良く交雑すると、論文に記載されている
美しい海岸でバイクを止め、岩場へ出てみると、青い海とアゼトウナの黄色い花が目に飛び込んできた
素晴らしい自然の風景に感動した
学名:Crepidiastrum keiskeanum (Maxim.) Nakai
和名:アゼトウナ(畔唐菜)
キク科 アゼトウナ属
撮影 2022年11月 大分県
初版 2021年12月03日
記事アップロード 2022年11月25日
画像アップロード 2022年11月22日
以下 アーカイブ
記事アップロード 2021年12月03日
画像アップロード 2021年12月03日
11月に見つけた野草の花(大分県)
アゼトウナ(畔唐菜)
Crepidiastrum keiskeanum (Maxim.) Nakai
キク科 アゼトウナ属
花 期 : 9~12月
生育地 : 海岸付近の岩場、崖地
分 布 : 伊豆半島以西の主に太平洋側
RL指定 : 環境省カテゴリ:なし 大分県:なし
秋~冬の海岸に彩りを添えるアゼトウナの花
九州では太平洋側の大分県と宮崎県に分布し、東シナ海側には似ているホソバワダンが多く自生する
大分県の海岸を訪れると、よく目にする植物だが、私は大分県に移住するまでは見たことがなかった
一見ホソバワダンと同じに見えるが、アゼトウナの茎葉は茎をあまり抱かない
波しぶきをかぶるような岩場に張り付くように生えている
アゼトウナは草丈10cm程のキク科の多年草または亜低木で、海岸付近に自生する
主軸は低くて太く、葉はロゼット状となり、花を付ける事はない
生育が進むと、主軸の葉腋から側枝を出し、10~20cm匍匐して10cm程立ち上がり、茎先に多くの頭花を付ける
葉は厚みがあり、倒卵形または匙形で、基部は翼状となり、細かい鋸歯を持ち、互生する
頭花は、径約1.5cmで10~20個程の舌状花からなる
アゼトウナと、ヤクシソウ、アキノノゲシ、コウゾリナ等は交雑するようで、下図の個体は、葉にあまり厚みがなく、細長く鋭頭
で、通常のアゼトウナの葉とは違って見えるので、交雑したものかもしれない
ロゼット状の葉
アゼトウナは日本固有種
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