昨年見つけたタマムラサキらしき植物を観察に出かけた
大分県に自生するものか疑問に思っていたが、論文を確認すると、海岸近くではなく、内陸部で見つかっているようだ
ヤマラッキョウとタマムラサキを区別するのか、しないのか、意見は分かれるところだろうが、海岸に自生し、葉が扁平中実という特徴をもってタマムラサキとして整理した
花付がまばらであるという特徴については、昨年も解説したように、違っていると考えられる
また、花糸の間に小突起はないと言われてきたが、個体差があり、識別点にはならないとされた
タマムラサキのもう一つの特徴として、雌蕊の基部にある3つの蜜腺に、帽子状の覆いが発達している事が挙げられている
下図は、ヤマラッキョウとタマムラサキの花の比較
両者とも小突起は見られない
蜜線の覆いが発達しているというのが、どのような状態かはわからないが、下図のタマムラサキのものは大きいように見える
参考までに、下図は平戸島のイトラッキョウの小突起
葉は扁平中実
アシズリノジギクが咲き始めた海岸では、タマムラサキの花はもう終わりを迎えようとしていた
学名:Allium pseudojaponicum Makino
和名:タマムラサキ(玉紫)
ヒガンバナ科 ネギ属
撮影 2022年11月 大分県
初版 2021年11月05日
記事アップロード 2022年12月09日
画像アップロード 2022年12月05日
以下 アーカイブ
記事アップロード 2021年11月05日
画像アップロード 2021年11月05日
11月に見つけた野草の花(大分県)
タマムラサキ(玉紫)
Allium pseudojaponicum Makino
ヒガンバナ科 ネギ属
花期 : 10~12月
生育地 : 海岸の岩場、草地
分布 : 本州(関東以西の太平洋側)~九州
RDB指定 : 環境省カテゴリ:なし 大分県:なし
長崎県では方々でタマムラサキを観察できたが、大分県に自生するものなのか?
先日、大分県の海岸でタマムラサキらしきものを発見した
実をいうとヤマラッキョウとタマムラサキの区別について、十分に理解している訳ではなく、単に葉が幅広で扁平なものがタマムラサキだという先入観で判断していたのだ
しかし、ヤマラッキョウの葉の形状は多様で、その断面は三角形あるいは円形とは限らないようだ
兵庫県で行われた調査では以下のごとく多様な葉の姿が確認されている
①断面三角形、中実及び中空、幅3~5mm(溜池の土手等)
②断面扁平、中実、幅1~2mm(湿った岩場)
③断面V型、中実、幅3~5mm、葉が枝垂れる(海岸の岩場)
④断面V型、中実、幅2~3mm、葉が直立(田んぼの土手等)
⑤断面矢じり型、中空、幅2~4mm(湿地)
【兵庫県のヤマラッキョウの地域的変異】を参照
タマムラサキの葉は、断面扁平、中実、幅2~5mm程と言われており、上記②と部分的に重なる
結論として、ヤマラッキョウは、地域や生育環境により変異をおこしていると推定され、タマムラサキはその変異の範囲内と考える事もできる
ちなみに私が大分県の海岸で見つけたものは、断面扁平(扁平な葉が丸まっているものもある)、中実、幅4mm程であった
花糸の基部に歯牙は見られない
学術的には、葉が扁平、染色体が複二倍体、ヤマラッキョウとの交配障壁はないものの、生育環境の異所性による弱い生殖隔離という点で、ヤマラッキョウの変異ではなく、別種として扱う事が支持されているようだ
結局私は、専門家でも意見が分かれ、素人が安易に同定できる程単純なものではないという結論に至った
【タマムラサキの分布と四国での生育環境】を参照
そんな事を言ってみたが、やはり私が観察した個体を整理しないと気持ちが悪い
今回は、ネット上で一般的に言われている内容に鑑み、葉の断面が扁平で中実、生息地が海岸という事をもって、タマムラサキとして整理する事にした
なお、タマムラサキの報告当初に牧野氏が特徴として挙げているのは
①葉が扁平
②花序が半球形
③花付がまばら
私が見つけたものは、①②には合致するが、③花付がまばらというのには当てはまらない
だが、牧野植物園に植栽されているタマムラサキでさえ花付がまばらとは言い難く、それは違っていると思われる
基準産地は、長崎県対馬の厳原となっている
関連記事
西へ向かえ! 花散策
知られざる自生地 イトラッキョウ シマシャジン
岩屋山 裏岩屋ルート キイレツチトリモチも見てきたよ
島のお花
地元の花探し
草原の花散策