季節は冬を迎えようとしている11月、海岸の岩場でコバノタツナミが咲き誇っていた
花期は5~6月だそうだが、一年中花を見かけるような・・・
海岸に多く生えているものだが、海から遠い山地でも見かける
山地に生えているものの葉は、軟質で毛深いような気がするが、波打ち際に自生しているものの葉は、革質で厚く光沢を持ち、毛が少ないような印象を持っている(下図参照)
同じコバノタツナミでも、過酷な環境の波打ち際では、磯馴れ(ソナレ)の要素を持つのかもしれない
ソナレノギクの項でも述べたが、ソナレ(磯馴)とは生態を表わす言葉で、磯に馴れるとの意味で、海岸の岩場に適応していることを示す
海岸の環境は潮風や強い紫外線、波しぶきなど、植物にとっては過酷であり、それらに対応すべく葉や体全体を、厚く、丈夫にしたのである
コバノタツナミの葉の個体差
また、種子島の太田川では、渓流型と思われる個体が発見されている
発見されたコバノタツナミは、通常のコバノタツナミの葉が広卵形~三角状卵形で、基部が浅い心形になるのに対し、植物体が矮小で葉は小さく、葉身は基部がくさび形で菱形に近い形になり、鋸歯数も少なくなるなどの特徴を持つものであった
渓流型の植物の葉は、水流から受けるダメージを軽減するための適応的な葉形を獲得したもので、このコバノタツナミも同様のものであった
引用)琉球列島における被子植物の渓流環境への適応と発芽特性の分化
絶景を求めて海岸を散策していると、岩場に井戸のように穴が開いたところを見つけた
先に進もうと、穴の縁を渡っていると、穴の中に吸い込まれそうな感覚に襲われた
関東以西~九州に分布するので、比較的温暖な地域が自生適地だと思われるが、種子島以南では近縁のアカボシタツナミソウが優勢となり、コバノタツナミは少ない
コバノタツナミと近縁のアカボシタツナミソウは、分布域が大きく重ならず、交雑したとは考え難いにもかかわらず、分子系統解析の結果、葉緑体DNAハプロタイプの多型を共有している事から、両種は分化して十分な時間が経過していない可能性がある
分布の北域では、冬にタツナミソウが枯れてしまう事がある一方、コバノタツナミは常緑を維持しているようだ
長崎県や大分県で観察する限り、海岸近くに多く自生しており、タツナミソウ属の植物の中では最も多く産するものだという認識でいる
常緑の多年草で、海岸付近においては、冬でも花を咲かせているのを見かける事がある
学名:Scutellaria indica L. var. parvifolia (Makino) Makino
和名:コバノタツナミ(小葉の立浪)
シソ科 タツナミソウ属
撮影 2022年11月 大分県
初版 2015年05月07日
記事アップロード 2022年12月11日
画像アップロード 2022年12月06日