今年度の自治会班長タナカさんが、歳末助け合いの集金に来た。
まあ、こういう時、タナカさんは集金だけに収まらず、何かしら近所情報を話して行く。
今日の情報は、ウチのれいの隣の母親のこと。
最近働いている様子が無いよ、いつも家に居るよということだった。どうでもいいが。
出入りしている派手な男が完全に住みついて、お金を入れているようだとか。ホントにどうでもいい。
ふとタナカさんの頭に目をやった。
地肌の見え方ハンパない。私の頭なんてまだまだタナカさんには及ばない。ホッ。
やっぱ年とるとこんな感じになっていくんだなあ。嫌だなあ。
そのうちタナカさんが小さい声で言った。
「まだ誰にも言ってないんだけどねぇ、来年1年かけて家を片付けて、再来年は息子の所に引っ越そうと思ってるの」
え、そうなんだ…
「息子さんてどちらに居るんでしたっけ?」
「愛知県」
「遠いですねー」
「ここに住んでると疲れるもの。早く引っ越したい」
ああ、確かに。
ん?まさか私が隣の家に発射した「引っ越せ、消えろビーム」がズレてタナカさんに届いたんじゃないかな。
だとしたら困るな。
もう1度隣に向かって発射しておこう。
それにしても、
ウチも引っ越したい。
お金があったら今すぐにでも引っ越したいよ。
もしも、息子がウチから通えないほど遠い所に就職したら、例えば県外とかに就職したら、
え?この家に私一人?
えー、それは寂し過ぎるー。
そうなったら本気で引っ越し考えるー!