ある日の女装ドライブ ～富士子と富士山①

おはようございます。
今日から3連休ですね。
9月のこの時期、昭和時代は爽やかな秋の気配で行楽シーズンでした。
しかし、令和の今日はすごく暑い。
地球温暖化は確実に進んでいるということです。

とまあ、関係のないことを書きました。
3連休は遠出したくなりますよね。
昭和49年（1974年）の晴天の日曜日。
片思いの男性と富士五湖までドライブをした女装子さんがいらっしいました。
今日からその手記をご紹介します。

富士子さんと女装名を持つ富貴クラブ会員さんです。
風俗奇譚　昭和49年6月号に掲載されました。

ある日の女装ドライブ～富士子と富士山　　
　　　　　　　林富士子　（富貴クラブ会員）

　わたしの名は富士子。白い雪でお化粧をした富士山の清純な姿にあこがれて名づけたわたし。その富士山のふもとで早春の一日を女の子として過ごしてみました。

　　■片思いのＫさんと■
その朝早く、わたしはクラブの寝室で目がさめました。ウイーク・エンドで男性・女性（？）たくさんの会員が寝乱れている中からそっと起き出してバス・ルームにゆきましたが、窓から見おろす日曜日の街は、ようやく明るくなった表通りも人影はなく、まだ街全体が寝静まっているようです。
　昨夜からのお化粧をいったん落としてひげをそり、オーデコロンを全身に振り掛けて湯ぶねにひたると、昨夜の疲れもウソのように抜けてしまい、さて、どの洋服を着ていこうか、カツラはどれにしようかしらと、今日の楽しさが始まりました。
　湯上がりの体をバス・タオルでくるんで、したく部屋にはいると、いつもは三台の鏡台を奪い合い、和・洋さまざまの衣装が広げられるこの八畳の部屋も、皆が寝ているので、一人で借り切りです。
　清楚な富士の大自然にマッチするようにお化粧はうっすらと控え目に、洋服もわたしの好みのミニ・スタイルを選びました。このほうがスポーティーで運転がしやすく、自慢の脚線美をカメラに収められるので、少しぐらいの寒さはがまんすることにしました。
　いつもは早い変身も、今日ばかりは予想外に手間どって、クラブを出るころにはピルの谷間から太陽が顔を出し、十一階から降りるエレベーターの中でも人と顔をあわすはめになり、街には国電の駅へ急ぐらしい人影も見えてきました。
昨夜、男姿で乗りつけた車へ、今朝は女姿で乗り込んで、だれかに怪しまれないかと心配しながらエンジンを始動させ、靖国通りを新宿に向かいましたが、車は少なく運転は楽。ただ、昨夜の寝不足だけが気にかかります。
　昨夜、せっかく早く寝たのに、いつの間にかプレイボーイのＳさんがわたしのふとんにはいってきて、なかなか寝かしてくれず、やっと朝がたうとうとしただけ。それでも新宿でＫさんをお乗せすると、ようやくわたしも元気づいてきました。