言の葉花壇

何度聞いても美しい日本語に、今日もマナ女とカナ女がにぎやかに呟きます。ぜひお気に入りを見つけてください。

忘らえぬかも

2017年12月16日 | 万葉集
第 0149
◆ ◆ 天皇のかむあがりませる時、倭大后のよみませる御歌一首
人はよし 思ひやむとも 玉葛 影に見えつつ 忘らえぬかも
倭姫皇后 ◆ ◆
     
万葉集 第二巻 より

::: 読み :::

ひとはよし おもひやむとも たまかづら かげにみえつつ わすらえぬかも

::: 意訳 :::

他の人はたとえおかくれになった天皇を思い慕うのをやめてしまっても、 私には天皇の面影がいつも見えているので、忘れようとしても忘れられません。

天智天皇が崩御した時に皇后の倭姫王(やまとのひめみこ)が悲しんで詠んだ歌やね。
「十二月の癸亥の朔乙丑に、天皇、近江宮に崩りましぬ。」 と日本書紀にあるわね。
「十二月の癸亥の朔乙丑」 とは671年12月3日のことで、当時は没後、8日間は仮の宮に故人を安置して その後、何ヶ月もかけて本葬(殯)を執り行っていたそうよ。
今で言う喪中やね。
天智天皇には倭姫皇后の他にも何人かの女性がて、倭姫皇后との間には子供もなく 政治的な政略結婚としか思えないけれど、倭姫皇后は悲しかったんやろうね。 天皇が危篤と崩御に際して悲しみの歌を4首も詠んで万葉集に掲載されてるわね。