新潟の野鳥・フィールドノート

新潟で観察した野鳥を写真で紹介します.野鳥の日常生活に光を当てられたらいいなーと思っています.

アカゲラ

2015-01-10 12:30:36 | キツツキ科
 アカゲラ 学名・Dendrocopos major 英名・Great Spotted Woodpecker

 アカゲラは,林で聞く「キョッ.キョッ」という声を頼りに探すと見つけることができます.冬は,広葉樹の葉が落ちているので,他の季節よりも観察しやすいでしょう.レンズを向けると,サッと木の裏側に回り,隠れん坊します.そして時々,顔だけ覗かせ「まだいるか」と見ている,いたずらっ子のような可愛いやつです.
 海辺近くの住宅地で,「キョッ.キョッ」と鳴く声が聞こえました.近くにキツツキが餌を探すような大きな木は見当たりません.しかし,その声は近くから聞こえてくるのです.家庭菜園の脇にキウイフルーツの棚があり,その棚を支えるスギの丸太にとまっていました.肩羽にある白い斑(スポット)がよく目立ちます.
 新潟県に生息,繁殖しているアカゲラは,アカゲラ(Denndrocopos major hondoensis)という亜種に分類されています。本州と隠岐,対馬に分布しています.北海道と南千島には,エゾアカゲラ(D.m.japonicus)という別の亜種が分布しています.

 アカゲラ(D.m.hondoensis)♂.アカゲラの亜種・アカゲラです.
撮影日時 2015.01.08 撮影場所 新潟県新潟市


 昨年,北海道に探鳥旅行に行くことができました.その時に撮影したエゾアカゲラです.エゾアカゲラの肩羽先端の白色班は,アカゲラよりも大きく,耳羽の色がクリーム白色,またはクリーム色です.アカゲラの耳羽は,クリーム色,または褐白色です.エゾアカゲラの頬のほうが,アカゲラよりも白っぽく見えるということかな?

 エゾアカゲラ(D.m.japonicus)♀.
撮影日時 2014.06.17 撮影場所 北海道・野幌森林公園


 上と同一個体.
撮影日時 2014.06.17 撮影場所 北海道・野幌森林公園

 

 ブログで亜種について触れようとすると,ちょっと不安がよぎります.種の和名アカゲラと,亜種の和名アカゲラをどのように混乱せずに書くことができるかということです.
 そこで少し勉強してみました.
 まず種についてです.種とは,生物分類の基本単位です.遺伝学の成果をもとにマイヤーは,「種とは互いに交配し得る自然集団で,個々の集団はほかの集団とは生殖的に隔離されている」と定義し,これが生物学的種概念として現在最も有効な定義として受け入れられているそうです.(鳥類学辞典・昭和堂)
 次に亜種です.亜種とは,生物の分類体系で種よりも下の階級のひとつで,固有の特徴を持つ地理的な品種を意味します.同種内の各亜種の繁殖地は,重なり合いませんが,越冬地は重なる場合もあります.(鳥類学辞典・昭和堂)
 要するに,アカゲラを例にとると,アカゲラもエゾアカゲラも種としてはアカゲラです.地理的に離れているから交配できないが,一緒に飼うと交配できるということです.形態で区別しようと思えば区別できるが,地理的に隔離されていないのは亜種といえません.このような集団は,品種とよばれます.
 その次は,種と亜種の和名についてです.これが難しい.
 亜種の和名について,日本鳥類目録 改定第6版・日本鳥学会で,「亜種のない種は,種の和名をもつ.その種に二つ以上の亜種がある場合でも,日本にその種の一亜種だけが分布する場合は,種の和名と亜種の和名は同一である.日本で2亜種以上が存在する場合は(迷鳥を含む),日本で繁殖する亜種(2亜種以上繁殖する場合は本州,特に本州北部以北の亜種),もしくはいちばん普通な越冬亜種の和名は種の和名と同じとし,その他の亜種にそれぞれ別の亜種名を与える(その場合の亜種名は,種の和名に形態的特徴か地域名を形容詞としてつける)」を原則としていると説明しています.
 わかりづらいでしょう.そこでまた,アカゲラを例にとります.日本にはアカゲラ,エゾアカゲラ,ハシブトアカゲラ(D.m.brevirostris)の3亜種が存在しています.ハシブトアカゲラは,迷鳥です.そして日本には,アカゲラとエゾアカゲラが繁殖しています.アカゲラは,本州で繁殖するので種の和名と同じ亜種名を持っています.北海道で繁殖するエゾアカゲラには,北海道を意味する地域名エゾを形容詞とした亜種名が与えられました.ハシブトアカゲラには,嘴が太いという形態的特徴を形容詞とする亜種名が与えられています.
 なんだか,わかったような,わからないような.書いているうちに自分が混乱してしまいました.面倒ですが,亜種には学名を付記するのが一番のようです.