鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

228 閑居の冬至

2023-12-21 12:59:00 | 日記

我家ではクリスマスも無く正月は旧暦でやるので、この時期の祭礼は冬至祭りだけだ。

世界の歴史を見ても、人為的な新年祭より自然に準じた冬至祭の方が遥か古代から行われていた。


ギリシャローマでは太陽神ヘリオスの復活の時で、また同時期に地母神デーメテールや光明と詩歌の神アポロンの祭典もある。



(アポロ、ムーサ、リベリタスのイコノグラム ローマ時代)

隠者の冬至の祭壇では詩神アポロ(ギリシャではアポロン)を祀っている。

かなり昔にこのローマ時代のアポロのシルバーメダルを見つけてから、我が詩画の暮しには結構な加護を頂いて来た気がする。

ミューズの楽園に詩神アポロンと自由の女神リベリタスが遊ぶ感じでイコノグラムを組んだ。

朽木の額が中世キリスト教により廃された古代の神々に似合っていると思う。


画室の置床には恒例の蕪村筆芭蕉像を祀り冬瓜と南瓜を御供えした。



(芭蕉像 蕪村 江戸時代 李朝燭台)

句も芭蕉の「旅寝して見るやうき世のすす払」

蕪村は常々芭蕉を崇拝していて、よく神仏高僧に見立てた画讃を描いている。

現代の俳人に取ってもこの蕪村が描いた芭蕉像以上に崇高な聖遺物は無いだろう。

私も家に籠もってばかりいないで芭蕉のように旅に出たいのだが、血糖の呪いで外食がままならないのと老母の介護で断念せざるを得ない。

せめてこの軸を眺めながら己が若き頃の旅を懐かしむ事にしている。


今週は鎌倉も急に冷え込んで、我が谷戸も流石に冬の趣となってきた。



冬至の寂光が枯草を照らす上には寒靄がうっすらと漂う。

午後の散歩も寒くて近所を廻るだけで終わってしまうが、それでも結構良い光景を見る事はできる。

寒さにも慣れてくればもう少し歩くのだが、無理せず当面は運動は室内に限る。

クリスマスも正月も無い静寂の谷戸で、精々枯淡の詩句でも案じるとしよう。


疫病もなんとか過ぎ正月の鎌倉はまた大層賑わいそうで喜ばしいが、隠者は例によって立春までは幽居に籠りうつらうつら夢幻に浸る他ない。

ーーー木の虚(うろ)に夢幻の蛹枯山河ーーー


©️甲士三郎



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