私的海潮音 英米詩訳選

数年ぶりにブログを再開いたします。主に英詩翻訳、ときどき雑感など。

嵐ののち   

2009-10-12 20:02:09 | その他 訳詩
After the storm Eva Gore-Booth

Suddenly everywhere
Clouds and waves are one,
The storm has cleaned the air
The sea hold the sun
And the blue sky――
 There is no under, no above,
All is light, All is love――
Is it like this when you die ?


嵐ののち     エヴァ・ゴア‐ブース

ふいに いたるところで
  雲と波とがひとつになり
嵐は空を清めた
  海は日と
青空を抱き――
  上もなく また下もなく
すべてが光に すべてが愛に――
  あなたが死ぬときもこんな風だろうか?


  ※反歌
    あらしすぎ なべて光となりにけり
    きみ去るおりも かくやありけん
    ↑
  少々遊んでみました。お目汚しを失礼。

灰の水曜日 六部30行目~最終行

2009-10-11 20:36:10 | 英詩・訳の途中経過
Ash-Wednesday T.S.Elliot

Ⅵ[l.30-last]

Even among these rocks,
Our peace in His will
And even among these rocks
Sister, mother
And spirit of the river, spirit of the sea,
Suffer me not to be separated

And let my cry come unto Thee.


灰の水曜日      T・S・エリオット

        Ⅵ[30行目~最終行]

 たとえ岩の間にあろうと
安らぎはかれの望みのもとに
たとえ岩の間にあろうと
妹よ 母よ
流れのいぶきよ うみのいぶきよ
わたしをへだてさせるな

 吾が叫び汝にいたれよ


  ※「灰の水曜日」どうにか終了。33行目「妹」は「イモ」、最終行はアガサケビナレニイタレヨ」とお読みください。……嗚呼、ルビの振り方はいかに。
 このラストは平易に「そしてわたしの叫びをあなたに至らせてくれ」とやろうかかなり迷いました。


 


灰の水曜日 六部25~29行目

2009-10-10 21:05:19 | 英詩・訳の途中経過
Ash-Wednesday T.S.Elliot

Ⅵ[ll.25-29]

Blessed sister, holy mother, spirit of the fountain, spirit
of the garden,
Suffer us not to mock ourseives with falsehood
Teach us to care and not care
Teach us to sit still


灰の水曜日      T・S・エリオット

Ⅵ[25-29行]

ことほがれた姉妹よ あきらけし母よ 湧き出すものの息吹よ
苑の息吹よ
わたしにあざけらせるな おのれらを 偽りによって
教えてくれ 気にかけ 気にかけないようにと
じっと坐っていろと

 ※28,29行目「Teach us~」の部分はⅠの後ろから三行目&四行目のリフレインのようです。


灰の水曜日  六部20~24行目

2009-10-09 23:17:39 | 英詩・訳の途中経過
Ash-Wednesday T.S.Elliot

Ⅵ[ll.20-24]

This is the time of tension between dying and birth
The place of solitude where three dreams cross
Between blue rocks
But when the voices shaken from the yew-tree drift away
Let the other yew be shaken and reply.


灰の水曜日        T・S・エリオット

  Ⅵ[20-24行目]

 死と生のはざまのはりつめるこのとき
ひとりたつ場所にみたりの夢がまじわる
蒼ざめた岩のはざまに
けれど 声どもがイチイの木から揺りおとされ漂うとき
ほかの木を揺すりこたえせしめよ



  ※「~せしめよ」なる命令形が私はたいへん好みのようです。原因はおそらく伊東静雄。「私が愛し/そのため私につらいひとに/太陽が幸福にする/未知の野の彼方を信ぜしめよ」……。彼の荒野はエリオットの荒れ地とよく似ている気がします。

 ※行の数え間違い発見。10日訂正。×20~25行目。○20~24行目。


灰の水曜日  六部11~19行目

2009-10-08 20:39:22 | 英詩・訳の途中経過
Ash-Wednesday T.S.Elliot

Ⅵ[ll.11-19]

And the lost heart stiffend and rejoices
In the lost lilac and the lost sea voices
And the weak spirit quickends to rebel
For the bent golden-rod and the lost sea smell
Quickens to recover
The cry of quail and the whirling plover
And the blind eye creates
The empty forms between the ivory gates
And smell renews the salt savour of the sandy earth.


灰の水曜日    T・S・エリオット

       Ⅵ[11-19行目]

 失われた心がこごりまた歓ぶ
失われたリラの花と 失われた海の音とを
おとろえた息吹がよみがえりあらがう
ひしゃげた金の菊のために 失われた海の匂いが
よみがえりまたあがなう
うずらの声とめぐるちどりを
めしいた目は創りだす
うつろなかたちを 象牙の門のあいだに
そして匂いがあらためるのだ 砂の地に潮の香りを


  ※14行目「golden-rod」は「アキノキリンソウ」だそうです。別名「セイタカアワダチソウ」。……私的にどちらも雅語と認められん。何か美しい異称はないものか。