§はじめに
今日、富士山に登ることを決めたのは1週間前である。
今日にしたのは、スバルラインのマイカー規制が終わった最初の金曜日だからである。
土曜は渋滞が予想されるし、翌週では寒さが増からだ。
今週の日曜日に、急に妻が「私も富士山登れるかな」と言い出した。
妻はほどんど山歩きはしない。登ってもせいぜい尾瀬とか駐車場から歩く三ツ峠くらいだ。
でも子供でも登れるのだから、時間を掛ければ妻でも登れるだろう。
問題は当日の天気である。先週から富士山天気予報をチェックしているが、登山指数は9/5はAだが、翌日はCとなっている。
もう1つの問題は、妻の装備である。カッパやザック、スパッツは2組あるので問題無い。
新たに購入した物は、靴下、ザックカバー、速乾シャツ、スポーツタイツと高山病予防の酸素缶くらいである。
しかし、妻は昨日まで登るかどうか迷っていた。
天気予報も、朝6時と15時が登山指数がBとなっている。
山頂まで行けなくても、ハイキング感覚で行ける所まで行って帰ってこようと割り切ることで、登ることを決めたようだ。
昨晩22時にジラに到着。ジラに置いてあるスパッツや手袋などをバックに詰めて準備する。
家の中を探してもザックカバーが見つからないので焦ったが、自宅から持ってきた妻のカバンの中から見つかった。
缶ビールを飲んで就寝。
§五合目駐車場へ
朝4時に起床。洗面とトイレを済ませて、真っ暗の中4:15頃に出発。
朝食の用意は済ませてあるので、コンビニなどは寄らずにスバルラインに向かう。
スバルラインに入るが、前も後ろも車は1台もいない。
でも料金所のおじさんが言うには、
「40分ほど前に駐車場は満車になったので、1Kmほど手前の路肩に止めて貰います」
こんなに朝早いのに満車とは、我々と考えることが同じ人々が大勢いると言うことだろうか。
行きは良いが、帰りの15分余計に歩くのは辛いなあと思いながら、スバルラインを快調に飛ばす。
ようやく東の空が明るくなって来た5時頃に、五合目に到着。
駐車場は満車に近く、5,6台くらいの空きしかなかった。
1台分の幅が狭いので、駐車の時もドアを開ける時にも注意が必要だ。
右隣の車はエンジンをかけながら横になって居る。薄い空気に体を慣れさせているのだろう。
さっそく調理パンとコーヒーの朝食を取る。
朝食の後、高山病予防のために、五合目で1時間ほど体を慣らすのが良いと言われているので
周りの写真を撮ったり、トイレに行ったり、準備運動を行って時間をつぶす。
※本当は娘へのメール送信に時間が掛かっただけなのだが。
5時過ぎの五合目駐車場からの富士山
朝日が当たって紅くなってきた
駐車場はもう満車
5:50頃の富士山
山中湖方面は雲の中
二人で2000円の入山料を払う
§六合目まで
出発時間は縁起の良い5:55。
山中湖は雲海の下だが、六合目までの天気は晴で、気温は13℃くらいだろうか。
スマホの山旅ロガーのスタートをONにする。
この時間に出発する人は多くない。
たまたまだが、モデル系の女性2名が富士山に登る様子をビデオ撮影する10名くらいの団体と出発が一緒になってしまった。
実はこの団体と抜きつ抜かれつで、結果的に山頂までご一緒することになった。
上りは登山素人の妻のペースに合わせて進むことにした。
だから六合目までの上りも大股でなく、小股で少しずつ進むように心掛けた。
しかし突然草むらの中から子シカが現れたのには驚いた。
山道近くの草を食べているが、写真を撮ろうと近づいても全く逃げようとしない。
とても人に慣れているように思えた。
約30分で六合目に到着。これくらいの上りならば妻でも大丈夫だろう。
さあ、これからは私も未知の領域に入る。どんな試練が待っているのだろうか。
六合目手前の森の中にえさを求めて子シカが現れる。人間に慣れているのか近づいても逃げない
出発した五合目辺りに虹が架かる
§七合目まで
なだらかな坂と階段を繰り返して徐々に高度を上げて行く。
朝日が否応無しに当たってかなり暑い。
100mほど歩いては、一息つき、一口だけ水を飲む。
高山病予防には、大きな深呼吸と水分補給が欠かせないらしい。
何名かの下る登山者の人達とすれちがう。
何合目まで登ってきたのか気になるところだが、お互いそんな余裕はない。
七合目の手前に小さな岩場がある。妻にとっては軽い練習といった所。特に問題無くクリアできた。
六合目から約1時間ちょっとで、七合目の花小屋に到着。ここで小休止。
五合目が2,305mなので、400m登るのに1.5時間かかった計算になる。
あと1000m登るのに4.5時間くらいだろうか。
まるで飛行機からの眺め
我々のような二人も頂上をめざす
小雨の中、カッパを着て急な岩場を登る
§八合目まで
花小屋から少し登ったところに日の出館があるが、妻はここでも一休みしたいとベンチに腰掛ける。
休んでいるうちに小雨が降ってきた。慌ててレインウエアとザックカバーをを取りだして着る。
私は上だけで下はスパッツを履くことにした。妻はズボンをはくのに手間取る。
小雨の中出発。ここからは岩場が長く続く。岩場に慣れていない妻はルートの選択に時間がかかる。
幸い後ろから追いかけてくる人はいても1,2名なので、ゆっくりと登ることにする。
気がつくと片方のストック先端のゴムが取れており、後ろから近づき過ぎると、目の前にストック先端が近づいて来るので注意が必要だ。
雨はあがったので、次の山小屋でレインウエアを脱いでバックの外ポケットにつっこむ。
途中スマホで山旅ロガーから起動される地図ロイドで現在地を確認する。電池の減りが多いのが気になる。
晴れた空の下、長い岩場を登る
麓を望む
たぶん河口湖方面
意外とヘッドライト2500円は安いかも
妻には雲海を眺める余裕も無い
遥か向こうに河口湖が見える
§とんだハプニング
雨がひどくなったので、高度3250の元祖室でレインウエア上を着る。
出発して階段付きの登り坂を10分ほど登って行くと、山頂の方から叩きつけるような雨風が吹いてきた。
妻を先に行かせて、レインウエア下を履く。
両スパッツを外して、登山靴を履いたままレインウエア下を履き、またスパッツを着ける。
斜面で立ちながら着替えているので少々時間がかかった。
この時、胸ポケットに入れていたスマホが無くなっているのに築いた。
今、落としてたのかもしれないとので、回りを探したが無い。
元祖室まで探しに戻ることを決めたが、先に進んでいる妻に連絡する必要がある。
早足で山道を上がって、妻に追いつく。
息を切らしながら、事情を説明し、自分は下の山小屋まで探しに行くので、上の山小屋で待つように指示する。
急いで下る。下りは小石が多いので滑りやすい。路上に黒いスマホが落ちてないか注意しながら下る。
元祖室までの途中には見つからなかった。
念のため元祖室の関係者の方に落とし物は無いか聞いてみたが、期待した回答は無かった。
落としたのはもっと下の方だろうか。最後にスマホを触った場所も覚えていない。
今は、スマホを探すよりも頂上を目指すほうが優先であると判断し、来た道を戻って本八合目に向かう。
今度は全力を掛けて、倍以上ののスピードで登る。前を行く登山者を次々と追い越す。
レインウエアのズボンを穿いていると、大股で歩こうとする時には腿に引っかかりがあって窮屈な感じがする。
今日初めて、額から汗が流れ出し、息が上がってゼイゼイする。
それでも足にだるさはないし、頭も痛くない。至って元気である。
ようやく、息をキラしながら本八合目の冨士山ホテルに着いた。
少し疲れた様子でベンチに座っている妻に、スマホが見つからなかったことを伝える。
妻に私のスマホに電話を掛けさせたところ、体やバックの中から着信は聞こえない。
電話は繋がるので壊れてはいないようだ。
登るにつれて天気が悪くなる
天気がよければ見晴らしは最高なのだろう
行き先は雲に覆われている
§頂上まで
九合目手前で白い鳥居が見えてきた。この風雨に晒されてどのくらいの年月建っているのだろうか。
よく見るとツルツルの柱には縦に何本もの亀裂がある。その亀裂には10円玉や5円玉が刺さっている。
九合目の広場で休憩。雨では無いが、強い風にながれる雲の中である。
強風の中、水と芋饅頭を食べる。丁度良い甘さが嬉しい。
腕時計をしていないので、これまで余り時間のことを気にしていなかったが、時間を確認すると、もう12:40過ぎだった。
いつの間にかお昼の時間を過ぎているが、不思議と空腹感は無い。
頂上までは、もう一息のはずである。「もう少しだから頑張ろう」と妻に声を掛けて、九合目を出発する。
九合目からはさらに大きな岩が多くなり、上りも急になる。
数10m歩いて一休みすることの繰り返し。どのくらい時間が掛かったか分からないが、雲の中に狛犬と鳥居か見えてきた。
まだ階段が続いているから頂上では無いようだが、何名かが狛犬と鳥居をバックに写真を撮っている。
きっと頂上に近いに違いないと思い、我々も写真を撮ってもらう。
ここまで岩場は少なく階段坂が延々登ってきた
一瞬の雲の切れ間から
ほとんど視界が無い
雲の中をヨタヨタと歩く
やっと九合目だ
九合目の上の広場で悪天候の中、休憩する人が多い
九合目からは大きな石が多くなり体力が消耗する
やっと頂上の鳥居が見えてきた
§頂上にて
鳥居をくぐって10段くらい上ると、富士山山頂の石柱があった。
その横にあるのは、浅間神社の奥宮のようだ。
やっと山頂に到着したようだ。時間は13:20、7時間半くらいかかったことになる。
但し、周りは雲だらけで、これまで以上に強い風が吹いている。
当然、麓の景色は雲に隠れて全く見えない。
山頂に着いたと言う達成感があまり無いのは、この天気のせいかもしれない。
神社の中に入り祈祷する。併せてお守りと絵馬を購入し、娘の来年の受検合格と家内安全を願う。
絵馬を奉納してる間に、モデル二人がお参りとおみくじを引いている様子のビデオ撮影を行っていた。
つまり、この撮影隊も7時間半掛けて同じペースで登ってきたことになる。
お昼にコンビニおにぎりを持って来たが、外は強風のため山小屋に入り、豚汁(800円)を注文して、それをすすりながらおにぎりを食べてお昼とする。
なぜかモデル二人撮影隊も同じ山小屋に居てカレー等を注文して食べている。
八合目と本八合目の一部を1.5急いで往復したが、私はその往復でスイッチが入ったらしく、殆ど疲れていない。
一方、妻の方は慣れない岩場が続いたためか山頂到着時は疲れた様子だったが、お昼を食べて回復したようだ。
これが神社と思いたくなるような建物
中はちゃんと神社
紙に記念スタンプを押す
外は強風なので山小屋の中でお昼を食べる
カップヌードルが700円
お腹もふくれて出発準備
§下山
富士山の本当の山頂は剣ゲ峰であることは知っているが、今日の天候でお鉢巡りするのは無理である。
時間も遅くなったこともあって、2時過ぎに山小屋を出発して砂走りを使って下山する。
途中、可能であれば八合目-本八合目間の山小屋に立ち寄ってスマホが落とし物として届けられていないか確認する予定である。
出だしの砂走りは、砂礫も小さくて坂も緩かったので下りやすかった。
徐々に砂礫は大きくなり、少し坂が強くなり、気を付けないと滑って尻餅をつくことになる。
ストックを使ってブレーキにしながら降りるが、ストックに慣れていない妻は、2,3回転んだ。
強風のためお鉢巡りは断念
下り坂が続く。この辺りは石が小さいので歩き易い
雲海①

雲海②
§スマホ探し
八合目付近の山小屋数件に立ち寄ってスマホが落とし物として届けられていないか聞いて見た。結果は何処も無し。
先ほど妻に私のスマホに電話を掛けさせたところ、電源が切れた状態になっていた。
考えられるのは、①バッテリー切れか、②人手で電源OFFになったかだ。
スワイプパターンロックが掛けているものの、単純なパターンなので破られないとも限らない。
悪用防止のため、妻の電話からDocomoにお願いしてSIMをロックしてもらうことにした。
オペレータとの会話で、スマホの位置を探索してくれるサービスがあり、それをお願いしたが
電源が落ちているので反応するはずが無い。
落とした時に直ぐにdocomoに電話すれば良かったのにと思ったが、後の祭りである。
電源をONにした時に、本体もSuicaもロックできるという事なので、お願いした。
ただし、本体に差したSDカードのデータはロックできないので、中を見られてしまう危険性がある。
と言っても気になるのは写真データだけだが・・・・
とりあえず気持ちを切り替えて下山に集中することにする。
雲海③
雲海④
石が大きくなり滑りやすい
雲海⑤
雲海⑥
§ひざの痛みが悪化
ここ3年ほどはなんとも無かったのだが、この長い単調な下り坂で、八合目を過ぎた辺りからひざが痛くなってきたあ。
予防のために、スポーツタイツを穿いているがあまり効果が無いようだ。
この痛みは徐々に強くなってくる。
しばらく妻のストックを借りて、ダブルストックでブレーキを掛けながら下ったが、幾分膝への負担は減るものの、痛みの軽減にはならなかった。
少し休むと一旦痛みは無くなるが、10m程歩くとまた痛くなる。
屈伸をすると一瞬痛みが消えるが、歩くと直ぐに痛みが戻ってくる。
妻も、痛みはないものの、下りはかなりつらそうだ。
二人して急に歩くスピードが遅くなった。
我々の歩きをあざ笑うように、何人かの若者は、半ばジャンプしながら駆け足で下って行く。
できれは君のひざを貸してもらいたい、そんな気持ちである。
下りのジグザグコースはまだまだ続く。
やがて、日も落ちてきて、富士山の影が雲に写り、その影がどんどんと伸びてくる。
上りはたくさんの山小屋があり、椅子があって休むことが出来たが、下りは休むところが無い。
なんとか七合目までたどり着いた。
(下りは汗をかかないためか、トイレが近くなる)
雲海⑦ 雲に富士山の影が映る
雲海⑧ どんどん暗くなってくる
七合目の公衆トイレで休憩。青空に月が浮かぶ
§遠すぎる五合目
七合目を過ぎて、ジグザグ下りが無くなっても、六合目までは距離の長い下り坂が待っていた。
後ろからどんどんと我々を追い越して行く。
その中の数人は、あの撮影隊の人だった。
その一人もひざが痛いのだろうか、面白い歩き方で下っていた。
後ろ向きになって下る方法だ。早速やってみた。
これだとひざに負担が掛からなくて痛くない。顔を後ろに向けながらそれなりに早いスピードで下ることができる。
なかなか良い方法だと思ったが、妻はこの歩き方は苦手のようだ。
逆にスピードが遅くなってしまう。
我々を追い越す人もほとんどいなくなってしまった。
もしかしたら本日最後の下山者?
やっとの思いで六合目まできた。
ここまで来ると、これから上る登山者とすれ違う。
この時間に上るのは学生が多いようだ。
暗い中岩場上りは大丈夫なのだろうか、何合目の山小屋に泊まるのだろうか と心配していまう。
しかし、人の心配をしている暇は無い。
暗くなる前に五合目に着けるだろうか。
六合目からも下りが続き、途中から上りになる。
赤色ランプを持った警備員のような格好をした案内人?に、「お帰りなさい」と声を掛けられた。
「ただいま。下りはとてもつらかったです」と返答。
どんどん暗くなって足元が全く見なくなった。
真っ暗の中、10個ほどのヘッドライトが蛇のように繋がってこちらに向かって来る。
ライトが眩しくて異様な威圧感を覚える。LEDライトも進化したものだ。
ヘトヘトになりながらやっと五合目に到着。時間は18:45。
下りに4時間半、こんなに時間が掛かる予定では無かったし、これほどつらくなるとは思っていなかった。
登っているのでは無く、後ろ向きに降りているところ
六合目から。夕日で雲が赤くなる
五合目にやっと到着
急いでスバルラインを下って、フォレストモールで夕飯の総菜を買い、ジラに戻ったのは20時頃。
汗を流すため、どうしてもいきやりの湯には行きたかったので、慌てて準備をして温泉に向かう。
なんとか間に合った。
温泉の中でゆっくりと足の筋と筋肉をもみほぐす。痛いけれどとても気持ちが良い。
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